平成18年3月15日
金融庁
株式等の売買発注管理に係る一斉点検等の結果について
1.要請の概要
昨年12月に証券会社による大規模な誤発注が発生したことを踏まえ、当庁及び各財務局等は、同年12月22日に全ての証券会社に対して、株式等の発注業務の管理、株式等の発注システムの設計・管理、及び大規模な誤発注等に対する危機対応策の策定状況について一斉点検を実施するとともに、その点検結果及び考えられる改善策について本年1月20日までに報告するよう要請し、報告書の提出を受けた。
本年1月20日までに証券会社から報告された一斉点検の結果の概要は以下のとおり。
2.株式等の売買発注管理に係る一斉点検の結果
(1) 調査対象
調査対象285社のうち、株式関連業務を行っていない63社を除く222社が報告。
その内訳は、国内証券会社199社(うち、金融庁監理22社、財務局等監理177社)、外国証券会社23社。
また、リテール部門について報告のあった社が193社、ホールセール部門について報告のあった社が40社、自己売買部門について報告のあった社が222社。
(2) 誤発注の発生状況
平成17年1~12月の間に上記222社で発生した誤発注は14,318件。
- 売買代金1億円超の誤発注は667件。
- 損失金額1億円超の誤発注は1件。
(注)全国証券取引所の平成17年の約定件数(現物株式)は概算で549百万件。これに対する誤発注発生率は100万分の26(0.0026%)となる。また、売買代金1億円超の誤発注発生率は100万分の1.2(0.00012%)となる。
(3) 株式等の売買発注業務の管理
(1) 発注制限・警告の解除への管理者の関与の状況
発注制限・警告の解除について、管理者の関与なしで発注者自身が行うことができる社が見られる。この傾向は特にホールセール部門において顕著である。
部門 | リテール | ホールセール | 自己売買 | 合計 |
---|---|---|---|---|
部門別回答社数 (a) | 193 | 40 | 222 | 222 |
発注制限・警告の解除が管理者の 関与なしで可能な社数 (b) |
2 | 30 | 63 | 63 |
(b)/(a) | 1% | 75% | 28% | 28% |
(2) 売買システムを統括するCIOなどの選任状況
売買システムを統括するCIO又はこれに準ずる者を選任していない社が222社中46社(21%)ある。
社数 | |
---|---|
CIOを選任 | 17( 8%) |
CIOに準ずる者を選任 | 159(72%) |
選任していない | 46(21%) |
合計 | 222 |
(3) 株式売買発注業務に関する研修等の実施状況
売買発注業務担当者に対して株式売買発注業務に関する研修を実施していない社が222社中105社(47%)ある。
社 数 | ||
---|---|---|
研修を実施 | 117(53%) | |
研修を実施していない | 105(47%) | |
OJTで対応 | 77(35%) | |
その他(資料の配布等) | 15( 7%) | |
何も実施していない | 13( 6%) | |
合計 | 222 |
(4) 発注システムの設計・管理状況
発注システムにおいて制限値の設定が不十分な社が見られる。具体的には、
- 売買代金による制限が設定されていない社が222社中37社(17%)ある。
- 上場株式数を考慮した制限は、ほとんどの社で設定されていない(222社中220社(99%))。
部 門 | リテール | ホールセール | 自己売買 | 合計 |
---|---|---|---|---|
部門別回答社数 | 193 | 40 | 222 | 222 |
売買代金による制限が設定され ていない社数 |
31 | 7 | 29 | 37 |
16% | 18% | 13% | 17% | |
上場株式数を考慮した制限が 設定されていない社数 |
193 | 38 | 220 | 220 |
100% | 95% | 99% | 99% |
(5) 初値成立前の新規上場銘柄にかかる制限設定
初値成立前の新規上場銘柄について、公募価格等を基準とした制限が設定されていない社が222社中118社(53%)ある。
部 門 | リテール | ホールセール | 自己売買 | 合 計 |
---|---|---|---|---|
部門別回答社数 | 193 | 40 | 222 | 222 |
初値成立前の新規上場銘柄に ついて公募価格等を基準とした 制限が設定されていない社数 |
112 | 13 | 116 | 118 |
58% | 33% | 52% | 53% |
(6) 大規模な誤発注に対する危機対応策の策定状況
全社において、誤発注が発生した場合の対応を定めたマニュアル等が策定されている。
ただし、昨年12月に発生したような大規模な誤発注が想定されていないことから、そのような場合における事実の開示方法を含め、対応策を定めている社はなかった。
3.点検結果を踏まえた証券会社の対応
一斉点検の回答期限である1月20日時点においては、点検の過程で見出された問題点について対応策を実施済み又は実施中の社は一部にとどまっている。
問題点 | 問題が認められた社数 | うち、対応策を実施済み又は実施中の社数(1月20日時点) |
---|---|---|
発注制限・警告の解除が管理者の関与なしに可能 | 63 | 13 |
売買システムを統括するCIO又はこれに準ずる者を選任していない | 46 | 2 |
売買発注担当者に対して研修を実施していない | 105 | 18 |
売買代金による発注制限が設定されていない | 37 | 10 |
上場株式数を考慮した制限が設定されていない | 220 | 2 |
初値成立前の新規上場銘柄について公募価格等を基準とした発注制限が設定されていない | 118 | 19 |
大規模誤発注への危機対応策が策定されていない | 222 | 69 |
(以上)
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