ディスカッションペーパー

19年度ディスカッションペーパー

2008年3月18日

  • 「金利の期間構造とマクロ経済:Nelson-Siegelモデルを用いた実証分析」
    藤井 眞理子   東京大学先端科学技術研究センター 教授
    (金融研究研修センター特別研究員)
    高岡  慎   東京大学大学院公共政策学連携研究部 寄附講座教員

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2008年2月22日

  • 「中小企業に対する債権回収率の実証分析」
    伊藤 有希   金融研究研修センター専門研究員
    山下 智志   統計数理研究所 准教授
    (金融研究研修センター特別研究員)

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2008年2月14日

  • 「Japanese Monetary Policy Reaction Function and Time-Varying Structural Vector Autoregressions : A Monte Carlo Particle Filtering Approach 」
    矢野 浩一   金融研究研修センター研究官
    吉野 直行   慶應大学経済学部教授
    (金融研究研修センター長)

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  • 「Term Structure of Interest Rates under Recursive Preferences in Continuous Time」
    高橋 明彦   東京大学大学院経済学研究科教授
    (金融研究研修センター特別研究員)
    中村  恒   東京大学経済学研究科専任講師
    中山 景太   東京大学経済学研究科修士過程

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2007年12月4日

  • Competition Policy in the Banking Sector of Asia
    横井眞美子   金融研究研修センター研究官
    川名  剛   金融研究研修センター専門研究員

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  • 3ファクター・モデルによる長期商品先物・先渡し契約の評価とヘッジ
    高橋 明彦   東京大学大学院経済学研究科教授
    (金融研究研修センター特別研究員)
    白谷健一郎   みずほ第一フィナンシャルテクノロジー(株) フィナンシャルエンジニア
    福西 洋介   東京大学大学院経済学研究科修士課程

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2007年11月30日

  • 金融不祥事と市場の反応 ― 上場保険会社に関するイベントスタディー ―
    白須 洋子   金融研究研修センター研究官
    吉田  靖   千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科教授

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2007年10月22日

  • 証券決済法理に関する最近の動向について
    -ドイツにおける新学説を中心とする一考察
    嶋  拓哉   信州大学法科大学院准教授
    (金融研究研修センター特別研究員)

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2007年9月28日

  • 欧州における新たな保険規制について
    ― CEIOPSソルベンシーIIの試み ―
    田代 一聡   金融研究研修センター専門研究員
    白須 洋子   金融研究研修センター研究官

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2007年7月2日

  • 社債流通市場における社債スプレッド変動要因の実証分析
    白須 洋子   金融研究研修センター研究官
    米澤 康博   早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授

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2007年5月23日

  • 状態の遷移方程式を用いたモンテカルロ粒子平滑化とフィルター初期化
    矢野 浩一   金融研究研修センター研究官

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ディスカッションペーパー要旨

金利の期間構造とマクロ経済:Nelson-Siegelモデルを用いた実証分析

本稿では、ダイナミックなNelson-Siegelモデルの枠組みを利用して1992年から2007年春までの15年間における国債のイールドカーブ変動に関する実証分析を行った。第1に、レベル、傾き、曲率を状態変数としたNelson and Siegel (1987) の期間構造モデルは柔軟性が高く、ゼロイールドの形状とその時間変化をよく近似できることが分かった。

第2に、これら3つの期間構造パラメータとマクロ経済変数の関連について分析したところ、インフレ率と日本銀行の公定歩合はレベルと正の関係にあり、株価の上昇や米国における長短金利差の拡大はイールドカーブのスティープ化と、実物の活動水準の伸びや米国FFレートの上昇は中期ゾーンの金利の相対的な上昇と関連付けられるなどの結果が得られた。さらに、状態空間モデルの枠組みを利用した同時推定の結果によれば、単純なVARモデルよりマクロ経済変数を考慮したモデルのほうが説明力が高く、1996年以降のデータを対象とすると、傾きや曲率にはやはり株価の変化や鉱工業生産の動きが反映されており、海外要因であるFF金利の影響も無視できないことなどが確認された。

中小企業に対する債権回収率の実証分析

信用保証協会の求償債権の回収データを用いて日本での銀行貸付債権の回収率の分析を行った。バーゼルII実施のため個別企業の債権回収率の計量方法を確立することが金融機関にとって急務となっているが、データの機密性から債権回収率の性質について公開された分析結果がほとんどない。

本研究では、資本市場で取引されない銀行貸付債権の回収率の要因を分析した。具体的には、担保の有無などの債権ごとに付随する契約やデフォルト以前の企業の財務データや業種などの要因が回収率に与える影響を調べた。また、デフォルト直前の財務データだけでなく一期前の財務データを用いることで、デフォルト直近の財務データの変化と回収率の関係を調べた。分析に用いた計量モデルは、2項ロジットモデル、順序ロジットモデルである。また、本研究では新たに回収率と代位弁済からの経過時間との関係を分析した。

この結果、海外の先行研究で見られるように日本の債権回収率も双峰分布に従うことが確認された。さらに、貸し渋り対策として打ち出された金融安定化特別保証制度で貸付された債権は回収率が低いことが示された。

Japanese Monetary Policy Reaction Function and Time-Varying Structural Vector Autoregressions : A Monte Carlo Particle Filtering Approach

近年、日本における金融政策の有効性についてさまざまな議論が展開されている。本論文では、モンテカルロ粒子フィルターと自己組織化状態空間モデルに基づく時変構造ベクトル自己回帰(Time-Varying Structural Vector Autoregressions, TVSVAR)を用いて金融政策の有効性を論じる。本論文の手法では日本の金融政策の反応関数がどのように変化してきたかを時変(可変)パラメータ推計を行うことによって求めることができる。また、総供給関数、総需要関数、為替決定の同次方程式を含むTVSVAR を用いて日本の経済構造の変化を計測する。本論文の手法では時々刻々変化する係数(時変係数)を求めることができるため、金融政策の反応の変化、経済構造への影響の変化などを説明することができる。本論文のTVSVAR はフルリカーシブ型構造VAR(もしくはChristiano et al. (1999) で提案されたブロックリカーシブ型構造VAR)の係数を時変としたものであり、同様のモデルに関する先行研究としてPrimiceri (2005)、Canova and Gambetti (2006) などがある。これら先行研究のTVSVAR 推定ではマルコフ連鎖モンテカルロ法とカルマンフィルターを用いているが、本論文ではYano (2007c) で提案されたTVSVAR 推定方式を用いる。そのアルゴリズムはKitagawa (1996)、Gordon et al. (1993)、Kitagawa (1998)、Yano (2007b)、Yano (2007a) で提案されたモンテカルロ粒子フィルターと自己組織化状態空間モデルに基づいている。本論文では名目短期金利、インフレ率、実質成長率、実質実効為替レート変化率の4変数からなる日本経済モデルを推定する。1990年以降、景気もインフレ率も金利の調節からほとんど影響を受けなくなっており、金融政策の効果が激減したことを示している。また、日本経済の低迷の要因が、供給サイドにあるのか、需要サイドにあるのか、大きな論点であるが、本分析からは、総供給・総需要の両面が原因であることが分かる。


Term Structure of Interest Rates under Recursive Preferences in Continuous Time

本論文は、recursive型効用関数のもとでの連続時間金利期間構造モデルにおいて、実物経済と実質金利・名目金利の期間構造との間の構造的な関係を分析する。

具体的には、代表的個人がrecursive型効用関数を持ち、期待実物生産の成長率と期待インフレ率に関して平均回帰的な期待形成を有しているとき、もし(1)実質短期金利が好景気のときに高く、(2)代表的個人が時間分離可能型効用関数よりも危険回避的である(或いは、より危険回避的でない)、とすれば、実質イールドカーブは下向き(上向き)になる。また、代表的個人が時間分離可能型効用関数よりも危険回避的であり、(3)期待インフレ率が実物生産成長率、期待実物生産の成長率と逆相関であれば、実質イールドカーブの傾きにかかわらず、名目イールドカーブは上向きになり得る。

 


Competition Policy in the Banking Sector of Asia

競争政策は銀行に対しては限定された形で適用されてきたというのがこれまでの実態である。しかし、近年は銀行に対する競争政策の適用が国際的に活発化しており、この変化のもたらす影響を分析する必要がある。このためには、これまで銀行に対し特別の配慮が行われてきた理由と、それが変わりつつある原因について検討する必要がある。

このDPは、著者が参加し、報告書をまとめた研究会「アジア金融セクターの規制緩和に関する法制度研究」(金融庁開催)の成果を踏まえ、内容を改善・改良しつつ新たな視点でまとめたものである。アジアの金融制度改革と変遷を参考にしながら、銀行への競争政策の適用について調査し、アジアにおける銀行への競争政策の適用について検討した。


3ファクター・モデルによる長期商品先物・先渡し契約の評価とヘッジ

本論文では”stochastic mean-reversion”を用いた3ファクター・モデルを構築するとともに、商品先物価格の解析解を導出した。さらに,Schwartz(1997)等の金利やコンビニエンス・イールドを明示的に含むモデルとの関連について検討し、ある仮定の下において商品現物価格の変動過程のみに基づく我々のアプローチと,彼らのアプローチの対応関係を示した。

モデルには平均回帰水準を固定するタイプと固定しないタイプの2種類を用い、原油(NYMEXWTI)及び銅(LME Copper)の商品先物価格を推定し、実際に取引可能な先物価格に対する高い再現性を有することを示した。さらには,長期の先物・先渡しに対しモデルに基づき適切なヘッジポートフォリオを組むことにより、効率的なヘッジが達成できることを実証及びシミュレーション分析により確認した。


金融不祥事と市場の反応 ― 上場保険会社に関するイベントスタディー ―

本稿では、2000年以降の上場保険会社に関する金融不祥事及び行政処分について、これらが個別保険会社の株価にどのような影響を与えたかどうか、金融不祥事に対して株式市場による規律が働いているかどうかを検証した。

その結果、不祥事や行政処分に対して株式市場はマイナスの反応をするとは限らないこと、特に不祥事の事実を自らアナウンスした場合、市場はアナウンスした行動それ自体に対してプラスの評価をすること、営業上の不祥事であっても事案(募集事案又は保険金の不払い事案)によりその影響が異なること、一方、不祥事の自らによるアナウンスは、業界のgood ニュースや各社の業績発表と同日に行われることが多く、不祥事による影響を特定しにくい場合もあることもあることが判った。また、不祥事による影響の大きさと保険会社の特徴との関係を明確には捉えることができなかった。

これらの結果から、上場保険会社に対する金融不祥事等について、市場規律が必ずしも有効に働いていたとは判断し難い。


証券決済法理に関する最近の動向について
-ドイツにおける新学説を中心とする一考察

本稿は、間接保有証券の法的構成に関するドイツの議論を紹介するとともに、完全なペーパーレス化の実現を目前にした我が国の学説状況に示唆を与えることを目的としたものである。ドイツでは、間接保有証券を巡る法律関係について、従来より券面の存在を前提とした物権的構成が伝統的通説として維持されてきたが、こうした法律構成と証券決済の実態との間に乖離が生じていることを踏まえ、近年では、これに対抗して信託的構成を唱え、顧客と仲介金融機関との間の権利義務関係を債権的に捉える見解が現れるに至っている。こうした信託的構成を唱える学説は、UNIDROITやハーグ国際私法会議等国際的な統一法化を探る動きとの親和性が強い一方で、伝統的通説が有する実益を極力維持し、また、伝統的通説を否定したことに伴い生じる投資家の不利益を別途の方途によりカバーするという規範的な姿勢を併せ持っていると評価することが可能である。

もっとも、こうした新たな学説には今後更なる検討を要する問題点が内在しているのも事実である。かかる学説では、間接保有証券にかかる投資家の権利を、債権的請求権と構成した上で、これに「擬似物権的な強化」を加えたものとして説明しているが、その強化を図る根拠が明確ではなく、「物権と債権の相克」に関わる根源的な議論が十分尽くされていないとの感が否めない。また、国際的潮流との調和を重視するものの、その国際的潮流が持つ方向性の適否自体について検証を行っておらず、ややもすると無批判のうちに国際的な統一法化の流れを受け入れているように思われる。

転じて我が国をみると、社債、株式等振替法により完全なペーパーレス化を目前にした現在においても、依然として、従来の物権的構成という枠組みに基いて議論を展開する向きも見受けられる。ドイツにおける新たな学説を直ちに我が国が受容することは困難であるが、そうした海外の学説のエッセンスを抽出し、証券の「券面」ではなく、それが有する「価値」に重点を置きつつ、実質的に投資家の保護や取引の安全が従前同様に図られる解釈論を展開していく必要があると考えられる。


欧州における新たな保険規制について
― CEIOPSソルベンシーIIの試み ―

本稿は、現在検討が進められている、EU 地域におけるCEIOPS(欧州保険・年金監督者会議:Committee of European Insurance and Occupational Pensions Supervisor)による新たなソルベンシー規制(ソルベンシーII)について、その概要をまとめたものである。ソルベンシーIIは全EU参加国が適用になる規制であるのみならず、IAIS等の国際的な議論を踏まえものもあり、先進的で多様性のある仕組みになっていると思われる。まだ議論が必要な点等も多く残されているものの、今後わが国における保険会社のリスク管理を検討する上で、一つの参考事例であると言える。

本稿は、CEIOPS のソルベンシーIIを、Consultation Paper20及びQuantitative ImpactAnalysis3 Technical Specification を中心にまとめたものであり、いわゆる、ソルベンシーIIの検討に対する中間段階の整理レポートである。


社債流通市場における社債スプレッド変動要因の実証分析

本稿は、1997年から2002年前半までの国内社債市場について、流通利回りの対国債スプレッド(社債スプレッド)の変動を分析しながらその要因を分析することが目的である。具体的には、信用リスク要因、経済環境要因及び流動性要因について実証的な分析を行った。

中でも流動性に関する分析は、従前の社債流動性リスクに関する実証分析とは大きく異なる点を強調したい。これまでの分析はマーケット・マイクロストラクチャーの視点から見た、日々の市場売買取引のし易さ、すなわち執行コストに着目した市場流動性を分析の対象としたものであり、債券価格に直接的に影響を与える投資家の流動性選好及びその結果としての債券価格変動を分析したものではない。よって、本稿は従来の実証分析にはない、投資家の流動性需要という価格に直接的に影響を与える要因を取り上げた分析であり、従来の執行コストの実証分析とは大きく異なるものである。

アンバランス・パネル分析等の結果、信用リスクに、経済環境要因及び流動性リスクを説明変数に加えることにより、社債スプレッドの説明要因としての有意性が確認された。特に、金融危機時等の状況下では、投資家は、より流動性のある高格付け債へ、さらに国債へと質の高い公社債に資金需要を逃避させる、いわゆるflight to qualityあるいはflight to liquidityと言われる異常な現象が見受けられた。


状態の遷移方程式を用いたモンテカルロ粒子平滑化とフィルター初期化

本論文では状態の後退遷移方程式(後退方程式)を用いたモンテカルロ粒子フィルターに基づく平滑化アルゴリズムとフィルタリングの初期化アルゴリズムについて提案する。本論文の方式は後退方程式が解析的に得られる場合において非線形非ガウス状態空間モデルにおける状態平滑化とフィルター初期化を実現するものである。本論文で提案する平滑化はモンテカルロ粒子フィルターとほぼ同等のアルゴリズムで実現できるため、その計算量はモンテカルロ粒子フィルターの計算量と同等である。さらに、本論文では非線形非ガウス状態空間モデルによるフィルタリングの初期化アルゴリズムを提案する。このアルゴリズムは本論文での平滑化アルゴリズムと後退方程式を用いて実現される。本論文では提案手法の有効性を示すため、線形ガウス状態空間モデル、線形非ガウス状態空間モデル、確率的ボラティリティ変動モデル、t-分布付確率的ボラティリティ変動モデルによるシミュレーションを実施する。

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