金融機関等から業務の委託を受けた者に対する検査についての公表について

 金融庁では、本年4月1日より、銀行法、保険業法等に基づき、金融機関等(銀行法、保険業法等に規定する銀行。保険会社等)から業務の委託を受けた者に対する検査が可能となりました。これらを踏まえ、検査の実効性及び透明性確保の観点から、パブリック・コメントも踏まえたうえで、本年3月31日、当該検査の基本的手続等に関する考え方を明確化した「金融機関等から業務の委託を受けた者に対する検査について」等を公表しました。その主な内容は以下のとおりです。なお、金融機関等からの業務の委託先は多岐にわたりますが、実際に検査の対象となる業務の委託先については、法令の趣旨に則り、金融機関等からの委託業務の内容やその規模等様々な要素を考慮した上で適切に判断することとします。


.基本的考え方

 業務委託先に対する検査については、銀行法等の規定により、金融機関等に対して立入り、質問又は検査を行う場合において特に必要があると認めるときに、その必要の限度において実施することができるとされています。したがって、例えば、金融機関等に対する検査を実施する際に、業務委託先における事務処理上の不備やシステム障害等が、金融機関等の業務の適切性、ひいては利用者の利益を損なう可能性がある場合において、金融機関等への立入りではその実態が把握できないときに、業務委託先に対する検査を実施することとします。
 また、業務委託先に対する検査は、「金融検査に関する基本指針」(平成17年7月1日)
 
 (注) (以下「基本指針」という。)に準じて実施することとします。
 (注) 基本指針の概要については、アクセスFSA第30号第31号第32号参照


.検査手続

 業務委託先に対する検査は、(委託元である)金融機関等に対する検査の一環として、基本指針における実地調査の手続等に準じて行います。ただし、業務委託先は、金融機関の営業所とは性質が異なるものであること等を考慮して、以下のような取扱いとします。
 
(1)  検査の予告・無予告の別
 基本指針において、実地調査は原則無予告で実施することとされていますが、業務委託先に対する検査の予告・無予告の判断にあたっては、検査における検証範囲や着眼事項、業務委託先の負担など様々な要素を総合的に勘案した上で、検査の効率性及び実効性を慎重に比較考量し、個別に判断することとします。
(2)  業務委託先に対する重要事項の事前説明等
 検査手続の透明性確保等のため、基本指針に準じ、業務委託先に対する重要事項の事前説明等を実施し、検査命令書等についても提示します。重要事項の説明については、検証範囲など基本指針別紙「説明等事項一覧」に掲げる事項について金融機関等本体におけるものと同程度の説明を行うこととします。
(3)  検査関係情報の取扱い
 検査関係情報の取扱いについても、基本指針に準じ取扱うこととし、委託先が第三者に検査関係情報を開示しようとする場合には、当局の承諾を得て頂くようお願いすることとします。


.検査モニター及び検査結果通知書の取扱い
業務委託先に対する検査は、金融機関等に対する検査の一環として行われることから、検査モニター及び検査結果通知書の交付については、業務委託先に対しては行わず、業務の委託元である金融機関等に対し実施します。


.その他

 その他、業務委託先に対する検査に当たっての基本的考え方及び実施手続等については、基本指針に準じて実施することとします。


 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「金融機関等から業務の委託を受けた者に対する検査についての公表について」(平成18年3月31日)にアクセスしてください。

金融検査評定制度の試行に関するQ&Aについて
 

 金融庁では、「金融検査評定制度」に関して、「金融検査評定制度の試行に関するQ&A」を作成し、平成18年3月30日に公表しましたので、以下にその概要を説明致します。


.金融検査評定制度については、平成17年7月に制度を制定した後、12月までの試行準備期間を経て、平成18年1月より試行を開始しました。
 

※1

 試行期間中の評定結果は、検査結果通知の一部として通知されることとなりますが、選択的行政対応には反映されません。
※2  本格施行は、18検査事務年度以降、速やかに施行することとなっていますが、評定に係るデータやノウハウの蓄積等を踏まえて決定していくこととなります。


.試行準備期間中においては、試行に向けた準備として被検査金融機関との間で評価の目線合わせの議論を行ってきましたが、その中で、評定制度に関して様々な疑問点等が金融機関より寄せられました。


.これを踏まえ、今後の本格施行に向けて評定制度に対する金融機関関係者の理解の一層の向上に資すること等を目的として、「金融検査評定制度の試行に関するQ&A」を作成したものです。
 
【主 な事例】
評定結果と監督上の行政処分等の関係
自己評価を求める趣旨
「B評価」と「C評価」の具体的な違いや、「強固な」あるいは「十分な」態勢のレベル感
内部管理態勢として必ずしも十分とは言えないが、具体的な問題が表れていない場合の評価や、各評定項目毎の評価ポイント


.このQ&Aも利用して、評定制度の定着を図っていくよう努めていきたいと考えています。


 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「金融検査評定制度の試行に関するQ&Aについて」(平成18年3月30日)にアクセスしてください。

株式等の売買発注管理に係る一斉点検等の結果について

 金融庁は、平成18年3月15日、昨年12月22日付で全ての証券会社に対して実施を要請した、株式等の売買発注管理に係る一斉点検等の結果を公表しました。


.要請の概要
昨年12月に証券会社による大規模な誤発注が発生したことを踏まえ、金融庁及び各財務局等は、同年12月22日付で全ての証券会社に対して、株式等の発注業務の管理、株式等の発注システムの設計・管理、及び大規模な誤発注等に対する危機対応策の策定状況について一斉点検を実施するとともに、その点検結果及び考えられる改善策について本年1月20日までに報告するよう要請し、報告書の提出を受けました。
本年1月20日までに証券会社から報告された一斉点検の結果の概要は以下のとおりです。


.株式等の売買発注管理に係る一斉点検の結果
 
(1)  調査対象
 調査対象285社のうち、株式関連業務を行っていない63社を除く222社から報告を受けました。その内訳は、国内証券会社199社(うち、金融庁監理22社、財務局等監理177社)、外国証券会社23社でした。
 また、リテール部門について報告のあった社が193社、ホールセール部門について報告のあった社が40社、自己売買部門について報告のあった社が222社でした。
(2)  誤発注の発生状況
 平成17年1月〜12月の間に上記222社で発生した誤発注は14,318件。そのうち、売買代金1億円超の誤発注は667件、損失金額1億円超の誤発注は1件でした。
 
(注)  全国証券取引所の平成17年の約定件数(現物株式)は概算で549百万件。これに対する誤発注発生率は100万分の26(0.0026%)となります。また、売買代金1億円超の誤発注発生率は100万分の1.2(0.00012%)とります。
(3)  株式等の売買発注業務の管理
 
(1)  発注制限・警告の解除への管理者の関与の状況
 発注制限・警告の解除について、管理者の関与なしで発注者自身が行うことができる社が見られました。この傾向は特にホールセール部門において顕著でした。
(2)  売買システムを統括するCIOなどの選任状況
 売買システムを統括するCIO又はこれに準ずる者を選任していない社が222社中46社(21%)ありました。
(3)  株式売買発注業務に関する研修等の実施状況
 売買発注業務担当者に対して株式売買発注業務に関する研修を実施していない社が222社中105社(47%)ありました。
(4)  発注システムの設計・管理状況
 発注システムにおいて制限値の設定が不十分な社が見られました。具体的には、売買代金による制限が設定されていない社が222社中37社(17%)ありました。また、上場株式数を考慮した制限は、ほとんどの社で設定されていませんでした(222社中220社(99%))。
(5)  初値成立前の新規上場銘柄にかかる制限設定
 初値成立前の新規上場銘柄について、公募価格等を基準とした制限が設定されていない社が222社中118社(53%)ありました。
(6)  大規模な誤発注に対する危機対応策の策定状況
 全社において、誤発注が発生した場合の対応を定めたマニュアル等が策定されていましたが、昨年12月に発生したような大規模な誤発注が想定されていないことから、そのような場合における事実の開示方法を含め、対応策を定めている社はありませんでした。


.点検結果を踏まえた証券会社の対応
 点検の結果、上場株式数を考慮した制限が設定されていない、初値成立前の新規上場銘柄について公募価格等を基準とした発注制限が設定されていない、大規模誤発注への危機対応策が策定されていない、売買発注担当者に対して研修を実施していないなどの問題点が認められましたが、一斉点検の回答期限である平成18年1月20日時点においては、点検の過程で見出された問題点について対応策を実施済み又は実施中の社は一部にとどまっていました。


 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「株式等の売買発注管理に係る一斉点検等の結果について」(平成18年3月15日)にアクセスしてください。

証券会社の市場仲介機能等に関する懇談会及び市場機能支援室の設置について

 証券市場における取引の公正性を確保し、投資家保護を徹底する観点からは、市場仲介者としての証券会社の果たす役割が重要です。そのため、証券会社に対しては、適切な業務運営、オペレーショナル・リスク管理及び危機管理のための態勢整備が求められています。
 こうしたことを踏まえ、証券会社のオペレーションの信頼性向上に向けた的確な監督上の対応等を通じ、市場機能の向上を図る観点から、本年3月10日、監督局長の私的懇談会である「証券会社の市場仲介機能等に関する懇談会」を設置しました。
 また、証券会社の市場仲介機能等に重点を置いた監督事務の企画、立案及び必要な調整を行うため、同日、監督局証券課に「市場機能支援室」を設置しました。
 「証券会社の市場仲介機能等に関する懇談会」においては、市場仲介者としての証券会社の、
 (1) 売買発注業務やシステム運用などのオペレーションの信頼性向上
 (2) 発行会社の不正行為等に対するチェック機能の発揮
 (3) 投資家の不公正取引に対するチェック機能の発揮
 また、市場プレイヤーとしての証券会社の、
 (4) 利益相反の防止等による自己規律の維持
といった4つの課題に関し、市場仲介者等としての証券会社が踏まえるべき行為規範の形成を促すための検討を行っていくこととしています。

【これまでの会合の概要】
第1回(3月16日(木))
 「証券会社の市場仲介者としてのオペレーションの信頼性向上について」について事務局等の報告及び意見交換
 
証券会社の株式等の売買発注業務の管理態勢の整備(誤発注等)
信用取引の担保有価証券の掛目の変更
証券会社によるシステム管理・オペレーショナル・リスク管理・危機管理態勢の整備、及びBCP(業務継続計画)策定の促進 
 第2回(3月27日(月))
 「証券会社の市場仲介者としてのオペレーションの信頼性向上」の論点整理及び追加的な意見交換
 「発行体に対する証券会社のチェック機能の発揮」(引受審査の強化、適切な発行条件の設定等)についての事務局等の報告及び意見交換
 第3回(4月10日(月))
 「発行体に対する証券会社のチェック機能の発揮」の論点整理及び追加的な意見交換
 「投資家に対する証券会社のチェック機能の発揮」についての事務局等の報告

 今後は、自己売買などにおける証券会社の自己規律の維持といったテーマについても検討を行い、6月中を目途に全体の論点の取りまとめを行うこととしたいと考えています。


 詳しくは、金融庁ホームページの「審議会・研究会等」から「証券会社の市場仲介機能等に関する懇談会」、または「報道発表資料」から「証券会社の市場仲介機能等に関する懇談会及び市場機能支援室の設置について」(平成18年3月10日)にアクセスしてください。

情報セキュリティに関する検討会の立ち上げについて

 金融庁では、昨年「偽造キャッシュカード問題に関するスタディグループ」を立ち上げ、昨年6月24日には偽造・盗難キャッシュカード被害発生の予防策・被害拡大の抑止策に関する最終報告書が公表されました。また、平成18年2月10日には偽造・盗難カード預金者保護法(略称)が施行され、各金融機関はこれらを踏まえて、偽造・盗難キャッシュカード対策に取り組んでいるところです。しかし、偽造・盗難キャッシュカードに関しては依然多数の被害が発生しており、その犯罪手口は次第に巧妙化しています。また、最近ではインターネットバンキングを利用した不正取引も相次ぎ、金融業界全体としてこれらの問題に取り組んでいく必要があります。
 このような状況の中、金融庁は、平成18年3月9日、監督局内に「情報セキュリティに関する検討会」を立ち上げました。本検討会はATMシステム及びインターネットバンキングに関連した犯罪や様々なリスクについて、金融業界や警察庁との間で詳細な情報の共有を図るとともに、各種対策とその有効性を検証することを目的としています。具体的には、ATMやインターネットバンキングの利用時、被害発生時、金融機関での態勢構築時などさまざまな段階において実際に国内や海外で発生した犯罪事例や想定されるリスクについて討議するとともに、キャッシュカードの安全性向上や金融機関内部での情報管理など、金融機関が行っている対策について、その効果や問題点について検討しています。今後、金融庁としては、本検討会での成果を踏まえ、金融業界全体として有効な対策を講ずることができるよう、対応していきたいと考えています。


 詳しくは、金融庁ホームページの「審議会・研究会等」から「情報セキュリティに関する検討会」または、「報道発表資料」から「情報セキュリティに関する検討会の立ち上げについて」(平成18年3月10日)にアクセスしてください。

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