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- IOSCO(証券監督者国際機構)専門委員会による「信用格付機関の活動に関する原則」「セルサイド証券アナリストの利益相反に対処するための原則」の公表
平成15年9月30日
金融庁
IOSCO(証券監督者国際機構)専門委員会による
「信用格付機関の活動に関する原則」
「セルサイド証券アナリストの利益相反に対処するための原則」の公表
1.経緯
(1)世界102か国・地域の証券監督当局等から構成されるIOSCO(証券監督者国際機構)では、一昨年末の米国エンロン社等の企業破綻により提起された証券市場の基盤にかかわる諸問題を検討し、これまでいくつかの原則を公表。
(2)IOSCO専門委員会(金融庁を含む先進国・地域の証券当局で構成)は、こうした検討の一環として、9月25日に、「信用格付機関の活動に関する原則」及び「セルサイド証券アナリストの利益相反に対処するための原則」を公表。
(参考1) G8宣言「成長の促進と責任ある市場経済の増進」(2003年6月2日)
「一体性、質及び入手可能性は、信頼性のおける金融情報の基礎である。我々は全ての情報提供者-特に企業及びその監査人、金融アナリスト、投資銀行、格付機関に対し、これらの原則に従うよう要請する。」
(参考2) 7か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明(2003年9月20日)
「我々は、特に、会計監査、金融アナリスト、信用リスク移転、再保険、格付機関といった分野における金融安定化フォーラム(FSF)の活動を歓迎し、これらの分野における協力を引き続き強化するよう促す。」
2.概要
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信用格付機関の格付意見が証券市場に与え得る影響に照らし、信用格付機関の活動に関する原則を定めている。
具体的には、4つの基本原則((1)格付プロセスの品質と誠実性、(2)独立性と利益相反、(3)開示と透明性、(4)秘密情報)の下で、合計18の原則を定めている。
(2)「セルサイド証券アナリストの利益相反に対処するための原則」の概要(別紙2)
証券会社に所属するいわゆるセルサイド証券アナリストの利益相反が、投資家保護上問題を生じさせるとの懸念から、IOSCOメンバー国が対処するべき分野を明らかにしている。
具体的には、8つの原則の下で、これを実施するための措置が定められている。措置は、(1)すべてのメンバーに適用されることが意図されている「中核的措置」(Core measures)」と、(2)メンバーによって適切かどうかは異なるが採用することがありうる措置の例である「その他措置(Other Measures)」に区分されている。
(参考3) IOSCOが定める原則は、一般に、証券規制に関する指針(ガイダンス)を示すものであり、メンバー国に対する法的拘束力はなく、具体的にどのような対応をとるかはあくまでも各メンバー国の判断に委ねられている。
上記の2つの原則においても、その具体的な実施方法について、各国の市場状況や法制度によって異なるとされており、政府規制、非政府機関の規則、自主規制機関の規制、業界綱領、会社内部の方針・手続を例示するにとどめている。
(参考4) なお、「証券アナリストに関するプロジェクトチーム)」(金融庁が議長)による「証券アナリストの利益相反に関する報告書」(2003年2月)も、公表される予定。
連絡・問い合わせ先
金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
総務企画局国際課 企画官 松尾(内線3189)、課長補佐 田中(内線3157)
「信用格付機関の活動に関する原則」の概要
(1) 格付プロセスの品質と誠実性
信用格付機関は、借り手・貸し手その他の市場参加者間の情報の非対称性を縮小させることを助ける意見を出すよう、努めるべきである。
(2) 独立性と利益相反
信用格付機関の格付決定は、政治的・経済的圧力からも、またその資本構成、事業・財務活動またはその従業員の金融上の利害による利益相反からも、独立かつ自由であるべきである。信用格付機関は、信用格付業務の独立性・客観性を損わせまたは損わせるように見える可能性のある活動・手続・関係をできる限り避けるべきである。
(3) 開示と透明性
信用格付機関は、開示と透明性を格付活動の目的とするべきである。
(4) 秘密情報
信用格付機関は、秘密保持合意の条項又は情報が秘密のまま共有されるとの相互理解の下、発行体又はその代理人から伝えられたすべての非公開情報の秘密性を維持するべきである。
「セルサイド証券アナリストの利益相反に対処するための原則」の概要
(1) アナリストの証券取引及び金融上の利害関係
【原則1】アナリストの証券取引活動や金融上の利害関係が、当該アナリストの調査及び推奨を歪めることのないような仕組みが存在するべきである。
(2) 会社の金融上の利害関係及び事業上の関係
【原則2.1】アナリストの調査及び推奨が、当該アナリストを雇用する会社の証券取引活動や金融上の利害関係によって歪められることのないような仕組みが存在するべきである。
【原則2.2】アナリストの調査及び推奨が、当該アナリストを雇用する会社の事業上の関係によって歪められることのないような仕組みが存在するべきである。
(3) アナリストの報告体系及び報酬
【原則3】アナリストの報告体系と報酬枠組みは、利益相反及びその可能性を排除し、又は厳しく制限するように構築されるべきである。
(4) 法令遵守システム及び経営幹部の責任
【原則4】アナリストを雇用する会社は、アナリストの利益相反及びその可能性を識別するとともに、これを排除、管理又は開示するための書面による内部手続又は内部統制を構築するべきである。
(5) 外部からの影響
【原則5】発行体、機関投資家その他外部の者からのアナリストに対する不当な影響は、排除又は管理されるべきである。
(6) 開示(ディスクロージャー)の明瞭性・特定性・顕著性
【原則6】利益相反及びその可能性の開示(ディスクロージャー)は、完全、適時、明確、正確、詳細、特定かつ目立つものであるべきである。
(7) 誠実性及び倫理的行動
【原則7】アナリストは、高い誠実基準を保持するべきである。
(8) 投資家教育
【原則8】投資家教育は、アナリストの利益相反に対処するために重要な役割を果たすべきである。