ディスカッションペーパー

23年度ディスカッションペーパー

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ファイル 題名 執筆者 年月
DP2011-11
(PDF:1,003KB)
変貌する日本企業の所有構造をいかに理解するか-内外機関投資家の銘柄選択の分析を中心として- 宮島 英昭
保田 隆明
2012年3月
DP2011-10
(PDF:766KB)
株式公開買付アナウンス前後の超過リターンと超過売買高−勧告・告発事例の諸特徴− 岩井 浩一 2012年3月
DP2011-9
(PDF:1,244KB)
経営者報酬に関する研究動向 中村 友哉 2012年3月
DP2011-8
(PDF:605KB)
海外の投資信託・投資法人制度 野村 亜紀子 2012年1月
DP2011-7
(PDF:469KB)
CDS市場と株式市場における価格発見−構造変化を考慮した時系列モデルによる検証− 岩井 浩一 2012年1月
DP2011-6
(PDF:746KB)
日本のCDS市場と株式市場の相関関係とその変動要因 岩井 浩一 2012年1月
DP2011-5
(PDF:439KB)
Credit Rationing, Earnings Manipulation, and Renegotiation-Proof Contract 中村 友哉 2011年9月
DP2011-4
(PDF:736KB)
Endogenous Alleviation of Overreaction Problem by Aggregate Information Announcement 中村 友哉
荒戸 寛樹
2011年8月
DP2011-3
(PDF:562KB)
Why Does the Law of One Price Fail in Japanese ETF Markets? 岩井 浩一 2011年8月
DP2011-2
(PDF:612KB)
Determinants of the CDS Spreads of Japanese Firms Before and After the Global Financial Crisis 岩井 浩一 2011年8月
DP2011-1
(PDF:862KB)
マクロプルーデンス体制の構築に向けた取組み 小立 敬 2011年6月

ディスカッションペーパー要旨

DP2011-11
「変貌する日本企業の所有構造をいかに理解するか-内外機関投資家の銘柄選択の分析を中心として-」

宮島 英昭 金融庁金融研究センター特別研究員
(早稲田大学商学学術院教授、早稲田大学高等研究所所長)

保田 隆明 小樽商科大学大学院准教授

1997年の銀行危機以降、日本企業の所有構造は、従来の持ち合いを中核とするインサイダー優位の構造から、投資リターンの最大化を求める内外機関投資を中心とするアウトサイダー優位中心の構造に大きく変容した。もっとも、この急速な変化の企業レベルでの実態、増加するアウトサイダーの投資行動の特性とそのリターンへのインパクトはいまだ十分に明らかにされていない。本稿の課題は、これまで構築してきた独自の企業の所有構造のデータを利用して、以上の点を解明する点にある。本稿の分析を通じて、第1に、海外投資家の銘柄選択行動は、規模が大きく、流動性、海外売上比率の高い企業を選好するホームバイアスと呼ばれる傾向がいぜん強いこと、しかし、日本株専門の運用部門の整備、情報収集及び分析能力を背景にリスク要因の考慮が後退するなどの変化が見られること、また、海外投資家は整備された企業統治に対して一定の選好を示すことが明らかとなった。第2に、内外機関投資家の銘柄選択を比較すると、前者が中小型株までカバーしており投資ユニバースがやや広いという違いはあるものの、割安な銘柄を選択し、規模、流動性、財務健全性、経営者報酬の業績連動性の高い企業を選好する点で海外機関投資と投資行動は収斂しつつある。国内機関投資家は、資本関係・取引関係等の理由から独立性が乏しく、投資収益の最大化を行動原理としていないという従来の見方はもはや妥当しない。しかし他方で、金融機関(銀行・保険会社)は機関投資家とは逆の投資行動をとっており、いぜん安定株主の特質を維持している。最後に、国内外の機関投資家の持分の変化と翌期の株価パフォーマンスの関係には、ともに有意な正の相関が確認でき、その経済的規模はほぼ同程度であった。保有の変化が需要ショックとなってリターンに影響を与えるか、機関投資家がsmartな投資行動をとったのかは今後の検討課題であるが、リターンへの影響という点でも内外投資家の影響はほぼ収斂している。

キーワード : 企業統治、機関投資家、ホームバイアス、社外取締役、議決権行使

DP2011-10
「株式公開買付アナウンス前後の超過リターンと超過売買高−勧告・告発事例の諸特徴−」

岩井 浩一 金融庁金融研究センター研究官

株式公開買付(TOB)の公表前後の市場動向を実証的に検証した。分析の結果、インサイダー取引が発生している場合には、市場価格や売買高にその兆候が現れる可能性が確認された。具体的には、インサイダー取引が発生している状況ではそうでない場合に比べて、(1)(累積)超過株価収益率や(累積)超過売買高が大きくなる、(2)株価収益率の条件付分散が超過売買高(AV)によって規定される傾向がある、(3)株価収益率の変動(条件付分散)がリスクプレミアムの上昇に繋がりやすい、という特徴を持つことがわかった。

キーワード : 公開買付(TOB)、インサイダー取引、超過株価収益率、超過売買高

DP2011-9
「経営者報酬に関する研究動向」

中村 友哉 金融庁金融研究センター研究官

海外における経営者報酬は1980 年代から急激に高額化している。その変化は、従来の理論では十分な説明が出来ず、あらたに多くの理論および実証研究が発表されてきた。本稿では、始めにコーポレート・ガバナンスにおける経営者報酬の位置付けを確認し、従来のエージェンシー理論の限界を確認する。その上で、近年の論点となっているレント獲得説および市場競争説に関する研究を概観する。

キーワード : コーポレート・ガバナンス、経営者報酬、エージェンシー問題、レント獲得説、市場競争説

JEL classification: D2, D3, D34, J3

DP2011-8
「海外の投資信託・投資法人制度」

野村 亜紀子 金融庁金融研究センター特別研究員
(株式会社野村資本市場研究所研究部主任研究員)

米国の投資信託は、「1940年投資会社法」をはじめとする連邦証券諸法と、当該投資信託の登録された州法の規制を受ける。投資会社が、投資顧問、カストディアン、トランスファー・エージェントなど、投資会社の運用に必要なプレーヤーとの間で契約を締結する。投資会社の取締役会が、投資会社が適切に運営されているかどうかを監視する。投資会社の投資顧問の変更、投資方針の変更を含む重要事項については、株主(投資会社の投資家)の承認が必要となる。投資会社の合併についても、一般に、株主承認が必要となる。

欧州の投資信託は、「譲渡可能証券の集団投資事業(UCITS)指令」及び各国のUCITSに対応する法令の規制を受ける。UCITSでは、投資会社(会社型)とコモン・ファンド(契約型)の両タイプが想定されている。資産運用やアドミニストレーションを行う管理会社と、資産の保管を行う預託機関が、UCITSの運用の中心となる。再委託は可能だが、業務遂行の責任は、管理会社と預託機関にある。

最大のUCITS登録国であるルクセンブルグは、UCITSの主要なアドミニストレーションの機能を、同国内に置くことを義務付けている。資産運用機能は、国外でも可能だが、基準価額計算などはルクセンブルグ内で行う必要がある。預託機関は、ルクセンブルグの銀行か、EU諸国の銀行でルクセンブルグに支店を持つものとされる。

ケイマンは、「投資信託法」により投資信託と投資信託管理業者を規定している。運用内容等に関する規定は設けられていない。免税会社(会社型)が中心的とされるが、契約型が主流の諸国向けにユニット・トラストもある。

キーワード : 投資信託、投資会社、米国、UCITS、ルクセンブルグ、ケイマン

DP2011-7
「CDS市場と株式市場における価格発見−構造変化を考慮した時系列モデルによる検証−」

岩井 浩一 金融庁金融研究センター研究官

本邦事業法人を対象にCDS市場と株式市場における価格形成の関係を検証した。CDSスプレッドと株価及びDistance to Defaultの各系列には、世界的な金融危機の発生時期前後に、構造変化が発生していることが確認された。分析サンプルの大部分において、CDS市場と株式市場の間に共和分関係はなく、また、価格発見の関係も確認されなかった。更に、価格発見が確認されたサンプルでは、株式市場における価格発見が先行するケースが多いことが確認された。このように、我が国では、CDS市場を通じた情報生産は活発とは言い難い状況にある。また、金融当局が不公正取引を監視する際に、CDS市場と株式市場を跨る異時点間の取引に注目することも有益であると考えられる。

キーワード : CDS市場、価格発見、構造変化

DP2011-6
「日本のCDS市場と株式市場の相関関係とその変動要因」

岩井 浩一 金融庁金融研究センター研究官

本稿は、CDS市場と株式市場の同時点の相関関係を考察する。日次データを用いたDCC-GARCHモデルを推定し、両市場の相関係数を計測した。CDSスプレッドと株式リターンの相関係数は概ね負値であり、金融危機後にマイナスが顕著になっていることを確認した。但し、相関関係はそれほど強いものではない。また、相関関係が参照組織の信用リスクの水準等から影響を受けている可能性も確認された。

キーワード : CDSスプレッド、CDS市場と株式市場の相関関係、DCC-GARCH

DP2011-5
“Credit Rationing, Earnings Manipulation, and Renegotiation-Proof Contract”

中村 友哉 金融庁金融研究センター研究官

本稿は、近視眼的な経営者が投資家との間で資金借り入れの契約を締結して長期プロジェクトを実行する際に、信用割当問題が発生する状況を考察している。経営者と投資家の時間選好率が異なる場合であって、約定後に中間期の利益予想に基づいた再交渉が可能であるときには、再交渉が不可能な場合に比べて信用割当問題が悪化する可能性を示す。さらに、成功確率は低いが、利益予想に関するシグナルの精度が十分に高いプロジェクトの場合には、経営者が投資家に対してシグナルを提供しないことによって、かえって信用割当問題が改善する可能性があることを示す。

キーワード : Credit rationing, Earnings manipulation, Renegotiation, Managerial my-opia

JEL classification: D82, E51, G34, J33

DP2011-4
“Endogenous Alleviation of Overreaction Problem by Aggregate Information Announcement”

中村 友哉 金融庁金融研究センター研究官

荒戸 寛樹 首都大学東京都市教養学部助教

本稿では、不確実性と戦略的補完性を持つ市場において生じる公共情報への過剰反応問題を分析している。特に、ケインズ型美人投票ゲームを複数市場に拡張した上で、集計情報公開が社会厚生に与える影響に分析の焦点を当てている。経済のファンダメンタルズの予測の観点から考えると、集計情報は分離情報よりも劣った情報である。したがって、分離情報公開に比べて予測の精度が下がり、社会厚生に負の影響を与える。しかし、本稿では、あるパラメータの下で、集計情報公開の方が分離情報公開よりも社会厚生を改善する可能性があることを示す。各経済主体は集計情報から必要な情報を推測する。その際、経済主体間で完全相関していた情報が不完全相関した情報へと内生的に変換される。この結果、経済主体の行動にばらつきを与えて公共情報への過剰反応が緩和する。この効果が社会厚生に正の影響を与えることで、分離情報公開よりも集計情報公開が社会厚生を改善する可能性がある。最後に、分離情報と集計情報の間に存在する、情報の精度と過剰反応緩和のトレードオフを考慮して、望ましい情報公開政策ルールを提示する。

キーワード : Aggregate information, Social welfare, Transparency, Disclosure, Beauty contest

JEL classification: C72, D82, D83, and E58

DP2011-3
“Why Does the Law of One Price Fail in Japanese ETF Markets?”

岩井 浩一 金融庁金融研究センター研究官

本稿では、我が国ETF市場において一物一価の法則が成立しない背景を考察する。分析の結果、少なくとも2つの原因を確認することができた。第一は、ファンダメンタルズに関する情報が価格に反映される速度が発行市場と流通市場で異なっていることである。本邦ETF市場の独特のマーケットマイクロストラクチャーがこうした現象を引き起こしている可能性がある。第二の原因は、個別銘柄に特有のノイズトレーダーリスクが存在することが、裁定取引を抑制している可能性である。ロングショートポジションを通じた裁定取引に伴うリスクが大きく、裁定取引が活性化していないと予想される。これに対して、システミックな投資家センチメントの影響は大きくないと考えられる。

キーワード : Exchange-traded funds, the Law of One Price, investor sentiment, market microstructure

DP2011-2
“Determinants of the CDS Spreads of Japanese Firms Before and After the Global Financial Crisis”

岩井 浩一 金融庁金融研究センター研究官

本稿は我が国事業法人を参照組織とするCDSスプレッドの決定要因を実証的に検証するものである。スプレッドの決定要因として、構造型モデルから導出される構造変数のほかに、市場全体及びマクロ経済の動向を捉える幾つかの変数も採用した。分析の結果、これまでに報告されていない現象も含めて、CDS市場における価格形成の特徴を見出すことができた。第一に、構造変数は符号条件を満たし概ね有意であったが、CDSスプレッドの変動を十分に説明することはできない。構造変数の他に、市場・マクロ変数を説明変数に加えても、モデルの説明力は総じて低く、我が国CDS市場においてもクレジットスプレッド・パズルが存在しているといえる。第二に、金融危機前よりも金融危機後の方が回帰モデルの説明力が改善するという諸外国には報告されていない現象が確認された。この背景として、金融危機以降になると、海外における市場変動が我が国CDS市場に対して大きな影響を与えるようになったこと等が考えられる。第三に、金融危機後になると、本稿のモデルでは捉えきれないシステミックな要因がCDSスプレッドの変動を引き起こしていた可能性も確認された。これらの分析結果は、我が国CDS市場の価格形成メカニズムの理解に役立つものである。

キーワード : Credit default swaps (CDSs), Structural model, Dynamic Heterogeneous Panel Model

DP2011-1
「マクロプルーデンス体制の構築に向けた取組み」

小立 敬 金融庁金融研究センター特別研究員
(株式会社野村資本市場研究所研究部主任研究員)

金融危機を受けて進展する国際レベル、各国・地域レベルの金融制度改革においては、マクロプルーデンスが重要なキーワードとなっている。マクロプルーデンスの最終目的がシステミック・リスクを特定し、それに対処し、その削減を図ることであるということは概ねコンセンサスとなっている。一方、米国や欧州のマクロプルーデンスの取組みをみると、多様なアプローチが検討されている。そうした中で、概ね共通している点は、マクロプルーデンスに責任をもつ組織を新たに設置し、システミック・リスクを特定するという責務を新たな組織に課している点である。マクロプルーデンス責任機関は、ミクロプルーデンスを担う規制・監督当局や金融政策を担う中央銀行の組織から独立しており、マクロプルーデンス政策のガバナンスとアカウンタビリティの明確化が図られている。一方、マクロプルーデンスのツールの実践となると、全体としてツールはまだ確立されていない状況である。本稿では、各国・地域のマクロプルーデンスの取組みからその特徴を捉える。

キーワード : マクロプルーデンス、システミック・リスク、マクロプルーデンス責任機関、マルチディシプリナリー・アプローチ

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