アクセスFSA 第26号 (2005年1月)
金融改革プログラムを発表する伊藤大臣(12月24日) マッカーシー英国FSA長官と面談する伊藤大臣(1月6日)
金融改革プログラムを発表する伊藤大臣(12月24日) マッカーシー英国FSA長官と面談する伊藤大臣(1月6日)
目 次
【トピックス】
 ○  ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応について
 ○  「変額年金保険等の最低保証リスクに係る責任準備金に関する告示及びガイドライン」の概要について
 ○  高校3年生を対象とした金融取引等の基礎的知識に関するパンフレットの作成について
 ○  IOSCO(証券監督者国際機構)専門委員会による「信用格付機関の基本行動規範」の公表について
 ○  CESR(欧州証券規制当局委員会)の「第3国会計基準の同等性及び第3国の財務情報の法執行メカニズムの説明に関する概念ペーパー案」へのパブリック・コメント・レターの発出について
 ○  伊藤大臣の訪中及び訪欧について
 ○  伊藤大臣の北海道出張について(北海道財務局)
【特集:金融庁の平成17年度機構・定員及び予算について】
【ピックアップ:中小企業金融】
 ○  リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムの進捗状況について(平成15年度〜16年度上半期)
【海外最新金融事情】
 ○  アジア債券市場の育成と金融庁
【集中連載】
 ○  ペイオフ解禁拡大 (第3回:決済用預金の3要件)
【集中連載】
 ○  金融改革プログラム −金融サービス立国への挑戦― (第1回:「金融改革プログラム」の目指すもの)
【法令解説】
 ○  改正信託業法の概要について
 ○  金融先物取引法の一部を改正する法律の概要について
【金融ここが聞きたい!】
【金融便利帳】
 ○  今月のキーワード:「外国為替証拠金取引」
【お知らせ】
【12月の主な報道発表等】


【トピックス】
 
ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応について

 昨年(平成16年)10月中旬以降、証券取引法上のディスクロージャーをめぐり、不適正な事例が相次いで判明しました。これはディスクロージャー制度に対する国民の信頼を揺るがしかねない事態であるとの認識に立ち、金融庁では、昨年11月16日、ディスクロージャー制度に対する信頼性の確保に向けた対応策を取りまとめ、公表しました。更に、この対応策の公表後、約1か月が経過した12月24日には、それまでの作業の進捗状況や全開示企業による自主的点検の回答状況等を踏まえ、更なるディスクロージャー制度に対する信頼性の確保に向けた対応策を取りまとめ、公表したところです。

 これらの対応策の概要は次のとおりです。
.「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応」(平成16年11月16日)
 この対応策は、(a)有価証券報告書等の審査体制の充実・強化、(b)公認会計士等に対する監督等の充実・強化、(c)開示制度の整備、(d)市場開設者に対する要請の四つの柱からなっており、その主な内容は次のとおりです。
 
(1)  有価証券報告書等の審査体制の充実・強化策として、(a)有価証券報告書等の虚偽記載等に係る検査・報告徴求権限の本年7月からの証券取引等監視委員会への移管、(b)ディスクロージャー・ホットラインの開設、(c)EDINET(有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)の機能充実、特に、XBRL(財務情報を効率的に処理するためのコンピューター言語)化に向けた動きの加速、(d)全開示企業に対する「株主の状況」等についての開示内容の自主的な点検の要請が盛り込まれました。
(2)  公認会計士等に対する監督等の充実・強化策として、(a)開示会社の有価証券報告書等における、監査人の監査体制や監査継続年数についての開示の検討、(b)個人会計士が行う監査や長期間監査を継続している監査人の監査が、独立性や品質管理の観点から問題を生じていないか等に留意した公認会計士・監査審査会におけるモニタリングの実施が盛り込まれました。
(3)  開示制度の整備については、金融審議会第一部会ディスクロージャー・ワーキング・グループに対して、(a)財務報告に係る企業の内部統制の有効性に関する経営者による評価と公認会計士等による監査のあり方、(b)継続開示義務違反に対する課徴金制度のあり方、(c)コーポレート・ガバナンスに係る開示の充実のあり方、(d)親会社が継続開示会社でない場合の親会社情報の開示の充実のあり方についての検討を要請しました。
(4)  市場開設者に対しても、会社情報の適時適切な開示の確保等に向け、上場規則の見直しなど所要の措置が講じられるよう、要請が行われました。

 これらの対応策のうち、ディスクロージャー・ホットラインの開設や、全開示企業に対する自主点検の指示、市場開設者に対する対応要請などは、直ちに実施に移されました。また、開示制度の整備についても、金融審議会第一部会のディスクロージャー・ワーキング・グループでは、検討要請のあった事項につき、他の審議項目と切り離して審議・検討を進められ、その検討結果は、昨年12月24日に開催された金融審議会第一部会において報告・審議が行われ、同第一部会報告「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けて」として公表されました。


.「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応(第二弾)」(平成16年12月24日)
 この対応策は、(a)全開示企業による自主的点検を受けた対応、(b)有価証券報告書等の審査体制、(c)開示制度の整備、(d)公認会計士等に対する監督、(e)市場開設者に対する要請からなっており、その主な内容は次のとおりです。
 
(1)  「全開示企業による自主的点検を受けた対応」として、有価証券報告書等の自主的点検に関し、未回答企業に対し点検状況を照会し、必要に応じ報告徴求・立入検査等を行います。
 また、訂正報告書の内容を分析し、有価証券報告書等の記載ルール(様式の「記載上の注意」)の明確化等を図るとともに、全開示企業に文書を送付し、開示上の留意点について周知徹底を図ります。
(2)  「開示制度の整備」として、第一部会報告「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けて」を踏まえ、次の対応を行います。
 
(a)  現在、任意の制度として導入されている経営者による確認書制度の活用を促すとともに、経営者による評価の基準及び公認会計士等による検証の基準の明確化を企業会計審議会に要請し、当該基準に示された実務の有効性等を踏まえ、評価及び検証の義務化について検証します。
(b)  継続開示義務違反に対する課徴金制度の導入を図るため、証券取引法の改正法案の今通常国会提出を目指し、法制面の検討を早急に進める等の対応を行います。
(c)  コーポレート・ガバナンスに係るディスクロージャーを充実するため、関係内閣府令を改正し、本年3月期から、有価証券報告書において、以下の事項の開示を義務づけます。
 
 内部監査及び監査役(監査委員会)監査の組織、人員、手続、内部監査、監査役(監査委員会)監査及び会計監査の相互連携
 社外取締役及び社外監査役と会社との人的関係、資本的関係又は取引関係その他の利害関係
 関与公認会計士の氏名、監査法人への所属及び監査継続年数。会計監査業務に係る補助者の構成。監査証明を個人の公認会計士が行っている場合の審査体制
(d)  親会社が継続開示会社でない場合の親会社情報のディスクロージャーを充実するため、関係内閣府令を改正し、本年3月期から、継続開示会社である子会社の有価証券報告書において、親会社に係る以下の事項の開示を義務づけます。
 
 株式の所有者別状況及び大株主の状況
 役員の状況
 商法に基づく貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書(会計監査人の監査を受けている場合には、監査報告書を添付)
(3)  公認会計士等に対する監督に関し、公認会計士・監査審査会において、監査法人の内部統制に重点を置いたモニタリング及び立入検査を行います。また、その結果も踏まえ、監査法人における内部統制の強化や品質管理の向上等に向けて、監査基準等の見直しを検討します。


 ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応について、詳しくは金融庁ホームページの「報道発表など」から「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応について」(平成16年11月16日)及び「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応(第二弾)について」(平成16年12月24日)にアクセスしてください。


 EDINETについては、アクセスFSA第19号(2004年6月発行)の「金融便利帳:EDINET」で解説しておりますので、アクセスしてみてください。

「変額年金保険等の最低保証リスクに係る責任準備金等に関する告示及び事務ガイドライン」の概要について

 変額年金保険等に係る責任準備金積立ルール等については、平成16年10月22日に改正した関係府令及び告示(※1)において積み残されていた事項を12月2日から12月15日までの間、パブリックコメントに付し、その結果とそれらを踏まえた告示及び事務ガイドラインの改正内容(※2)を12月27日に公表しました。
 (※ 1)関係府令及び告示については、金融庁ホームページの「報道発表など」から、「「変額年金保険等の最低保証リスクに係る責任準備金の積立等に関する内閣府令等」(案)に対するパブリックコメントの結果について」(平成16年10月21日)にアクセスしてください。
 (※ 2)パブリックコメントの結果と告示及び事務ガイドラインについては、金融庁ホームページの「報道発表など」から、「「変額年金保険等の最低保証リスクに係る責任準備金等に関する告示及び事務ガイドライン」(案)に対するパブリックコメントの結果について」(平成16年12月27日)にアクセスしてください。


.デリバティブを使用したヘッジに関する取扱い
 次の(a)から(c)の要件を満たす場合に限り、ソルベンシー・マージン基準における最低保証リスクを減殺することができます。(平成8年大蔵省告示第50号の改正)
 
 (a)  事前要件(ヘッジ対象及びヘッジ手段の明確化、ヘッジ手段の有効性についての事前予測等)
 (b)  事後要件(定期的なヘッジ手段の有効性の評価、ヘッジの区分管理 等)
 (c)  中止要件


.再保険に関する取扱い
 出再割合が50%を超える場合は、50%を超える部分についての再保険リスクのリスク係数を2%とします。(平成8年大蔵省告示第50号の改正)


.代替的方式の使用条件
 期待収益率及びボラティリティが次の(a)から(c)の要件を満たす場合に、代替的方式を使用することができます。(事務ガイドラインの改正)
 
 (a)  過去の実績や将来の資産運用環境の見通し等から、合理的かつ客観的根拠に基づき定められている。
 (b)  例えば、株価や金利が長期にわたり高水準で続いた昭和30年から昭和48年までのような期間を含めない。
 (c)  標準的方式によって計算される保険料積立金の額と10%以上乖離しない。


.その他
 
 (a)  解約率等の計算基礎率については、一定の要件のもとで使用することができます。(事務ガイドラインの改正)
 (b)  既契約については、将来収支分析によって必要な積立額の確保を図ることとします。(事務ガイドラインの改正)


.適用時期
 保険料積立金に関するものは平成17年4月1日以降に締結する保険契約(平成16年4月1日以降に締結する保険契約を含めることも可能。)に適用します。危険準備金及びソルベンシー・マージン基準に関するものは過去の全ての保険契約を対象とし、平成17年4月1日以後に開始する事業年度から適用します。

高校3年生を対象とした金融取引等の基礎的知識に関するパンフレットの作成について

 昨年12月24日、金融庁は、高校3年生を対象とした金融取引等の基礎的知識に関するパンフレットを作成し、金融庁のホームページに掲載しました。

クリックするとパンフレット(PDF)が開きます 高校3年生が、新社会人として社会に出た時に「賢い消費者」として生活していくためには、学校教育段階から、「金融」の仕組み・働きを理解し、また金融取引に関する基礎的な知識を習得していることが大変重要になってきています。
 しかしながら、現状においては、生徒が十分な知識を得ることなく実社会に出ていることから、金融取引に関連するトラブルに見舞われやすい状況となっています。とりわけ、最近、「ヤミ金融問題」や「振り込め詐欺問題」といったことが社会問題化しています。
 これらの未然防止の観点からも、教育現場において、高校卒業を控えた高校3年生を対象とした金融経済教育を積極的に実践してもらうためのパンフレットを作成しました。

 金融庁としては、引き続き、教育段階における金融経済教育の推進に積極的に取り組んでいきたいと考えています。


 本パンフレットについて
 
.パンフレット作成のねらい
 高校3年生を対象に、新社会人として社会に出た時に、「賢い消費者」として金融機関や金融商品・サービスの仕組みや内容をよく理解し、主体的に選択することができる基礎的な知識を習得してもらうことを目的としました。


.パンフレットの内容
 高校3年生に、社会人の一人として最低限必要となる金融取引に関する知識や最近の金融トラブル事例とその対処方法などについて、見やすく、かつ生徒が扱い易く身近に感じられ、興味・関心がもてるものとしました。


.パンフレットの活用方法
 高校3年生を対象として、「総合的な学習の時間」などにおいて、金融取引などに関する知識の習得を目的とした授業に活用してもらうことを想定しています。

 金融庁では従来から、小学生向けパンフレット、中学・高校生向け副教材を作成しています。今回の高校3年生向けパンフレットの作成により、金融経済教育に関する副教材・パンフレットが、一通り整備されることとなリました。金融庁としては、今後、これら副教材などの配布を通じて金融経済教育のより一層の推進を図っていきたいと考えています。


 高校3年生を対象とした金融取引等の基礎的知識に関するパンフレットについて、詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表など」から「高校3年生を対象とした金融取引等の基礎的知識に関するパンフレットの作成について」(平成16年12月24日)にアクセスしてください。

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