「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」改正の概要について

 金融庁は、平成17年12月22日、中小・地域金融機関(以下「地域銀行等」と言います。)を対象とする「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」(以下「中小向け監督指針」と言います。)を改正しました。
 今回の改正は、先般(昨年10月28日)、新たに「主要行等向けの総合的な監督指針」(以下「主要行向け監督指針」といいます。)が策定され、現下の環境変化や新たな問題意識等を反映した幅広い内容が規定されたことから、中小向け監督指針についても、これらを適宜反映させることを主たる目的として行ったものです。
 改正に当たっては、地域密着型金融を中心とした、主要行とは異なる業務特性等を有する地域銀行等を対象とする、財務局職員向けの「オールインワン型手引書」としての位置付けや、基本的な構成は維持しつつ、主要行向け監督指針における個別の規定について、地域銀行等への適用の要否・適否を検討しました。また、平成16年12月24日の金融改革プログラムにおいて示された、利用者保護ルールの徹底や金融機関の経営管理(ガバナンス)の向上、情報開示の充実といった観点も反映させています。
 その結果、全体としてみると、例えば、経営管理や一般的なリスク管理に関する規定等、預金取扱金融機関として当然に主要行と同様の監督を求めることとしたものが多数に上っている一方、主要行が主要行であるが故に要請されている事項やベスト・プラクティス的な色彩の濃い規定、或いは、適用事例が限定的となる規定等、敢えて盛り込まなかった規定も相当あります。
 具体的には、新たな規定として、近年における重要性の増大を背景に、役員による法令等違反行為への対応に関する規定や主要株主の認可審査に関する規定を盛り込むとともに、金融機関におけるシステム関連の取組み等に対応するため、金融機関相互のシステムネットワークの利用に関する規定、インターネットバンキングに関する規定、システム統合リスク・プロジェクトマネジメントに関する規定等を追加しました。その他、金融犯罪に対する利用者保護の観点からATMシステムのセキュリティ対策に関する規定も追加していますが、安全性確保のための手法については一定の柔軟性を認めています。
 また、従来の規定を拡充・明確化するものとして、監査役設置会社における経営管理(ガバナンス)に関する規定やそれに伴う内部監査ヒアリングの定例化の規定、組織犯罪等への対応に関する規定、一般的なシステムリスクに関する規定等を盛り込みました。情報開示の適切性・十分性に関する規定も拡充しましたが、その中で条件緩和債権の判定における基準金利の考え方等についても明確化を図っています。その他、危機管理体制について業務継続計画(BCP)を盛り込み実質的な拡充を図ったほか、各種リスクに係る監督上の着眼点に関する規定や、検査部局等との連携に関する規定、銀行持株会社の監督に関する規定等についても、地域銀行等や財務局職員向けに適宜修正した上で盛り込んでいます。
 他方、主要行向け監督指針の規定のうち、自己資本の質に関する規定、収益性の改善に関する規定、統合リスク管理に関する規定等については、主要行特有の規定又はベスト・プラクティス的色彩の濃い規定であり、主要行向け監督指針の規定を一律に適用することは適当でないことから、盛り込まないこととしました。また、委員会等設置会社における経営管理に関する規定、カントリーリスクや海外業務管理に関する規定、プライベートバンキングに関する規定等は、地域銀行等の業務特性等に照らして現状適用例が極めて限定的であるため、今回は敢えて規定せず、主要行向け監督指針を参照することとしています。

 今回の改正の主な内容は以上のとおりですが、これらの規定は、一部を除き、昨年12月22日の公表と同時に適用となっており、金融庁としても、円滑に実際の監督事務に反映させるよう努めてまいります。
 なお、今回の改正は、基本的に主要行向け監督指針の策定を受けたものであることから、今後の検討課題として残されている事項もあります。例えば、金融機関の取締役の資質に関する規定(Fit and Proper原則)の具体的な着眼点の明確化、バーゼルII(新しい自己資本比率規制)の導入に向けた金融機関のリスク管理に関するルール・態勢の整備及び検査監督当局の体制整備、銀行法改正による銀行代理店制度の見直し等に関する規定の整備等については、今後改めて改正を行っていくこととなります。


 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針の改正について(平成17年12月22日)」にアクセスしてください。

地域銀行の平成17年度中間決算の概要について(暫定集計値)


 地域銀行の平成17年度中間決算発表を受けて、金融庁では各行の発表した計数等を集計し、12月9日に公表しました(公表後、業績修正を踏まえて12月20日に更新)。
 以下、地域銀行の平成17年度中間決算の概要について説明します。



.損益の状況
 実質業務純益は10,007億円と、平成16年9月期(9,624億円)に比べて微増となりました。
 実質業務純益が微増するなか、不良債権処分損の減少などから、中間純利益は平成16年9月期(4,132億円)に比べて緩やかながら増加して4,590億円となり、黒字幅は半期ベースでは高水準となりました。



.自己資本比率の状況について
 自己資本比率(単体加重平均ベース)は、9.6%となり平成17年3月期(9.4%)から0.2%ポイント上昇しました。



.不良債権の状況について
 不良債権(金融再生法開示債権)残高は97,021億円となり、平成17年3月期(103,674億円)と比べ6,653億円減少しました。
 不良債権比率は、5.2%と平成17年3月期(5.5%)に比べ0.3%ポイント低下し、全体として着実に低下していると考えられます。

 



 地域銀行とは、
 平成17年3・9月期は地方銀行64行、第二地方銀行48行、埼玉りそな銀行の113行、平成16年9月期は地方銀行64行、第二地方銀行49行、埼玉りそな銀行の114行。



 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「地域銀行の平成17年度中間決算の概要(更新)(暫定集計値)」(平成17年12月20日)にアクセスしてください。


ヘッジファンド調査の概要とヘッジファンドをめぐる論点


.近年、ヘッジファンドの成長はめざましく、ヘッジファンド及びその成長が市場に与える影響について、各国規制当局等の関心が高まっています。特に、市場の拡大により、ヘッジファンドのクロスボーダーでの活動がより活発になっていると言われており、規制当局間の一層の協力が必要と考えられるようになってきています。各国規制当局等は、こうした状況を踏まえ、ヘッジファンドに係る提言を行うとともに、様々な対応策を打ち出しています。


.金融庁は、平成16年12月24日に公表した「金融改革プログラム」においても、その柱の一つである「国際的に開かれた金融システムの構築と金融行政の国際化」への対応の一環として、「ヘッジファンドへの対応」が掲げています。


.こうしたことから、我が国金融機関を対象にヘッジファンドに係る実態調査を実施し、今般、その概要を取りまとめるとともに、国際的な議論も紹介しつつ、ヘッジファンドに係る論点を整理し、平成17年12月13日に公表しました。


.我が国において現在、ヘッジファンドの明確な定義はないことから、今回の調査に当たっては、ヘッジファンドを(1) レバレッジの活用、(2) 成功報酬の徴収、(3) ヘッジファンド戦略の3要素を持つファンドとし、当庁所管の金融機関1,251社に対して、任意で回答を求めました。
 
(注 )今回の調査では、調査対象会社がどのような金融商品をヘッジファンドとしてとらえているかも含めて我が国のヘッジファンドの実態を把握しようとの意図から、上記3つの定義の解釈などは回答者である調査対象会社に委ねたため、各調査対象会社の解釈が異なる可能性等があるために、今回の調査結果が我が国におけるヘッジファンドの実態を正確に表しているという保証は必ずしもないことに留意する必要があります。


.その結果、調査対象金融機関が取り扱ったヘッジファンドは、5年間(平成12年度〜平成16年度)の合計で(1) 販売額が約5兆9千億円、(2) 設定額が約2兆5千億円であり、平成16年度末で保有額が約6兆1千億円あることが分かりました。
 また、我が国金融機関が設定したヘッジファンドは、平成15年度以降、設定本数及び設定金額ともに、それ以前に比べ飛躍的に増加していることも明らかになりました。(なお、世界のヘッジファンドの市場規模は、平成12年初に3,240億米ドル(約35.6兆円)だったものが、平成17年初には、約3倍の1兆米ドル(約110兆円)に拡大したと言われています。)
 このほか、ヘッジファンドの半数は銀行、信用金庫、信用組合等の金融機関に販売されていること、個人投資家に対する販売も調査対象期間の5年間で顕著な伸びを示していること、販売したヘッジファンドのうち、日本籍は4割にとどまっており、我が国においては、外国で組成されたものが多く販売されていることなどが主な特徴であると言えます。


.今回の調査取りまとめの中では、各国のヘッジファンドに対する取り組みについても言及しているところです。例えば、アメリカでは、平成16年に「1940年投資顧問法」を改正し、登録義務の生じる顧客数の定義を見直し、一定のヘッジファンド投資顧問に対しSECへの登録が義務付けられています。また、イギリスでは、ヘッジファンドそのものに対する規制はありませんが、英FSAの認可を受けていないファンド(ヘッジファンド等)は、原則、一般投資家への販売が禁止されています。このほか、IOSCO(国際証券監督者機構)や欧州委員会など、様々な国際的組織でも、最近、ヘッジファンドに関し議論等が行われているところです。


.こうした結果及び国際的な議論を踏まえ、ヘッジファンドをめぐる論点として、
 
 (1)  ヘッジファンド投資家のリスク管理能力を、どのように把握し、高めたらよいか
 (2)  リスク管理能力に限界のある一般投資家層について、販売規制が必要か
 (3)  ヘッジファンド運用会社の管理体制を、現行の検査・監督の枠組みの中で、どのように把握していくか
 (4)  我が国金融機関のヘッジファンド取引状況を継続的に注視していくにあたって、どのような枠組みが適切か
等を取り上げています。


 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「ヘッジファンド調査の概要とヘッジファンドをめぐる論点」(平成17年12月13日)にアクセスしてください。

外国為替証拠金取引業者に対する行政処分及び登録制の状況について


.改正法施行後の外国為替証拠金取引業者に対する行政処分について
 平成17年7月1日の改正金融先物取引法の施行により、外国為替証拠金取引業者は店頭金融先物取引業者として改正法の規制を受け、金融庁及び財務局の監督下に置かれることになりました。
 金融庁や財務局では、投資者の保護を図るために、一般投資家の皆様からの情報をもとに、外国為替証拠金取引業者に対し必要に応じてヒアリングや警告を行い、問題があると認められた54社に対して業務停止命令及び業務改善命令を発出しております。これらの業者のほとんどは、債務超過状態でその解消の目処がたたないため支払い不能のおそれがあり、顧客から預かった証拠金と会社の資産を区分して管理していませんでした。また、債務超過に陥った経緯としては、顧客から預かった証拠金を営業費用等に流用したこと、証拠金を含む会社資産を関係者に持ち逃げされたこと、業者自身が為替変動リスクを回避するためのヘッジ取引を行っていなかったため多額の為替差損を被ったこと等が認められています。


.改正法に基づく外国為替証拠金取引業者の登録状況について
 改正法では、外国為替証拠金取引業者に金融先物取引業者としての登録を義務付けており、平成18年1月以降は、登録を受けた業者と、改正法の経過措置の適用を受けて当局が登録の申請書を受理し審査中の業者でなければ外国為替証拠金取引業を行うことができません。
 平成18年1月17日現在、金融先物取引業の登録業者は98社、当局が登録申請を審査中の業者は90社となっております。一般投資家の皆様におかれては、登録を受けていない者からの勧誘等については十分ご注意ください。また、登録業者や当局が登録申請を審査中の業者と取引を行う場合であっても、その業者の信用力を慎重に判断し、取引内容をよく理解することが重要です(当局が登録申請を審査中の業者については、審査の結果登録されない場合もあることにご留意ください。)。


 外国為替証拠金取引は、少額で取引できる反面、差し入れた証拠金以上の多額の損失が生ずるおそれのある非常にリスクの高い取引です。そのため、リスクを認識した上で、自らの責任で適切な投資判断を行うことが必要です。
 詳しくは、金融庁ホームページの「一般のみなさんへ・投資を行っている方へ」から「外国為替証拠金取引について」(平成18年1月6日)にアクセスしてください。

【法令解説】

 このコーナーでは、「公認会計士法の一部を改正する法律(平成15年法律第67号)」の新試験制度に関する部分の施行(平成18年1月1日)に合わせ、所要の内閣府令の改正を行った主な改正点についてご説明いたします。
 
公認会計士法の一部を改正する法律の施行に伴う関係内閣府令の改正について

(1)

 会計士補等実務補習規則の全部改正
 
 実務補習団体等の認定基準について、現行の業務を公正かつ的確に遂行できる施設を有し、かつ、十分な社会的信用を有していること等に加えて、実務補習の位置付けが公認会計士の登録要件となり、これまで以上に実務補習の適切性の担保が求められることから、認定申請者が作成した実務補習規定において、実務補習の方法等が内閣府令に定める要件を具備していること等の要件を追加することとしました。
 また、公認会計士法の改正を受けて、実務補習の実施主体となりうるのは団体又は機関となることから、現行の実施主体のうち個人である指導公認会計士に関する規定を廃止することとしました。
 実務補習の内容のうち「公認会計士の業務に関係ある法規」を、昨今の公認会計士に求められる職業倫理の重要性に鑑み、「公認会計士の業務に関係ある法規及び職業倫理」に改めることとしました。
 実務補習の方法について、実務補習の期間要件(1年以上)が廃止されたことを受けて、所定の単位を修得することを要件とする旨を規定することとしました。また、単位の認定に当たっては習熟度を確認するため、実務補習の方法を定め、各々の方法における必要単位数を定めることとしました。

(2)

 会計士補等の業務補助等に関する規則の一部改正
 公認会計士法の改正により、業務補助等の期間と実務補習の期間が通算して3年以上とする規定が削除されることから、同様の規定を削除することとしました。

(3)

 公認会計士等登録規則の一部改正
 会計士補制度の廃止に伴い、会計士補の登録に係る規定を削除しました。

(4)

 公認会計士試験規則の一部改正
 公認会計士法施行令第1条の2において、上場会社等、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律に規定する大会社、国、地方公共団体その他の内閣府令に定める法人において会計又は監査に関する事務又は業務のうち内閣府令で定めるものに7年以上従事した者に対して財務会計論を免除する旨規定されていることから、当該法人及び事務又は業務を定めることとしました。


 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「公認会計士法の一部を改正する法律の施行に伴う関係内閣府令の改正案等の公表について」(平成17年11月14日)及び「公認会計士法の一部を改正する法律の施行に伴う関係内閣府令の改正案に対するパブリックコメントの結果の公表について」(平成17年12月22日)にアクセスしてください。

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