IOSCO(証券監督者国際機構)専門委員会による「信用格付機関の基本行動規範」の公表について


.IOSCOとは何か
 
(1)  IOSCOは、世界105の国と地域の証券規制当局などがメンバーになっている国際的な機構であり、証券監督者国際機構の略称です(通常「イオスコ」と呼ばれます)。
(2)  IOSCOは、証券規制に関する原則や指針といった国際的なルールの策定などの活動を行っており、金融庁や証券取引等監視委員会は、こうしたIOSCOの活動に積極的に参画しております。この点については、金融庁が昨年12月24日に公表した「金融改革プログラム―金融サービス立国への挑戦―」においても、「金融行政の国際化と国際的なルール作りへの積極的参加」とされているところです。


.IOSCOは最近どのような活動を行っているのか
 
(1)  2001年末の米国エンロン社などの企業会計不正事件を契機として、コーポレート・ガバナンスの強化、監査人の独立性・監督の強化、ディスクロージャーの強化、証券アナリストの規制強化などが、証券市場の基盤に関わるグローバルな課題として、国際的に広く議論されてきました。IOSCOにおいても、先進国・地域から構成される専門委員会を中心に、こうした課題について活発な議論をしてきています。
(2)  IOSCOは、こうした取組みの一環として、2003年9月に、「信用格付機関の活動に関する原則」を公表し、信用格付機関が遵守するべき基本的な原則を定めました。


.IOSCOの「信用格付機関の基本行動規範」とはどのようなものか
 
(1)  IOSCOは、2004年12月23日に、「信用格付機関の基本行動規範」を公表しました。これは、上記の「信用格付機関の活動に関する原則」を実施するために、信用格付機関が遵守するべき、より詳細な指針(ガイダンス)を定めるものです。
(2)  「信用格付機関の基本行動規範」は、具体的には、○格付プロセスの品質と誠実性、○信用格付機関の独立性と利益相反の回避、○信用格付機関の一般投資家及び発行体に対する責任、○行動規範の開示と市場参加者とのコミュニケーション、の4つの柱立ての下で、合計52の具体的な行動規範を定めております。
(3)  52の具体的な行動規範の例を紹介します。2つ目の柱立てである「信用格付機関の独立性と利益相反の回避」において、信用格付機関が信用格付業務以外の業務(コンサルティング業務等)を行う場合に講ずるべき措置として、以下の2つの具体的な行動規範が定められております。
 
「2.5.信用格付機関は、その信用格付業務及びアナリストを、運用上及び法律上、利益相反を惹起する可能性がある当該信用格付機関の他の業務(コンサルティング業務を含む)から分離するべきである。信用格付機関は、その信用格付業務と必ずしも利益相反の関係にない付随的な業務について、利益相反が生じる可能性を最小化するよう設計された手続及び仕組みが存在することを確保するべきである。」
「2.8.信用格付機関は、格付対象者(事業体)との間の報酬契約の一般的な性質を開示するべきである。信用格付機関は、その格付対象者から、コンサルティング・サービスへの報酬等の格付サービスと関係のない報酬を受け取る場合には、当該格付対象者から格付サービスに関して受け取る手数料に対する、格付以外の手数料の割合を開示するべきである。」
(4)  IOSCOとしては、個々の信用格付機関が、これら52の行動規範を完全に実効性のあるものにすることを期待しております。そして、「信用格付機関の基本行動規範」においては、信用格付機関は、自らの行動規範において「信用格付機関の基本行動規範」の各規範がどのように取り扱われているか開示するべきであるとされております。
(5)  現在、米国SEC(証券取引委員会)やEU(欧州連合)において信用格付機関への対応が検討されているところであり、こうした動きも国際的に注目されているところです。
 IOSCOが今回公表した「信用格付機関の基本行動規範」の詳細については、金融庁ホームページの「報道発表など」から「IOSCO(証券監督者国際機構)専門委員会による「信用格付機関の基本行動規範」の公表」(平成16年12月24日)にアクセスしてください。
 また、「信用格付機関の活動に関する原則」については、金融庁ホームページの報道発表などから「IOSCO(証券監督者国際機構)専門委員会による「「信用格付機関の活動に関する原則」「セルサイド証券アナリストの利益相反に対処するための原則」の公表」(平成15年9月30日)にアクセスしてください。

 ISCOの沿革・組織・原則などについては、金融庁ホームページのインフォメーションから「国際関連情報」にアクセスしてください。

CESR(欧州証券規制当局委員会)の「第3国会計基準の同等性及び第3国の財務情報の法執行メカニズムの説明に関する概念ペーパー案」へのパブリック・コメント・レターの発出について


.会計基準の同等性評価を巡る動向
 
(1)  EU(欧州連合)は、域内金融市場統合の一環として、資本市場の基盤(インフラ)である会計基準を統一するため、2005年から、EU域内上場のEU企業に国際会計基準(IAS)の使用を義務づけることとしています。
(2)  また、外国企業に対しても、2007年1月以降、IAS又はこれと同等の会計基準の使用が義務づけられることとなっています。
(3)  IASと同等の会計基準であるかどうかの評価は、EU加盟各国の証券規制当局からなるCESR(欧州証券規制当局委員会)が、EUの行政府であるEC(欧州委員会)に対して専門的な助言を行うことにより進められます。

 このため、CESRは、同等性評価プロセスの第1段階として、同等性に関して一般的な定義・評価方法などを定める概念ペーパー(コンセプト・ペーパー)案を公表し、昨年12月22日を期限としてパブリック・コメントを求めていました。

【同等性評価プロセスの流れ(概要)】
 
【同等性評価プロセスの流れ(概要)】


.考え方
 
(1)  日本企業は、従来から、株式の上場や債券の発行など、EU市場において活発な資金調達活動を行っています。また、我が国会計基準は、「会計ビッグバン」などを通じて急速に進展し、国際的な会計基準と整合的で同等なものとなっています。
(2)  このため、我が国会計基準のIASとの同等性が認められ、EU資本市場が、引き続きグローバルかつ開放的な性格を維持するとともに、これによってEU資本市場の投資家に幅広い投資機会が確保されることが重要であると考えられます。


.金融庁の対応
 
(1)  このような観点から、金融庁は、我が国会計基準のIASとの同等性が認められるよう、CESRの概念ペーパー案に意見を述べています。具体的には、企業会計基準委員会(ASBJ)などの国内の関係者と連携して、昨年11月23日に開催されたCESR主催の公聴会に参加し、12月21日に、パブリック・コメント・レターを発出しました。
(2)  パブリック・コメント・レターでは、同等性評価プロセスの公正性・透明性の確保や、EU資本市場のグローバルかつ開放的な性格の促進などを求めています。
(3)  我が国会計基準とIASとの同等性については、以下のスケジュールに基づき、ECが2005年12月末までに最終決定する予定です。
(4)  金融庁としては、我が国会計基準のIASとの同等性が認められるよう、今後とも、官民の関係者と緊密な連携を図りつつ、EU関係者に対して働きかけていく考えです。

【同等性評価のスケジュール】
【同等性評価のスケジュール】


 金融庁が発出したパブリック・コメント・レターについて、詳しくは金融庁ホームページの「報道発表」から「CESR(欧州証券規制当局委員会)の「第3国会計基準の同等性及び第3国の財務情報の法執行メカニズムの説明に関する概念ペーパー案」へのパブリック・コメント・レターの発出について」(平成16年12月21日)にアクセスしてください。

伊藤大臣の訪中及び訪欧について

 伊藤大臣は、昨年12月26日から27日にかけて訪中し、劉明康銀行業監理監督委員会委員長、周小川中国人民銀行行長と会談を行いました。会談では、日中両国の金融セクターの状況や、両国の今後の金融行政における取組みを含む、両国の経済情勢について意見交換を行いました。
 伊藤大臣からは、わが国の不良債権問題は正常化に向け着実に進捗していることをはじめとする金融セクターの状況や、「金融改革プログラム」の考え方を説明しました。これに対して、先方からは、わが国の最近の動向を歓迎するとともに、中国においても、不良債権問題等を含めた金融セクターの状況について引き続き改善に向けて努力しているとの説明がありました。
 日本と中国の経済関係が深まる中で、金融面でも両国間のつながりは強まっています。このため、当局間の連携・協力関係を強化することが重要となってきていますが、今回の訪中においては、当局のトップ同士が直接意見交換を行い、信頼関係を築くことができ、非常に有意義なものとなりました。

 また、伊藤大臣は、1月5日から9日にかけてイギリス、フランス両国を訪れ、マッカーシー英国FSA(金融サービス機構)長官、キングBOE(イングランド銀行)総裁、ノワイエ・フランス銀行総裁らと会談を行いました。会談では、日本及び英仏を含む欧州における金融セクターの動向や、経済の情勢について意見交換を行いました。
 伊藤大臣からは、わが国の金融機関における不良債権問題が正常化に向け着実に進捗している中、わが国の金融システムを巡る局面が安定から活力へと転換しつつあることや、IT化が進展していること等を踏まえ、利用者の満足度が高い金融システムの実現を民の活力で目指していくために、「金融改革プログラム」を取りまとめたことについて紹介しました。また、わが国会計基準のEUにおける受容れ問題についても言及しました。
 これに対して、先方からは、わが国の最近の動向を歓迎するとともに、金融活動がグローバル化する中で、当局間の協力関係を一層強化していくことが必要になっている等の指摘があり、当局間の連携をより一層強めていくことが望ましい旨、意見が一致しました。
 今回の訪欧においては、当局のトップ同士が直接意見交換を行い、信頼関係を築くことができ、非常に有意義なものとなりました。

伊藤大臣の北海道出張について(北海道財務局)

 伊藤大臣は、昨年12月15日〜16日の2日間にわたり北海道を訪れ、知事や各界代表等と北海道経済や地域金融の状況について意見交換を行いました。また、札幌証券取引所を視察し、地域取引所の活性化について、取引所関係者と意見交換を行いました。
 各界からは、北海道経済が依然厳しい状況にある中、産学官連携による産業構造転換への取組みや、金融機関における経営基盤強化や不良債権処理に向けた取組み等が紹介されました。
 伊藤大臣からは、地域の新しいニーズに適切に対応し、産学官交流を深めることが必要であること、また、地域金融機関は地域の発展のために地域に密着した金融機能を発揮することが求められており、平成17年4月からのペイオフ解禁拡大の実施に向け、経営基盤強化に向けた更なる努力が必要などと説明しました。
 また、北海道財務局職員に対し「ペイオフ解禁拡大を予定どおり行うため、金融システムの安定に向け、業務を遂行して欲しい。金融を巡る環境は変化しており、金融システムの安定化から活力に向けて金融行政のあり方を転換していかなければならない。」との訓示を行いました。
 今回の訪問は、地域経済の活性化や中小企業の再生に向けた各機関の取組状況を伊藤大臣が直接認識できた点において、大変有意義なものとなりました。

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