第4回金融専門人材に関する研究会議事要旨
1. 日時:
平成20年2月29日(金)10時00分~12時00分
2. 場所:
中央合同庁舎7号館9階 共用会議室3
3. 議題:
○ゲスト・スピーカーによる講演
○オブザーバー(事務局)説明
○自由討議
○事務連絡
4. 議事内容:
○ゲスト・スピーカーより金融専門人材に必要な能力・資質についての説明、今後の具体的論点についての議論があった。
○会議における主な発言は次のとおり。
(金融のプロフェッショナルの確保・育成について)
国内金融機関の競争力が弱いのは日本の金融工学が遅れているせいではない。視野の狭い「金融工学オタク」だけでは収益は獲得できない。
金融のプロを育てるには、米系投資銀行に見られるようなインセンティブ・メカニズムが重要。事業部門毎の業績を測るための厳密な部門別損益計算が大前提。人事部の介入を排し、スペシャリスト出身の事業部門長が報酬と人事の決定権を掌握すべき。
過大なリスクを取るなどの暴走を防ぎ、全社的・長期的視野を持たせるための工夫(譲渡制限付き自社株の強制的保有など)が必要。
日本の金融機関では人事を誤っても自分の懐が痛まない人々が人事権を掌握している。経営幹部の多くはジェネラリスト出身で専門性の高い金融のプロを評価するための知識も経験もない。
日本人の金融プロフェッショナルは不足していない。日本の金融機関の報酬制度・組織文化に問題がある。
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試験制度で金融のプロを育成・確保しようとするのは旧来型の発想。
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米系投資銀行の採用において学歴は重要なファクターであり、日本の大学の学部教育に能力の証明として機能するだけのクオリティーがないのであれば、苦肉の策としての金融の資格制度はあり得るか。
(期待される役割について)
資格制度はコンプライアンスの分野に馴染む、マネージメントよりは実務部門に馴染むという指摘はあるが、必ずしもそれにとらわれずに議論するべき。
資格取得者の設置義務や業務独占規定を設けるというよりは、金融機関の審査等の際の何らかの考慮要素として位置づけられるのでは。
金融機関にプロフェッショナルが既にいるとすれば、次に問題となってくるのは、事業会社、規制当局、自主規制機関における金融人材であろう。
幅広い知識を持った人間が多数出てくることが企業文化、金融技術の面等において、外国の金融機関と対等に戦っていく糧になるのではないか。
コンプライアンスについても知っているし、金融工学やファイナンスについても知っている、また幅広い経験を持っている、そういった経営者がこの中から複数生まれる、またはそういう経営者がなっていく、というような形が望ましい。
(キャリアパスのイメージ)
法科大学院であれば、金融関連法をどの段階でカリキュラムに組み込むか、金融工学をどの段階で教えればいいのか、検討が必要。
法科大学院修了者との並びで、公認会計士試験短答式合格者に対しても一定の優遇措置を与えることも考えられるのではないか。
資格取得者に対する金融機関の受入体制が課題。
(求められる資質について)
ベーシックな基礎知識部分と、より深い専門知識部分を分けることが考えられるのでは。幅広い分野について、専門家と話ができるレベルを想定すべき。
英語がそれなりに使える必要はあるが、レベルを分けると仮定すれば、トップレベルには英語が必須とすればよいのでは。
バックオフィス的な要素を資格試験の中に取り込んでレベルアップを図れないか。
(実務経験、継続教育について)
イノベーションのみならず、コンプライアンスやレギュレーションにおいても理論と現実(=実務経験)の間の不断のフィードバックが不可欠ではないか。
常識というのが常に変化し、それに対応するのがプロであることから、実務経験は絶対に必要。また、実務経験を持っている方が、教育を受けたときの学びが深い。
実務経験の内容に関しては、民間金融機関、行政、中央銀行、自主規制機関等幅広く認めるべきではないか。
(資格制度について)
形から入るという意味で、まずは資格を作って実質は後から着いてくるという考え方も一つ。しかしながら、実質面を見ると、日本社会には「人はお金のために働く」ということに対する抵抗感と「モノづくりが実業で金融は虚業である」という理解があり、金融のプロフェッショナルを確保するにしても、これをいかに乗り越えていくのかが大きな課題。
資格を活用する方法・メリットを提示していくことが、この資格が社会にどのような影響を与えるかを示す上で重要。
(以上)