アクセスFSA 第71号(2008年10月)

アクセスFSA 第71号(2008年10月)

中小企業金融の円滑化に関する意見交換会で挨拶する中川大臣(10月15日) 金融審議会第一部会で挨拶する谷本副大臣(10月15日)
中小企業金融の円滑化に関する意見交換会で挨拶する中川大臣(10月15日) 金融審議会第一部会で挨拶する谷本副大臣(10月15日)

目次


【フォトギャラリー】

※ 大臣、副大臣、大臣政務官が出席された会議等の写真を掲載し、皆さんに情報をお届けするものです。

中小企業金融の円滑化に関する意見交換会で挨拶する中川大臣(10月15日) 金融審議会第一部会で挨拶する谷本副大臣(10月15日)

(社)日本記者クラブで講演する中川大臣(10月31日(金))

挨拶する 中川 大臣 挨拶する 谷本 副大臣
挨拶する 中川 大臣 挨拶する 谷本 副大臣

財務局長会議(平成20年10月30日(木)開催)

挨拶する 宇野 大臣政務官
挨拶する 宇野 大臣政務官

【特集】

市場安定化・金融円滑化対策について

去る10月10日に米国の首都ワシントンDCでG7(七か国財務大臣・中央銀行総裁会議)が開催され、我が国からは中川財務大臣兼金融担当大臣と白川日本銀行総裁が出席しました。この会合でG7は、各国があらゆる利用可能な手段を活用して断固たる行動をとることで合意し、これを5項目の行動計画という形にまとめて公表しました。

これを踏まえ、中川大臣は我が国において実施すべき施策を大臣談話という形でとりまとめ、米国からの帰国翌日である10月14日朝、発表しました。

また、10月27日には、麻生総理より中川大臣はじめ関係閣僚等に対し、あらゆる手段を講じて市場の安定と円滑な金融機能の確保を図るとの考えに立ち、株式市場安定、金融機能の一層の強化、証券投資の裾野の拡大の三つの観点から対策を講じるよう指示がありました(その内容は、その後同月30日に公表された政府の「生活対策」に盛り込まれました。)。

これらを受けて金融庁では、法令等の改正を要しない施策については即日実施するとともに、その他の施策についても早急な実施に向け作業に入り、順次実施に移しています。

世界の金融市場の状況が我が国の金融システムそのものの健全性に与える直接の影響は、米国や欧州に比べると相対的に限定されています。また、既に1990年代に金融危機を経験した我が国においては、預金保険制度を中心としたセーフティネットも十分に整備されています。しかしながら、世界の金融市場の混乱の影響が、我が国の株価や実体経済を通じて我が国国内の金融セクターにも影響を及ぼしつつあることから、引き続き高い警戒水準の下で動向を注視しながら、適切かつ迅速に対応していくことが重要であるという観点に立ち、今般、緊急に対策を講じることとしたものです。

10月14日及び同月27日に発表された対策の内容は以下のとおりです。

【株式市場安定化のための措置】

  • 1. 自社株取得に係る規制緩和

    上場企業による自社株取得については、相場操縦を防止する観点から、内閣府令により、以下の4つの規制が設けられています。

    • (1) 1日の買付数量の上限:直近4週間の1日当たり平均売買高の25%

    • (2) 買付時間:取引終了時刻の直前30分は禁止

    • (3) 買付価格:直近の売買価格を上回らない価格

    • (4) 証券会社数:1日1社の証券会社のみを通じた買付け

    今回の措置は、我が国株式市場の状況にかんがみ、上場企業が自己株取得を円滑に行うことができるよう、これらのうち、(1)1日の買付数量の上限及び(2)買付時間に係る規制を時限的に緩和するものです。

  • 2. 空売り規制の強化等

    我が国においては以前から、すべての上場株式について、以下のような空売り規制が設けられており、現在も継続しています。

    • (1) 明示・確認義務

      売付けが空売りであるか否かの別の明示・確認を、取引者などに義務付けています。

    • (2) 価格規制

      原則として、金融商品取引所が公表した直近の価格以下の価格での空売りは、禁止されています。

    そして今般、10月14日の大臣談話を受け、更に以下の措置を講じることとしました。

    • (1) 取引所による空売り情報開示の拡充

      市場の透明性を確保し、市場監視にも資する観点から、各取引所に対して、取引所が行っている空売りに係る情報開示の充実を要請しました。具体的には、これまで、取引所は全銘柄合計の空売り状況(売買代金)を月次で公表していたところ、14日以降は、全銘柄合計及び業種(33分類)別の空売りの売買代金を日次で公表する方向で、各取引所に要請しました。

      また、10月27日の総理指示を受け、株式市場の現下の状況や、諸外国における空売り規制の動き等を踏まえ、当面年度内の時限的、かつ、緊急的な措置として以下の措置を講じました。

    • (2) 売付けの際に株の手当てがなされていない空売り(naked short-selling)の禁止

    • (3) 一定規模の空売りポジションの保有者に対する、証券会社を通じた取引所への報告の義務付け及び取引所による当該情報の公表

  • ※ この1.並びに2.のうち(2)及び(3)についての詳細はアクセスFSA本号の「法令解説等」に、2.のうち(1)についての詳細は金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「取引所による空売り情報開示の拡充について」(平成20年10月14日)に、それぞれアクセスしてください。

  • 3. 銀行の株式保有制限の弾力的運用

    銀行による株式保有の額は、銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律(平成13年法律第131号)により、自己資本のうち基本的項目(いわゆるティア1自己資本)の額を超えるものとなってはならないこととされていますが、同法において、株式の市場価格の上昇その他の予見し難い事由がある場合には、当局の承認を得て、例外的に基本的項目の額を超えた額の保有が認められています。今回の措置は、現下の市場環境にかんがみ、株式保有額がティア1自己資本の額を超えた場合であっても、承認により保有を認めることとするものであり、既に実施に移されています。

    【金融機能の一層の強化のための措置】

  • 4. 金融機能強化法の強化・活用による中小金融の円滑化

    金融機能強化法(金融機能の強化のための特別措置に関する法律、平成16年法律第128号)は、金融機関への国の資本参加によって金融機能の強化を図り、中小企業に対する貸出の円滑化など地域経済の活性化を期するものです。

    10月14日の大臣談話においては、G7行動計画を具体化するための措置の一環として、金融機能強化法の強化・活用により地域金融機関による中小企業の円滑化を図ることを早急に検討することとされました。

    これを受け、国の資本参加に係る申込みの期限を平成24年3月31日までに延長し、資本参加の要件を一部見直すとともに、協同組織金融機関全体で提供している金融機能の発揮を促進することを目的に中央機関に対してあらかじめ国が資本参加をする枠組みを新設することなどを内容とした、「金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」が、平成20年10月24日に閣議決定され、国会に提出されています。

    また、現在、国による資本参加のための預金保険機構の借入金等への政府保証枠2兆円(平成20年度予算)が確保されていますが、10月30日に公表された政府の「生活対策」では、円滑な金融機能が発揮されるために十分な国の資本参加枠の拡大を検討することとされています。

    ※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「国会提出法案」から「第170回国会における金融庁関連法律案」にアクセスしてください。

    金融機能強化法の活用による中小企業貸出の円滑化
    協同組織金融機関の中央機関への資本参加の枠組み
  • 5. 生命保険会社のセーフティネットへの政府補助の延長

    生命保険会社のセーフティネットについては、万一、生命保険会社が破綻した場合の保険契約者の保護を目的として、生命保険契約者保護機構(平成10年12月1日設立)から受け皿会社への資金援助等を実施するための制度が設けられており、保険金などの支払いのために保険会社が積み立てているべき準備金(責任準備金)の原則90%までが補償されることとなっています。

    生命保険契約者保護機構の財源は生命保険会社からの負担金の拠出により賄われていますが、生命保険会社の拠出のみでは対応が難しい場合には、現行制度上、平成21年3月31日までの間は政府による補助が可能とされています。

    10月14日の大臣談話では、この政府補助を平成21年4月以降も可能とする措置を検討することとされました。これを受け、現下の厳しい金融情勢の下で、引き続き保険契約者の保護が的確に図られるセーフティネットを確保することを目的として、政府補助を平成24年3月31日まで延長することを内容とした「保険業法の一部を改正する法律案」が平成20年10月24日に閣議決定され、国会に提出されています。

    ※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「国会提出法案」から「第170回国会における金融庁関連法律案」にアクセスしてください。

    生命保険会社のセーフティネットについて(生命保険契約者保護機構)
  • 6. 銀行の自己資本比率規制の一部弾力化

    銀行をはじめとする預金取扱金融機関については、その財務の健全性を維持する観点から、保有する資産の一定割合の自己資本を維持することが義務づけられています(自己資本比率規制)。この自己資本比率の計算においては、その金融機関が保有する株式や債券などの有価証券につき会計上算出される評価益を一部、自己資本に含めることが認められています。

    この自己資本比率規制につき、「生活対策」において、「現在の市場環境の下、自己資本比率の急激な変動により、金融機関の金融仲介機能を低下させないよう、国際合意の枠組みも踏まえつつ、規制の一部弾力化を図る」こととされたことを受け、金融庁は、平成20年12月期決算から平成24年3月期決算までの間に限り、以下のような措置を講じることとし、そのための金融庁告示の改正案をパブリックコメントに付すこととしました。

    • (1) 国内基準が適用されている預金取扱金融機関(海外で業務を展開しない金融機関)については、有価証券の評価損を、自己資本の基本的項目(ティア1)から控除しないこととする。

    • (2) 国際統一基準が適用されている預金取扱金融機関(海外で業務を展開する金融機関)については、国債、地方債など信用リスクのない債券の評価損益について、評価益を自己資本の補完的項目(ティア2)に算入しないとともに評価損も自己資本の基本的項目から控除しない取扱いも認めることとする。

    ※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「銀行等の自己資本比率規制の一部弾力化について」(平成20年11月7日)にアクセスしてください。

    (弾力化の概要)

    国内基準 国債等

    評価益:自己資本に反映せず

    評価損:約60%をティア1控除

    (評価益:変更なし)

    評価損:自己資本に反映せず

    株式・社債等
    国際統一基準 国債等

    評価益:45%をティア2算入

    評価損:約60%をティア1控除

    評価益:自己資本に反映せず

    評価損:自己資本に反映せず

    株式・社債等 (評価損・評価益ともに変更なし)
  • 7. 適正な金融商品会計に向けた努力へのサポート(支持)

    金融商品会計を含めた会計基準については、民間・独立の企業会計基準委員会(ASBJ)において、国際的な動きも踏まえつつ、検討や対応が行われています。金融庁としては、10月27日の総理指示や「生活対策」をも踏まえ、このような適正な金融商品会計に向けた努力をサポートしていく方針です。

    • (1) 公正価値の算定方法の明確化

      金融商品の会計については、一部を除いて「公正価値」で算定することとされ、このうち市場に十分な取引がある場合には市場価格を「公正価値」とする一方、市場価格が存在しない場合には合理的に算定された価額(理論値)を「公正価値」とすることとされています。

      これに関連して、企業会計基準委員会は10月28日、実際の売買事例が極端に少なかったり、売手と買手の希望する価格の差が著しく大きかったりして、市場価格をそのまま使うことが適当でない場合には、極端な市場価格ではなく、理論値を「公正価値」と取り扱うことが適当なときもあることを明確化する解釈(Q&A)を公表しました。

      これを受け、金融庁は「平成20検査事務年度検査基本方針」を同日改定し、平成20年9月末決算を対象とした検査から、金融機関による有価証券の自己査定の検証を、この解釈に留意して実施することとしました。また、今後新たに会計基準の明確化等が図られた場合に、それにも留意して検証することも明記しました。

      ※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「平成20検査事務年度検査基本方針の改定について」(平成20年10月28日)にアクセスしてください。

    • (2) 金融商品の保有目的の変更

      企業会計基準委員会は、公正価値評価の対象となる「売買目的有価証券」「その他有価証券」として区分されている債券を、公正価値評価ではない評価(償却原価法)を行う「満期保有目的債券」区分に変更することを、まれな状況で認めることにつき検討を行っています。金融庁としては、同委員会における迅速な検討を支持しています。

  • 8. 金融円滑化に向けたその他の取組み

    金融庁では中小企業金融について、これまでも中小企業庁と連携しつつ、きめ細かい実態把握に努めるなどの対応をしてきていますが、改めて10月15日に、中川大臣が金融機関の代表者に対して金融円滑化に向けた要請を行いました(要請の様子は、アクセスFSA本号の表紙をご覧ください)。

    また、中小企業金融円滑化に向けた監視を強化するため、金融機関の融資に関する中川大臣直通の情報受付窓口、金融円滑化「大臣目安箱」を10月16日に開設しました。

    ※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「金融円滑化『大臣目安箱』について」(平成20年10月17日)にアクセスしてください。

    【証券投資の裾野の拡大のための措置】

  • 9. 従業員持株会による株式取得の円滑化

    従業員持株会による株式取得については、現行、

    • (1) 従業員持株会に対する従業員1人、拠出1回当たりの拠出金額が100万円未満であること(残高に係る制約はありません。)。

    • (2) 一定の計画に従い、個別の投資判断に基づかず、継続的に株券の買付けが行われること。

    を要件に、インサイダー規制等の適用除外とされています。

    これに関して金融庁は10月27日、総理指示を受け、従業員持株会による株式取得の円滑化を図るため、日本証券業協会に対して、従業員持株会制度の積極的な活用の観点から、上に述べた適用除外についての周知、及び、複数の日における買付けを行うことが可能であることの明確化、の二つを要請しました。

    ※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「従業員持株会による株式取得の円滑化について」(平成20年10月27日)にアクセスしてください。


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