参考資料

地域企業における人材ニーズと
地域金融機関の位置付け
2021年・2022年「金融仲介機能の発揮に向けた
プログレスレポート」より

企業側のニーズ

経営人材の確保状況

金融庁が実施した「企業アンケート調査」によれば、現状の経営人材に関する企業の認識について、

  • 経営人材が不足している企業は66.6%に上る一方、そのうち人材要件が明確に固まっている企業は10%程度に留まっています。金融機関が、企業が必要とする経営人材の要件を明確化し、そのニーズを顕在化させることができれば、人材マッチングへと結びつけられる可能性が十分にあると考えられます。
  • メインバンクやそのグループ会社から経営人材を紹介してほしい企業は35.0%に上り、社内の役員・従業員や社外の知人といった関係者を除くと、最も高い割合となっています。

図表1 経営人材不足に関する企業の認識等

経営人材の確保状況グラフ

図表2 紹介希望相手(複数回答)

経営人材の確保状況グラフ

経営人材の紹介者別の状況

経営人材の紹介者として「民間人材紹介会社」を挙げる企業が42.3%と最も高く、次いで「子や親族、社内従業員、知人等」、「プロフェッショナル人材戦略拠点」となっています。
「メインバンクやそのグループ会社」を挙げる企業の割合は、9.8%となっています。

図表3 採用した経営人材の紹介者

経営人材の紹介者別の状況グラフ

経営人材の採用状況

直近約5年間で経営人材紹介サービスを活用して採用された経営人材の属性は、年齢では30代~50代が74.6%、雇用形態では常勤雇用が91.0%と大半を占めています。

図表4 採用した経営人材の属性

経営人材の採用状況グラフ

人材ニーズと採用のギャップ

経営人材に求める職歴・経験として、採用前に「大企業勤務経験」を挙げた企業は14.0%に留まる一方、実際に大企業勤務経験を有する人材を採用した企業は27.4%となっています。
中小企業の経営人材の候補として、大企業勤務経験のある人材に目が向けられることで、潜在的に満たすことができる中小企業の人材ニーズも少なくないことが窺われます。

図表5 経営人材に求める職歴・経験(複数回答)

採用前のニーズグラフ

実際に採用した人材グラフ

企業が受けたい経営改善支援

今後、金融機関から受けたいサービスとして「経営人材の紹介」や、「業務効率化(IT化・デジタル化)に関する支援」を挙げる企業は、「取引先・販売先の紹介」や「各種支援制度の紹介や申請の支援」といった売上や利益改善に直結するサービスを挙げる企業に次いで多くなっています。
このうち手数料を支払ってもよいサービスとして「経営人材の紹介」を挙げる企業の割合は、48.3%と最も高くなっています。

図表6 今後金融機関から受けたい経営改善支援(複数回答)

企業が受けたい経営改善支援グラフ

地域金融機関における
人材マッチング業務の状況

人材マッチング業務の
体制・業務フロー

金融庁が実施したアンケート調査等によれば、2021年2月末時点で、

  • 地域銀行等で有料職業紹介業の許可を取得しているものは96行中69行(72%)、今後許可を取得する予定があるものも含めると約9割となっています。
  • 業務の実施形態について、「両手型」に取り組んでいる地域銀行は25行(36%)、将来的には両手型を検討している地域銀行は50行(80%)となっています。

図表7 許可取得状況

許可取得状況グラフ

図表8 人材マッチング業務実施形態(複数回答)

人材マッチング業務実施形態グラフ

参考

人材マッチング業務の実施形態には、「両手型」「片手型」「有料ビジネスマッチング」の3類型があります。

両手型 有料職業紹介業の許可を有して行う人材マッチングのうち、①人材要件定義(企業の求人ニーズを把握した後、採用すべき人材を明確化したうえで、求人票もしくはそれに準ずる人材紹介会社への取次シートの作成を行うことをいう。)のみならず、②人材サーチ及び③マッチング等の求職者対応についても自らで行うもの。
片手型 有料職業紹介業の許可を有して行う人材マッチングのうち、両手型以外の形態での人材マッチングを行うもの。
有料ビジネスマッチング 有料職業紹介業の許可が不要な従来型の人材マッチング。

人材プールの確保方法

人材マッチング業務の実施にあたっては、人材紹介会社のリストを活用しているケースが大半ですが、独自のデータを活用している地域銀行も多くあります。
人材マッチングに係る外部機関との提携先数は、平均して6~7社程度となっています。

図表9 人材リストの活用先(複数回答)

人材リストの活用先グラフ

図表10 提携先数の平均

提携先数の平均グラフ

人材マッチング業務運営上の工夫

ノウハウの蓄積

人材マッチング業務を推進するにあたり、多くの地域銀行が挙げた課題が、「ノウハウの蓄積」です。一部の地域銀行では、

  • 支店ごとの小規模の勉強会を実施し、ノウハウの底上げを目指す、
  • 支店から本部(人材紹介業務部門)への短期トレーニーの受入れを行う、
  • 人材紹介会社への出向や、出向者の受け入れを行う、

といった具体的取組みに着手しています。

地域金融機関における特徴的な取組み

提携先を細分化してマッチングの精度を高めている事例

全国展開している人材紹介会社や地場の人材紹介会社と多数提携し、専門性に応じて連携相手を変える体制を構築しています。例えば、医療関係の人材ニーズのある企業に対しては、医療関係に特化した人材紹介会社と連携して対応するなど、専門人材ごとに連携先を変えた結果、より一層、顧客のマッチングニーズに沿った人材の紹介が可能になりました。

地元メディアと連携することで人材マッチングを円滑にしている事例

地元メディアと連携して副業人材マッチングサイトを運用しています。人材ニーズの掘り起こし及び人材による企業の課題解決は地域銀行が支援し、地元メディアは地元オンラインニュースサイトで募集企業をPRすることで、都市部の副業人材活用の認知度向上を高めることにつなげています。

人材提案型のマッチングを行っている事例

求人ニーズありきではなく、地域企業の課題解決に資するスキルを持つ人材にあらかじめ目を付けておき、企業に対して「こういった人材がいます。」と課題に対するソリューションとして人材を提案することで、求人ニーズを顕在化させ、成約率を上げています。

リピート案件を獲得している事例

人材マッチング等を通じて企業とリレーションを構築しておくことで、以前、人材を紹介した企業から、再び新たな求人ニーズを得ることができています。外部人材の採用に理解のある企業が増えていくことで成約までスムーズに進められる案件の増加が期待されています。

「人」に関わるソリューションを一体運営している事例

人材マッチングサービスと並んで人事コンサルティングや研修サービスを一体で運営し、「人」に関わる支援サービスを併せて提供しています。研修は企業ごとのオーダーメイドにも対応し、複数企業を対象とした社長の後継者向けの集合型研修では、参加者同士の横のつながりも生まれています。

人材定着に向けた取組み

2020年度に先導的人材マッチング事業に採択された地域銀行では、

  • 入社前のサポートを「経営人材」に対し行っている割合は26%、「受入企業」に対し行っている割合は47%に留まる一方、
  • 入社後のフォローアップについては、「経営人材」・「受入企業」とも9割弱 という結果となっています。

図表11 経営人材・企業へのサポート状況

経営人材・企業へのサポート状況グラフ

地域金融機関における特徴的な取組み

人材・企業双方のニーズを踏まえた独自の研修を行い、人材の定着率の向上を図っている事例

顧客から「採用時に高額な手数料を支払っており、採用した人材には長く働き続けてもらいたい」という声が多く寄せられたため、定着率向上を図る方策が必要と判断し、人材育成研修を行う子会社と連携して、成約後、オーダーメイド型の研修を実施しました。
例えば、採用者と配属先の職員双方が参加した研修では、採用者を含めた配属先全体の相互理解が進み、信頼関係の構築につながったと評価されました。

人材紹介をきっかけに、課題解決に向けた提案を行った事例

取引先から年商を倍増させたいとの相談を受け、必要な人材の提案と併せて、社内の経営課題を調査したところ、業容が拡大しているにもかかわらず、社長に権限が集中したままになっており、業務が非効率となっていました。
そこで、社会保険労務士資格を持つ銀行担当者が、社内権限規程の作成や、人事制度の刷新等を支援した結果、専門人材の権限の明確化、職員の労働環境の改善が図られるなど、組織全体の効率化・強化につながりました。

※上記の資料は、金融庁「金融仲介機能の発揮に向けたプログレスレポート」(2021年7月2022年6月)を基にしたものです。詳細は、レポート本文をご覧ください。

お問い合わせ

金融庁 監督局総務課人材マッチング推進室

〒100-8967
東京都千代田区霞が関3-2-1 中央合同庁舎第7号館

電話番号:03-3506-6000(内線2936)

ページトップへ