ディスカッションペーパー

14年度ディスカッションペーパー

2003年2月18日

  • 「大規模データベースを用いた信用リスク計測の問題点と対策(変数選択とデータ量の関係)」
    山下 智志   統計数理研究所助教授
    CRD運営協議会顧問
    (金融研究研修センター特別研究員)
    川口  昇   金融研究研修センター専門研究員
    (早稲田大学大学院理工学研究科)

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2002年11月18日

  • 「信託業法のあり方-イギリス法を手がかりに-」
    山下 純司   学習院大学法学部助教授
    (金融研究研修センター特別研究員)

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2002年11月18日

  • 「米国における信託会社規制-イリノイ州を中心に-」
    森田 果   東北大学大学院法学研究科助教授
    (金融研究研修センター特別研究員)

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ディスカッションペーパー要旨

大規模データベースを用いた信用リスク計測の問題点と対策
(変数選択とデータ量の関係)

本研究は、大規模データベースを用いた信用リスク計量に伴う問題点と、その対策方法についてまとめた。これまでの信用リスク計量モデルは、データの蓄積が進んでいないため、大規模データベースで計測することができなかった。そこで、CRD運営協議会によって作られた、450,000件、86財務変数を持つデータベースを用いて、2項ロジットモデルによりデフォルト確率の推定を行った。大規模データの推定では、計算時間が膨大になる。我々は、数値計算プログラムを改良して、計算時間を短縮した。そして、推定結果から選択される財務指標の傾向を分析することができた。

また、本研究では、データ量に対する最適なセグメント数についても検討した。一般に、業種や規模が信用リスクに与える影響を考慮する場合、データセグメント法を用いることが多い。データセグメント法では、セグメントにおけるデータが減少し、推定精度が悪化する場合がある。また、推定精度がよくなる場合には、オーバーフィッティングがおきて不安定な推定結果を得ることが多い。そこで、データ数とそれに含まれるデフォルト数を変化させて、そのデータ数がセグメントに分けられるほど十分なデータ数であるか分析した。その結果、データ数、それに含まれるデフォルト数、および変数選択候補数に関して、セグメントに分けるかどうか決定する表を得た。


信託業法のあり方
-イギリス法を手がかりに-

現在の信託業法は、信託業への参入基準が不明確であるが、その背景には、そもそも「信託業」の定義が不明確であるという事情がある。「信託業」の定義は、信託を「業とする」とは何かという、問題を抱えているからである。この問題を解決するためには、信託業法の想定する「信託業」には、どのような性格が期待されているのかを、類型化も視野に入れながら、再検討する必要がある。

そこで信託の母法であるイングランド信託法を検討してみる。イングランド法には、公受託者、保管受託者、信託法人、専門受託者といった、特別な受託者の類型、受託者概念が存在しており、それぞれについて、権限、業務内容が異なっている。これらの差異は、それぞれの受託者に期待される性質の差異を反映している。それが、公共性、信用性、専門性という三つの性質である。

わが国の信託業を営む受託者についても、これら三つの性質を期待することが可能であり、これらを前提として、信託業法の改正を見据えた、新たな信託業の切り分けの試みが可能となる。具体的には、信託の引受けを本業とする受託者(受託業)と、付随的業務として信託の引受けを行う受託者(信託を伴う業)を区別する必要があり、両者は異なる規制に服するべきである。


米国における信託会社規制
-イリノイ州を中心に-

米国においては、信託会社に対する規制と銀行に対する規制とが近接しつつあるが、信託会社に対する独立した規制を有する州も依然としていくつか存在する。これまで、事実上信託銀行のみが信託業を営んできたわが国において、信託銀行以外の主体に対する信託業を解禁する可能性を探るためには、このような規制のあり方を概観しておくことは有益であろう。そこで、そのような州の一つであるイリノイ州における信託会社に対する規制の内容を概観した。

同州の信託会社規制は、(1)営む信託業の範囲に制約を設けない、それによって広範囲に渡ることになる信託業に対し、(2)適用除外を設定することでバランスのとれた規制を図る、(3)信託会社に対する州金融当局による監督は小規模金融 機関に対する監督の形をとっている、という構造となっている。信託会社の行為規制については、信託会社法上の制約はほとんど設けられておらず、その内容は、信託に関連する一般私法や信託会社法以外の金融規制法に委ねられている。

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