【ピックアップ:中小企業金融】
 
「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」情報の受付・活用状況について


.「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」とは
 金融庁では、中小企業等への金融の円滑化に向けた取組みの一環として、中小企業など借り手の声を幅広く聞くため、「貸し渋り・貸し剥がしに関する情報の電子メール・ファックスによる受付制度」(通称「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」)を開設しています。これは、中小企業が、金融検査マニュアルなどを理由に金融機関から不当な扱いを受けた場合等に、金融庁等に直接通報できるよう、ファックスや電子メールの受付窓口を設けたものです。


.ホットラインに寄せられた情報の受付と活用の状況(平成15年12月末現在)
 
(1)  受付状況
 「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」の受付・活用状況については、四半期毎に公表することとしており、平成16年1月30日に第4回目の公表を行いました(注)。平成14年10月の開設以降昨年12月31日までに受け付けた情報の累積件数は1,264件となっています。受付状況の詳細は別表を参照してください。
 


 平成15年3月末まで及び平成16年1月末までの受付・活用状況については、それぞれ金融庁ホームページの「報道発表など」から「「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」情報の受付・活用状況について」(平成15年4月21日)「「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」情報の受付・活用状況について」(平成15年7月29日)「「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」情報の受付・活用状況について」(平成16年1月30日)にアクセスしてください。

(2)

活用状況
 
 金融機関全般に関する活用としては、貸し渋り・貸し剥がしホットラインに寄せられた情報を参考に、昨年7月、「与信取引に関する顧客への説明態勢及び相談苦情処理機能に関する事務ガイドライン」を制定しました。
 また、これを踏まえて昨年8月に策定した「平成15検査事務年度検査基本方針及び基本計画」に基づき、今事務年度(平成15年7月〜平成16年6月)の検査においては、特に借り手企業に対する説明責任の履行状況等の重点的検証を行っています。
 更に、寄せられた情報を参考に、金融機関に対して、中小企業金融の円滑化や顧客への十分な説明態勢の確立、相談・苦情処理機能の強化等を要請しています。


 個別金融機関に関する活用は、以下の方法により行っています。
 
(i ) 受け付けた情報については、監督において、四半期毎にとりまとめ、金融機関の対応方針、態勢面等のヒアリングを実施しています。これらの情報のうち、情報提供者等が金融機関側への企業名等の提示に同意している情報については、臨機に、事実確認等のヒアリングを実施しています。
 なお、これらのヒアリングの結果、監督上確認が必要と認められる場合には、銀行法第24条等に基づく報告を徴求することとしています。
(i i) 検査においては、検査を実施する金融機関に関し、検査時までに受け付けた全ての情報や当該金融機関から徴求した報告の内容を参考とし、借り手企業に対する説明責任の履行状況や苦情処理態勢等の検証を行っています。
 なお、検査の結果、問題があると認められる金融機関に対しては、銀行法第24条等に基づき、その改善措置に関する報告を徴求することとしています。


 具体的な活用の状況は、以下のとおりです。
 
(i ) 昨年7月1日から9月30日までに受け付けた情報については、監督において、これを基に56金融機関に対してヒアリングを行いました。
 また、そのうち監督上確認が必要と認められた2金融機関に対して、報告を徴求しました。
(i i) 昨年7月1日から9月30日までに着手した検査においては、19金融機関の検査に際し、検査時までに寄せられた情報等を参考とし、借り手企業に対する説明責任の履行状況や苦情処理態勢等の検証を行いました。
 また、検査の結果、借り手企業に対する説明責任の履行状況や苦情処理態勢等に問題のあった3金融機関に対し、上記期間において、その改善措置に関する報告を徴求しました。


 なお、「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」に寄せられた情報をより有効に活用し、政府全体として対応を図るため、中小企業庁と連携して関係省庁間の連絡会議を随時開催しています。

(別表)
「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」情報の受付状況
(平成15年10月1日から12月31日までの受付分)
「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」情報の受付状況


「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」の要領について、詳しくは金融庁ホームページの「政策ピックアップ」のコーナーから「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」にアクセスしてください。

財務局長会議の開催について

 金融庁は、1月28日、本事務年度(平成15年7月〜平成16年6月)第3回目の財務局長会議を開催しました。会議においては、高木長官の挨拶、当庁各局及び証券取引等監視委員会事務局からの業務説明、竹中大臣及び伊藤副大臣からの挨拶後、大臣・副大臣はじめ当庁幹部と財務局長等との意見交換を行いました。

 大臣挨拶の概要は、「金融システムの安定・強化に関しては、構造改革を支えるより強固な金融システムを構築するため、「金融再生プログラム」の諸施策の推進に全力を尽くしている。平成16年度の不良債権問題終結を目指し、取組を今後とも進めていく。中小・地域金融機関に関しては、「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」の諸施策を推進している。各財務局においては、今後とも、地域金融機関が策定した機能強化計画の実施状況について、中小企業関係者から得られた情報を活用しながら、引き続き是非しっかりとフォローアップしていただきたい。また、金融検査については、中小企業の実態により即した検査を確保する観点から、「金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編]」の改訂版を2月中に公表する予定である。今回の改訂においては、各金融機関が行う債務者の再生等に向けた真摯な取組状況なども踏まえた検査を実施していくことを明らかにした、と考えている。次に、今通常国会においては、地域経済の活性化や金融システムの安定・強化に資するよう、金融機能の強化のための新たな公的資金制度の整備及びこれに関連する法律案の提出を予定している。金融資本市場の基盤整備に関しては、銀行等による証券仲介業務の解禁、市場監視機能・体制の強化、ディスクロージャーの充実・合理化、投資家保護範囲の拡大、市場間競争の制度的枠組みの整備等を図る法律案、株式等について、決済の迅速化・確実化を実現するために新たに振替決済制度の対象とするなどの制度整備を図る法律案のほか、信託業について、その担い手や受託可能財産の範囲の拡大を図るなど、信託制度の整備を図るための法律案の提出を予定している。」というものでした。

 副大臣挨拶の概要は、「「金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編]」の改訂では、検査において、金融機関による債務者中小企業への積極的な働きかけを勘案したり、あるいは擬似エクイティといった中小企業金融の実態への対応を行うなどの点を改訂案に盛り込んだ。改訂案は、更に寄せられたコメントを検討して、2月中には改訂版を公表する予定である。これをより広く深く浸透させていくということが極めて重要であり、各財務局においては、金融機関に対しても本部のみならず現場のレベルまで浸透を図るように是非促していただきたい。更に、借り手の中小企業にも別冊の存在が十分認知されるよう、皆様の先導の下、各財務局・財務事務所の持つ様々なチャネルを積極的に活用して、周知徹底を図っていただくよう心からお願いしたい。私も、現場の皆様と良く接触させていただく機会が多く、リレーションシップバンキングの機能強化をはじめとして、様々な中小企業金融の円滑化を図るための施策を展開しているが、それが必ずしも広く地域に浸透していないという現状がある。 各財務局・財務事務所の皆様方の力が極めて重要であるので、特段のご配慮をお願いしたい。第2は、「ヤミ金融問題」の問題であるが、事態の深刻化を受けて、国会で改正の作業をさせていただいて成案を得、本年1月1日から施行された。各財務局においては、新法の施行を踏まえ、厳正かつ適切な監督を行うとともに、ヤミ金融等被害対策会議の開催等、都道府県、警察当局及び関係団体との一層の連携強化に努めていただきたい。第3に、証券仲介業制度については、個人投資家の裾野を広げ、証券市場の活性化に資すべく、本年4月からこの制度の導入がなされるが、各財務局においては、仲介業者の登録事務を円滑に進めるよう、その対応をお願いしたい。」というものでした。

 竹中大臣、伊藤副大臣はじめ当庁幹部と財務局長との意見交換においては、「地域経済と金融」についての財務局長からの報告及びそれについての意見交換が行われました。


【集中連載】
 
金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕の改訂について(第2回:「債務者との意思疎通」、「擬似エクイティへの対応」)

 金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕は、中小企業向け融資に焦点を合わせた金融検査の手引書(事例集)です。金融機関も融資に当たって参考にしており、借り手である中小企業の皆様にも参考になると思われます。
 金融庁は、中小企業の実態を反映したより一層きめ細かな検査を目指して、この金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕を改訂することとしております。
 そこでアクセスFSAでは、前号より金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕の改訂の内容についてより多くの方々に知っていただくため詳細な解説を連載しており、第1回目の「改訂の背景」に続いて、今回は「債務者との意思疎通」、「擬似エクイティへの対応」について記載します。
 なお、現在改訂作業中であり、解説内容に変更があった場合には、第3回目以降において補足させていただきますので、予めご了承ください。


.債務者との意思疎通
 
(1)  企業の成長性等について金融機関の評価を尊重
 当局が検査を実施するに当たって、債務者区分の判断において、企業の技術力、販売力、経営者の資質等や成長性を評価する場合に、企業訪問・経営指導等の実施状況や企業・事業再生実績等を検証し、これらが良好である場合には当該金融機関の評価を尊重することとしています。
 これは、中小・零細企業の債務者区分の判断に当たっては、日頃の債務者との間の密度の高いコミュニケーションを通じ適切に債務者の経営実態を把握することが不可欠であり、そうして得られた情報を金融機関が分析をし、企業の成長性を客観的に評価し、その評価に合理性が認められるのであれば、当該金融機関の情報収集・分析能力を尊重するというものである。
 今回、改訂案をパブリック・コメントに付したところ、密度の高いコミュニケーションとは、週に何度企業訪問をすれば良いのかなどの質問を頂いたところですが、企業内容を正確に把握するためには、その企業にあったコミュニケーション方法があると考えられます。また、いくら頻度をあげても、金融機関が情報を把握し、これを正確に分析する能力がなければ(つまり、金融機関の目利きがなければ)、金融機関の評価を尊重することはできないと考えています。

(2)

 金融機関による中小・零細企業の再生支援の実績を引当率に反映
 金融機関が積極的に要管理先等の企業・事業再生支援に取組めば、将来的には債務者の状況は改善し、結果として金融機関の信用リスクが減少するものと考えられます。
 したがって、金融機関が真摯かつ積極的・組織的な企業・事業再生支援への取組みを実施している場合には、その実績データが存在している債務者を、それ以外の債務者と区別してグルーピングすることにより、引当率に格差を設けることができるものとしたものです。
 また、金融機関が引当率の格差を設けている場合には、そのグルーピング基準が恣意的なものでないことや引当率の算定に当たっては、十分な母集団が確保されている必要があります。


.擬似エクイティへの対応
 DDS(貸出債権を資本的劣後ローンに転換することをいう)については、平成15年7月に公表された「新しい中小企業金融のあり方に関する研究会報告書」において検討がなされており、同報告書にあるとおり、中小・零細企業においては、設備資金目的の長期借入金など、事業基盤となっている資本的性格の資金を融資の形で調達している、いわゆる「擬似エクイティ」的な融資形態が多く見られます。金融機関が中小・零細企業の経営改善の一環として、こうした中小・零細企業特有の財務状況の改善に取組んでいくことを促進する観点から、DDSの取扱いを今回の改訂案に盛り込みました。
 具体的に、金融機関の中小・零細企業向けの要注意先債権(要管理先への債権を含む)で、貸出債権の全部または一部を債務者の経営改善計画の一環として、一定の要件を満たす貸出金(以下:資本的劣後ローンという)に転換している場合には、債務者区分等の判断において、当該資本的劣後ローンを当該債務者の資本とみなすことができることとしたものです。
 資本的劣後ローンを資本とみなすに際しては、その特性を勘案し、例えば市場価格のない株式の評価方法を踏まえて算出する等、会計ルールに基づいた適切な引当を行うこととしています。
 また、資本的劣後ローンに転換された部分が貸出条件緩和債権に該当する場合であっても、当該債権の残債等については、あらかじめ要管理先に対する債権として扱うことはしないものとしています。


 「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕」について、詳しくは金融庁ホームページの「政策ピックアップ」のコーナーにある「中小企業金融特集」の「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」にアクセスしてください。
 金融検査については、アクセスFSA第10号の「金融便利帳:金融検査」で解説しておりますので、アクセスしてみてください。
 

 
【金融ここが聞きたい!】


 このコーナーは、記者会見における質疑・応答(Q&A)などの中から、金融を巡る時々の旬な情報をセレクトしてお届けするものです。もっと沢山ご覧になりたい方は、是非、金融庁ホームページの「記者会見概要」のコーナーにアクセスしてください。
 
Q:先般国会提出された金融機能強化法案について、期待することは何ですか?


:日本の経済全体がバランスシート調整を進める中で、金融機能の一層の強化、更なるリスクに対応して、このデフレ経済の状況下で、厳しい状況下で更なるリスクに対応できるような、そういう体制をとっていくことが今非常に重要な課題になっていると思います。
 そうした観点から、今回このような金融機能の強化のための経営改革を行って収益改善を行う、それで金融機能を強化してしっかりと金融を支えていけるような金融機関に政府が資本参加すると、そのような仕組みが大変重要な意味を持っていると思っておりますので、しっかりと対応していきたいと思っております。
平成16年2月6日(金) 竹中大臣記者会見抜粋)

 
 第159回国会に提出した「金融機能の強化のための特別措置に関する法律案」及び「預金保険法の一部を改正する法律案」の詳細については、金融庁ホームページの「国会提出法案」から「第159回国会における金融庁関連法律案」にアクセスしてください。

 

Q:主要行に対する特別検査が今回3年連続で行われますが、その実施に併せて行われる企業の再建計画の検証の取組みについてお聞かせください。


:以前からも、バランスシート調整を進めるという観点から再建計画の検証チームの役割は大変重要だというふうに申し上げてきました。
 非常に限られたキャパシティーの中で、担当は非常に一生懸命やってくれていると思いますけれども、引き続きその検証をしっかり行っていくということ、それと、検査と監督の連携をしっかりとさせながら、実効性のある検査を、監督をしていきたいというふうに思っています。
平成16年1月27日(火) 竹中大臣記者会見抜粋)

 (検査と監督の)連携のあり方については、これはこれまでももちろんしっかりと連携は色々な形で取られているわけでありますけれども、以前から申し上げておりますように、再建計画の検証が大変重要であって、それを当然フォローアップするという意味での監督の役割も重要であると引き続き思っております。具体的にどのように行っていくかというのは、これからまた色々な検討を我々なりにするつもりでありますけれども、いずれにしても信用リスク管理の観点から連携をして、しっかりとフォローアップしていく、そういう意識を強く持ってやっていくことになっております。
平成16年1月30日(金) 竹中大臣記者会見抜粋)


 「特別検査」については、金融庁ホームページの「金融早わかりQ&A」から「『特別検査』とはどのようなものですか」にアクセスしてください。

 

Q:先般発表された去年10−12月期のGDP速報の数値について、どのように評価しますか?また、デフレからの脱却という先行きが見えてきたのでしょうか?更に今後の懸念材料はどういった点ですか?


:年率換算で7.0%の実質成長ということで、総じて民間の予測も含めまして高めの数字が出るという期待はありましたけれども、それを上回る数字であったと思っております。
 政府の経済判断は、景気は着実に回復しているということですけれども、民需を中心に緩やかにしっかりと回復していると、そのような実感を改めて思っております。
  (中略)
 今年度の経済の実績見込みにおきましても、経済成長の中で外需の貢献というのは4分の1ぐらいで、4分の3ぐらいは内需だと我々は見ていたわけですけれども、概ねそのような結果になっています。
 成長率そのものも、13年ぶりの高さということで、民需を中心に回復にあるということでありますので、こうした効果を地域や中小企業に浸透させて、しっかりとしたものにしていくことが重要だと、そのためにも構造改革をしっかりと進めていかなければいけないということだと思います。
  (中略)
 日本経済は、引き続き緩やかなデフレの中に依然としてあると思っております。そういう意味での認識は変えておりません。しかし、名目の成長率も3四半期連続してプラスが続いているということで、引き続きしっかりと見なければいけませんけれども、デフレの克服に向けて少しずつ前進していきたいと思っています。
  (中略)
 経済に対する懸念材料というのは、常に何らかの形であると思いますけれども、今の状況で言いますと、為替レートを中心とする国際的な資金の流れの問題等々は引き続き見ていかなければいけませんし、世界全体がバランスよく発展していけるかどうかということも見ていかなければいけないと思います。
 それと国内的には、これを地域、中小企業に、これからしっかりと浸透させなければいけない段階だと思っていますので、そういう点を引き続きしっかりと見ていきたいと思います。
平成16年2月18日(水) 竹中大臣記者会見抜粋)

 


 四半期別GDP速報(平成15年10-12月期・1次速報)については、内閣府 経済社会総合研究所のホームページから「四半期別GDP速報(平成15年10-12月期1次速報)」にアクセスしてください。

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