広報コーナー 第22号
 
〈金融庁パンフレット〉
 
<証券決済制度等の改革による証券市場の整備のための関係法律の整備等に関する法律(証券決済システム改革法)について>


.検討の経緯
 証券決済システムは、証券市場の国際競争力を左右する制度的基盤であり、昨今の証券取引のグローバル化の下で、この証券決済システムをより安全で効率性の高いものに改革していくことは、重要かつ今日的な政策目標の一つである。現在、金融庁では、法務省をはじめとする関係省庁や市場関係者等とともに、証券決済システムの改革に取り組んでいるところであるが、可能なものから早急に対応するべく、平成13年5月には、証券決済システム改革の第一弾ともいえる「短期社債等の振替に関する法律」(新規立法)及び「株券等の保管及び振替に関する法律の一部を改正する法律」(ともに法務省と共管)を国会に提出、同年6月に成立し、CPのペーパーレス化及びCPに係る振替制度の創設と、保管振替機関を株式会社形態に変更する法整備を行った(本年4月1日施行)。
 その後、引き続き、より包括的な証券決済法制の整備に向け更なる検討を行い、平成14年3月、統一的な証券決済整備の対象の拡大、多層構造の振替決済制度の創設及び安全かつ効率的な決済のための清算に係る制度整備等を行うことにより決済の一層の迅速化・確実化を図るべく証券市場の整備のための所要の改正を行う「証券決済制度等の改革による証券市場の整備のための関係法律の整備等に関する法律案」(法務省・財務省と共管。以下「証券決済システム改革法」という。)を国会に提出、同年6月5日に可決、成立した。


.法律の目的
 この法律の目的は、内外の金融情勢の変化に即応し、諸外国との調和を図りつつ、より安全で効率性の高い証券決済制度等を構築していく必要性にかんがみ、社債、国債等について、券面を必要としない新たな振替制度の整備、より効率的な清算を可能とする清算機関制度の整備を行う等、決済の迅速化、確実化をはじめとする証券市場の整備のため、所要の措置を講ずることにある。具体的には、○券面を必要としない統一的な証券決済法制の対象をCPから社債、国債等へと拡大、○単層構造の仕組みを発展させ、一般投資家が証券会社・銀行等に口座を開設することを可能とする多層構造の振替決済制度の創設、○安全かつ効率的な決済を行うためにより有効な清算を可能とするための制度整備等を旨としている。


.法律の概要
 
(1 )振替制度の対象権利を短期社債等から社債一般、国債等に拡大(注1)
 振替の対象を短期社債等から社債、国債、投資信託受益権等に拡大することとし、振替口座簿の記録により権利の帰属が決まることとなるための要件、券面の不発行、振替口座簿の記録事項、新規記録手続、振替手続、振替の効果等について、所要の規定を整備している(注2)。また、対象の拡大に伴い、社債申込証等に社債等の振替に関する法律(以下「社債等振替法」という。)の適用がある旨を記載することとする等、商法等の特例を設けている。
 国債については、社債と同様の振替が行えるよう所要の規定を設けるほか、財務大臣が指定した振替国債(分離適格振替国債)について、元本部分と利息部分の分離、統合を行い、元本部分、利息部分のみの振替を行うことを可能とする所要の規定を整備している。
 
(注1) 振替制度の対象権利
 振替制度の対象となるのは、前述の社債、国債、投資信託受益権のほか、地方債、投資法人債、相互会社の社債、特定社債、特別の法律により法人の発行する債券に表示されるべき権利、貸付信託受益権、特定目的信託受益権及び外国又は外国の法人の発行する債券に表示されるべき権利である。
(注2) 権利移転等の仕組み
 振替制度を利用した社債等の権利移転等の仕組みの概要は、次のとおり。
 
 発行
 各法の規定等に基づき社債等の発行手続が進められ、その全額の払込みがなされると、発行者は、その銘柄を取り扱う振替機関(注3参照)に対し、所定の事項を通知する。振替機関は、通知を受けた内容を振替口座簿に記録する。その後、所要の手続に則り、権利を有する者の口座に記録される。
 流通
 社債等の権利の移転(譲渡や質入れ等)は、振替口座簿上の振替が効力要件とされる。債券の交付に相当する。振替口座簿の記録には、権利推定効が認められており、有価証券のような善意取得が認められている。
 償還
 社債等の権利を有する加入者が社債等の償還を受けた場合は、その加入者の申請により口座の抹消をすることになる。債券の受戻しに相当する。なお、償還と抹消の申請を同時履行関係に置くことにより、発行者の保護を図っている。

(2

)振替制度の多層構造化に伴う所要の整備
 振替制度を多層構造化するため、振替制度の中核を担う振替機関(注3)のほか、口座管理機関(注4)について新たに規定することとし、口座管理機関となることができる者、口座管理機関の業務等についての規定を整備している。振替機関の業務規程においては、口座管理機関に関する事項等を定めることとし、口座管理機関は、その加入者(注5)(適格機関投資家等を除く。)に対し、当該口座管理機関の上位機関が負う消却義務を連帯して保証する旨を定めるべきこととしている。
 また、振替口座簿について、口座管理機関が有する振替社債を記録する自己口座と、加入者が有する振替社債を記録する顧客口座に区分すること、誤記載等により善意取得が生じた場合の振替機関と口座管理機関との消却義務の調整等について、振替制度の多層構造化に伴う所要の規定を整備している。
 
(注3) 振替機関
 社債等振替法の規定により、社債等の振替に関する業務を行う者として主務大臣の指定を受けた株式会社。社債等振替法においては、振替機関に対しては、主務大臣による監督が行われ、その業務運営の適正化を図るとともに、振替制度の維持・円滑化のため、振替制度の中核を担う振替機関の組織変更等について特例規定を設けることにより、振替制度が停滞しないよう配慮している。
(注4) 口座管理機関
 振替機関又は他の口座管理機関に口座を開設した上で、他の者に口座を開設する者。証券会社や銀行等、一定の者であれば、口座管理機関になることが可能である。
(注5) 加入者
 振替機関又は口座管理機関に口座を開設した者。口座管理機関を含む。この制度において流通する社債等を保有するには、加入者となる必要がある。

(3

)効率的な決済を可能とする清算機関制度の整備
 証券取引法又は金融先物取引法においては、DVP(Delivery Versus Payment:証券決済において、証券の引渡しと資金の支払とが相互に条件付けられて行われる仕組み。)の導入を促進する観点から、その重要なインフラとなる清算機関に関連する制度を整備している。
 具体的には、証券取引清算機関又は金融先物清算機関について法律上の根拠を明確化し、かつリスク管理の徹底を図るための必要な監督規定を置いている。また、より効率的な清算システムを構築するため、証券会社、外国証券会社又は登録金融機関が証券取引清算機関に清算業務を取り次ぐための有価証券等清算取次ぎに関する規定の整備を行っている。

(4

)その他、一般投資者保護のための仕組みや国債に関する所要の措置等を行っている。


.今後の予定
 この法律は、所要の政令等を制定の上、平成15年1月6日から施行する。なお、今般の証券決済システム改革法による統一的な証券決済制度の整備に伴い、社債等登録法については、法施行の日から起算して5年を超えない範囲内で政令で定める日に廃止することとしている。
 今般の改正においては、社債、国債等については、ペーパーレス化及び振替制度の多層構造化等について措置したところである。しかし、証券決済手続の更なる効率化・簡素化を実現するためには、現行、株券等の保管及び振替に関する法律に基づく保管振替制度により決済がされている株式を含め、すべての有価証券について、統一的なルールに基づいた決済が行われるよう制度を整備することが望ましい。したがって、統一的証券決済法制の完成に向けた、株式に係る振替決済法制の整備が今後の課題といえる。
 そのほか、海外との証券決済(クロスボーダー証券決済)について、国際的に統一された国際私法のルールの構築といった課題も残されている。これらの問題についても、関係省庁とともに、引き続き検討していきたい。
 
 
証券決済制度等の改革による証券市場の整備のための関係法律の整備等に関する法律
 
振替制度の多層構造化
 
 
<金融検査マニュアル別冊・中小企業融資編の作成について>
 
(はじめに)
 金融庁では、中小・零細企業等の経営実態の把握の向上による適切な検査の運用確保のため、現行の金融検査マニュアルの解説及び具体的な適用事例として「金融検査マニュアル別冊・中小企業融資編案」(以下「別冊」という。)を作成し、4月12日にパブリック・コメントに付し5月20日にこれを締め切ったところである。
 現在、パブリック・コメントで頂いたご意見等を踏まえ内容について更に検討を行っているところであり、6月中を目途に検査官宛通達として発出・公表し、その後実施する検査から適用することを予定している。
 なお、別冊は、金融検査マニュアル及び保険検査マニュアル共通のものとすることとしている。

(別冊作成の背景について)
 現行の金融検査マニュアルにおいては、債務者区分に当たって、「特に、中小・零細企業等については、当該企業の財務状況のみならず、当該企業の技術力、販売力や成長性、代表者等の役員に対する報酬の支払状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力等を総合的に勘案し、当該企業の経営実態を踏まえて判断するものとする。」旨記述されているところである。
 しかしながら、これら中小・零細企業等の債務者区分の判断に関する記述が抽象的でわかりにくい、あるいは、検査において金融検査マニュアルが機械的・画一的に適用されているのではないかとの意見も聞かれており、こうした中、平成14年2月27日に政府から発表された「早急に取り組むべきデフレ対応策」において、経営実態に応じた検査の運用確保策のひとつとして、中小・零細企業等の債務者区分の判断について、金融検査マニュアルの具体的な運用例を作成し、公表することが盛り込まれたことから、今般、金融検査マニュアルの運用に関し、これらの記述に係る検証ポイントについて、具体的な運用例を交えた解説的なものを金融検査マニュアルの別冊として作成することとしたところである。

(別冊の概要について)
 別冊は、現行の金融検査マニュアルの中小・零細企業等の債務者区分の判断に係る「検証ポイント」及び「検証ポイントに係る運用例」から構成されている。
 「検証ポイント」では、金融検査マニュアルにおける中小・零細企業等の債務者区分の判断に関する記述について、その具体的な留意点や検討事項として以下の5つの「検証ポイント」を掲げ、それぞれ解説を加えている。
 ○  企業の実態的な財務内容
 ○  代表者等の役員に対する報酬の支払状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力
 ○  企業の技術力、販売力や成長性
 ○  経営改善計画等の策定
 ○  貸出条件及びその履行状況
 さらに、「検証ポイントに係る運用例」では、これら検証ポイントに係る具体的な適用事例として、「代表者等の資産との一体性」、「企業の特性」及び「その他の判断事項」の3つのフレームに区分した上で、合計13の運用例を掲げ、それぞれ解説を加えている。主な内容は以下のとおりである。
.代表者等の資産との一体性
 
 「企業の実態的な財務内容について」
 代表者からの借入金があり、代表者が当該企業に対しその返済を要求する意思がない場合には、原則として、これらを当該企業の自己資本相当額として勘案する。なお、その際には、代表者の個人収支や資金繰りの状況等も確認する。
 「企業が赤字で返済能力はないと認められる場合について」
 代表者への多額の役員報酬や家賃の支払いなどから赤字となっている場合には、赤字ということのみをもって債務者区分を行わず、赤字の原因や金融機関への返済状況、返済原資について確認する。
 「代表者等の個人資産を加味することについて」
 企業に返済能力がない場合であっても、代表者やその親族に預金等の個人資産が多額にあり、当該資産を企業に提供する意思が明確な場合には、これらを勘案する。なお、その際には、代表者等個人に借入金や第三者に対する保証債務がないかなどについて確認する。
.企業の特性
 
 「技術力について」
 高い技術力を背景に、今後、受注の増加が確実に見込まれ、それにより業績の改善が予想できる場合には、こうした点を勘案する。
 「販売力について」
 販売網が優れているなど販売基盤が強固で、今後、これらの強みを活かして業績の改善が予想できる場合には、こうした点を勘案する。
 「代表者等経営者個人の信用力や経営資質について」
 健康上の理由等一過性の原因により業績が低迷しているが、代表者等の信用力や経営資質が非常に高く、今後、これらを背景として業績の回復が見込まれる場合には、こうした点を勘案する。
.その他の判断事項
 
 「業種の特性について」
 例えば、温泉旅館業のように新規設備資金や改築資金が多い業種については、現時点での表面的な収支や財務諸表のみならず、赤字の要因、投資計画に沿った今後の収支見込、返済原資の推移等を勘案する。
 「経営改善計画の策定について」
 大企業のような精緻な経営改善計画がない場合であっても、これに代えて今後の資産売却予定や収支見込等を基に返済能力を確認する。
 「返済条件の変更を行っている場合について」
 例えば、工場建設など設備資金を融資する場合、短期資金(いわゆるつなぎ資金)で融資し、これを後に長期資金に切り替えるものなど、通常の商慣習としての条件変更もあることから、条件変更を行ったことのみをもって債務者区分の判断を行わず、資金使途、変更理由等を確認する。

(結び)

 今般の別冊の作成は、新たな債務者区分の基準を設けるといったものではなく、また、金融業態によりその判断基準に差を設けるというものでもない。あくまでその目的は、中小・零細企業等の経営実態の把握の向上を図り、もって中小・零細企業等の適切な債務者区分の判断に資することにある。
 金融検査マニュアルは、本来的には検査官のための手引書ではあるが、金融機関の自己責任に基づくリスク管理の充実を促す観点からこれを公表しているところである。
 金融庁としては、今般の別冊の作成を機に検査水準の更なる向上を図り、今後とも適正な検査の実施に努めて参りたいと考えているところであるが、金融機関においても今後公表される別冊を参考にしていただき、資産査定態勢の一層の向上が図られることを期待したい。

(参

考)
「早急に取り組むべきデフレ対応策」(抄)
          (平成14年2月27日)
.貸し渋り対策等
(2)経営実態に応じた検査の運用確保
 
 ○  金融検査マニュアルの機械的・画一的な運用の防止を図るため、検査官に対する指導・訓練、検査の適正性をチェックする立入中の「検査モニター」、金融機関との見解相違案件を処理する立入後の「意見申出制度」等、検査立入前、立入中、立入後を通じた諸施策を今後更に充実・強化する。
 併せて、債務者の経営実態の把握の向上に資するため、中小・零細企業等の債務者区分の判断について、金融検査マニュアルの具体的な運用例を作成し、公表する。

 
  ・金融検査マニュアル別冊・中小企業融資編等の作成、整備について

 
<主な出来事>(5月)
     
2日(木)
 〜7日(火)
大臣、海外出張(香港・シンガポール)
7日(火) 旭川商工信用組合に係る管理を命ずる処分の取消し
9日(木) 「事務ガイドラインの一部改正」を公表
「タリバーン関係者等と関連すると疑われる取引の届出について(追加要請その7)の発出について」を公表
10日(金) 千葉県商工信用組合に対する管理の終了期限の延長
「経営健全化計画の見直しについて」を公表
13日(月) 「証券取引法第百六十一条の二に規定する取引及びその保証金に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)の概要」を公表(パブリック・コメント)
「上場会社等の役員及び主要株主の当該上場会社等の特定有価証券等の売買に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(案)」の公表(パブリック・コメント)
加賀信用組合に係る管理を命ずる処分の取消し
17日(金) 米国証券取引委員会、商品先物取引委員会との証券分野の情報交換取極に署名
20日(月) 神栄信用金庫及び信用組合福岡商銀に係る管理を命ずる処分の取消し
日本型金融システムと行政の将来ビジョン懇話会開催(第8回)
21日(火) 「金融早わかりQ &A 」追加
23日(木) 金融トラブル連絡調整協議会開催(第13回)
24日(金) 企業会計審議会第二部会開催(第29回)
「主要行の平成13年度決算」を公表
27日(月) 三栄信用組合、信用組合京都商銀及び松島炭鉱信用組合に係る管理を命ずる処分の取消し
30日(木) 金融税制に関する研究会開催(第5回)
31日(金) 企業会計審議会固定資産部会開催(第23回)
 
〈お知らせ〉

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