アクセスFSA 第73号(2008年12月)

【法令解説等】

改正金融機能強化法及び関係政令・内閣府令・監督指針の改正について

平成20年12月12日、第170回国会において、「金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律」(以下「改正法」といいます。)が可決・成立しました。改正法は、国の資本参加を通じて、金融機関の金融仲介機能を強化することにより、厳しい状況に直面する地域経済、中小企業を支援することを目的としています。

金融庁では、現下の厳しい経済情勢の下、金融機関の金融仲介機能の適切かつ積極的な発揮を支援するため、改正法を速やかに施行する必要があると考え、関係する政令・内閣府令・監督指針の整備を一気呵成(かせい)に行いました。これらの法令・監督指針は、平成20年12月16日に公布・公表され、翌17日から施行・適用されています。

また、金融庁では、平成20年中に全国各地で金融機関向けの説明会を開催し、本制度の周知・徹底を図りました。今後とも、関係団体等に対し、本制度の利用の検討について積極的に呼びかけていきます。

<改正法及び関係政令・内閣府令・監督指針の改正の主なポイント>

  • I.国の資本参加の申込期限の延長

    平成20年3月末日で期限切れとなっていた国の資本参加の申込期限を平成24年3月末まで延長しました。【法律事項】

  • II.個別の金融機関への資本参加(既存スキームの見直し)

    改正法の目的の達成に向け、今後資本政策を検討している金融機関が国の資本参加の申込みを行いやすい環境を整える観点から、個別の金融機関の金融機能に着目して国が資本参加する既存スキームについて、以下のような見直しを行いました。

    • 1.経営強化計画の記載事項

      金融機関が国の資本参加の申込みをする際に提出する経営強化計画の記載事項について、以下のように見直しました。

      • (1)信用供与の円滑化【内閣府令事項】

        (従 来)中小企業等向け貸出比率の見込みを記載

        ⇒(改正後)「中小規模事業者等向け信用供与円滑化計画」を策定し、以下の事項を記載

        ○中小規模事業者等向け貸出比率 の水準を維持・向上させるための方策

        ○中小規模事業者等向け貸出残高の見込み

        ※このほか、経営改善支援先割合 も記載(従来と同様)

      • (2)経営責任

        計画の終期において数値目標未達である場合や資本参加の申込時に自己資本比率が基準値未満である場合の経営責任の明確化を制度上一律には求めないことにしました。【法律事項】

        ただし、資本参加の申込時に自己資本比率が基準値未満である金融機関には、責任ある経営体制の確立に関する事項として以下の事項について記載を求めることにしました。【内閣府令事項】

        従前の経営に関する分析結果の内容

        当該分析結果の内容に基づく経営管理体制の改善を図るための方策

       

      経営者の責めに帰すべき事由により自己資本比率が基準値未満となったと認められる場合には、経営責任の明確化を含めた経営管理体制の抜本的な改善を図るための方策を盛り込む

    • 2.国の資本参加の基準

      • 国の資本参加に際し、リストラ等の事業再構築や地域における自力資本調達の実施を制度上求めないことにしました。【法律・政令事項】

      • 1 「中小規模事業者等向け貸出比率」=中小企業者又は地元事業者に対する貸出残高/総資産

        2 「経営改善支援先割合」=経営改善支援等取組先企業の数/取引先企業の総数

      • 「中小規模事業者等向け信用供与円滑化計画」を適切かつ円滑に実施するための方策についての審査の着眼点を明確化しました。【監督指針事項】

      • 自己資本比率が基準値未満の金融機関について、業務執行やリスク管理がずさんな経営管理体制が維持される場合には、国の資本参加の基準を満たさないことを明確化しました。【監督指針事項】

    • 3.事後チェック

      • 中小規模事業者等向け貸出比率及び残高がいずれも計画の始期を下回った場合等は、その理由について報告を求め、改善に向けた施策が不十分であれば、必要に応じ業務改善命令の発動を検討することにしました。【監督指針事項】

      • 2期連続で下回った場合は、原則として業務改善命令の発動を検討することにしました(従来と同様)。【監督指針事項】

      • 3 従来は、中小規模事業者等向け貸出比率のみ。

  • III.協同組織金融機関の中央機関への資本参加(新たなスキームの創設)

    改正法において、協同組織金融機関全体で提供している金融機能の発揮の促進を目的として、中央機関(信金中金・全信組連・労金連・農林中金)に対して予め国が資本参加することを可能とする枠組みを新たに創設し、関係政令等において以下のようにその細目を定めました。

    • 1.協同組織金融機能強化方針の記載事項

      中央機関が国の資本参加の申込みをする際に提出する協同組織金融機能強化方針の記載事項について、以下のような事項を規定しました。

      • (1)信用供与の円滑化【内閣府令事項】

        • 業界全体として、中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化等に資するための方針

        • 資本支援を行った傘下の協同組織金融機関の中小規模事業者等向け貸出比率及び残高の水準を維持・向上させるための方策を盛り込んだ「協同組織金融関係中小規模事業者等向け信用供与円滑化計画」

        • を記載

      • (2)公的資金を有効に活用するための体制【内閣府令事項】

        傘下の協同組織金融機関への資本支援が中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化に資することを中央機関で審査するための体制等を記載

      • (3)経営責任【内閣府令事項】

        (経営強化計画と同様)

      • (4)その他【政令事項】

        国の資本参加の申し込みをする中央機関が農林中央金庫である場合は、公的資金が信用事業のみに充てられることを確保するための体制を記載

    • 2.国の資本参加の基準

      • 中央機関が、資本支援を行った傘下の協同組織金融機関に対し、中小規模事業者等に対する信用供与の円滑化の状況についてフォローアップ・指導を行うこととなっているかなど、審査の着眼点を明確化しました。【監督指針事項】

      • 自己資本比率が基準値未満の中央機関については、業務執行やリスク管理がずさんな経営管理体制が維持される場合は、国の資本参加の基準を満たさないこととするなど、審査の着眼点を明確化しました(既存スキームと同様)。【監督指針事項】

    • 3.事後チェック

      • 中央機関が資本支援した各協同組織金融機関の合算ベースでの中小規模事業者等向け貸出比率及び残高がいずれも当該資本支援の始期の合算ベースの水準を下回った場合等は、その理由について報告を求め、改善に向けた施策が不十分であれば、必要に応じ業務改善命令の発動を検討することにしました。【監督指針事項】

      • 2期連続で下回った場合は、やむを得ない事情があると認められる場合を除き、原則として業務改善命令の発動を検討することにしました。【監督指針事項】


保険業法の一部を改正する法律について

平成20年12月12日、第170回国会において、「保険業法の一部を改正する法律」が成立し、同年12月16日に公布・施行されました。

この法律は、現下の厳しい金融情勢の下で、引き続き保険契約者等の保護が的確に図られるセーフティネットを確保することを目的としたものであり、具体的には、生命保険契約者保護機構が行う資金援助等に関する政府の補助を可能とする特例措置を延長するものです。

開示府令及び開示ガイドラインに係る主な改正内容は次のとおりです。

【具体的内容】

生命保険会社のセーフティネットについては、万一、生命保険会社が破綻した場合の保険契約者等の保護を目的として、生命保険契約者保護機構(平成10年12月1日設立)が受け皿会社へ資金援助等を実施する制度が設けられており、これにより、保険金などの支払いのために保険会社が積み立てているべき準備金(責任準備金)の原則90%までが補償されることとなっています。

生命保険契約者保護機構の財源は生命保険会社からの負担金の拠出により賄われていますが、生命保険会社の拠出のみでは対応が難しい場合には、予算で定める金額の範囲内で、政府の補助を可能とする特例措置が設けられています。

当該政府補助の特例措置は平成21年3月31日までの破綻に対応するものでしたが、最近における保険業を取り巻く経済社会情勢の変化を踏まえ、保険契約者等の保護を図り、保険業に対する信頼性を維持するため、今回の改正では、これを3年間延長し、平成24年3月31日までの破綻に対応するものとしました。(保険業法附則第1条の2の14第1項)

なお、今回の保険業法の改正に伴い、保険業法施行令について所要の規定の整理を行っており、本法律と併せて公布・施行されています。

※ 今回の法律改正の詳細については、金融庁ウェブサイトの「国会提出法案等」から「第170回国会における金融庁関連法律案」にアクセスしてください。

また、これに伴う政令改正の詳細については、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「「保険業法施行令の一部を改正する政令」について」(平成20年12月16日)にアクセスしてください。

保険会社のセーフティネットについては、金融庁ウェブサイトの「保険を契約している方へ」から「保険契約者保護機構制度(保険会社のセーフティネット)」にアクセスしてください。


平成20年金融商品取引法等の一部改正に係る政令・内閣府令等について

1.はじめに

我が国金融・資本市場の競争力強化のために必要な制度整備を包括的に盛り込んだ「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(以下「改正法」といいます。)が平成20年6月6日に成立し、6月13日に公布されたのを受け、改正法の施行に必要な「金融商品取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令」が12月2日に閣議決定され、12月5日に公布されました。

また、改正法の施行日については、「金融商品取引法等の一部を改正する法律(平成20年法律第65号)の公布の日(平成20年6月13日)から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日」とされており、具体的には、平成20年12月12日とされました。(当該施行日を定める政令も平成20年12月2日に閣議決定されており、平成20年12月5日に公布されました。)

改正法に係る内閣府令等についても、平成20年12月12日から施行されました。

なお、ファイアーウォール規制の見直し及び利益相反管理体制の構築に係る部分については、改正法の公布後1年以内(平成21年6月12日まで)に施行することとなっています。

今般施行された政令・内閣府令に係る主な改正は以下のとおりです。

2.プロ向け市場の創設

改正法では、情報の分析能力やリスク管理能力が基本的に備わっていると考えられるプロの投資家(特定投資家)に参加者を限定した取引所市場の枠組みを創設し、公衆縦覧を前提とした法定開示に代えて、簡素な情報提供・公表を求める等の制度整備を行っています。

今般施行した政令・内閣府令では、

○ プロ向け銘柄の勧誘・取引に係る告知義務、プロ向け銘柄が一般投資家へ転売されることを防止するための転売制限の細目を規定

○ 有価証券・発行者に関する情報提供の内容・方法について取引所ルールによる旨を規定

○ 取引所が自主規制法人以外に委託できる自主規制業務の範囲等として、上場・上場廃止基準に適合するかどうかの事前調査等を規定

○ 我が国取引所と外国取引所による取引所の共同設立に係る規定の整備(我が国取引所の子会社である取引所について、20%以上50%未満までの議決権を保有できる者として、外国取引所を追加)

等の措置を講じています。

3.ETF(上場投資信託)の多様化

改正法では、利用者利便向上の観点から、ETFの多様化に係る措置として、ETFと現物交換できる対象を、有価証券から換価の容易な資産へ拡大するなどしています。

今般施行した政令・内閣府令では、ETFの主たる投資対象に金などの商品現物・先物を追加するほか、ETFと現物交換できる対象として、商品市場に上場されている商品を追加する等の措置を講じています。

4.銀行・保険会社グループの業務範囲の拡大

改正法では、企業再生(地域再生)の一層の推進等の観点から、銀行・保険会社グループの議決権保有制限の例外措置を拡充(現行のベンチャービジネス会社に加え、事業再生を行う会社を追加)するほか、銀行・保険会社本体に対する投資助言業務や排出量取引の解禁等を行っています。

今般施行した政令・内閣府令では、以下のような措置を講じています。

  • (1)議決権保有制限の例外となる会社の範囲を規定

    • 事業再生を行う会社として、中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律上の「経営革新計画」の承認を受けている会社等を規定

    • 現行のベンチャービジネス会社について、要件の一つである「設立5年未満」を「設立10年未満」に拡大

  • (2)銀行・保険会社の子会社・兄弟会社の業務範囲として、実質的に与信と同視すべきイスラム金融を解禁

  • (3)銀行・保険会社本体に対し、排出量の取得・譲渡等の取引を解禁

5.課徴金制度の見直し

改正法では、公正・透明で信頼性のある市場の構築の観点から、課徴金の金額水準を引き上げるとともに、新たに課徴金の対象範囲を拡大しています。

今般施行した政令・内閣府令では、違反者の密接・特殊関係者の計算において違反行為を行った場合にも、自己の計算において違反行為を行ったものとして課徴金の対象とする規定に関し、「違反者の密接・特殊関係者」として子会社、親族等を規定する等の措置を講じています。

6.その他の主な改正事項

その他、○インサイダー取引規制の軽微基準の見直しとして、上場会社等の子会社の解散に係る軽微基準(資産額の減少が純資産額の30%未満かつ売上高の減少が10%未満)の新設、○課徴金に係る審判手続の見直しとして、第1回審判期日前における証拠開示規定の追加、○発行体への書面交付義務の緩和、○関係外国運用業者発注の適用除外の拡大等の改正を行っています。


大量保有報告制度における課徴金制度の開始について

金融商品取引法等の一部改正に伴い、平成20年12月12日より、大量保有報告書を提出しない者や大量保有報告書において虚偽の記載を行った者に対し、新たに課徴金が課されることになりました。

具体的な対象としては、

  • 1.大量保有報告書又は大量保有報告書の変更報告書(以下、「大量保有変更報告書」といいます。)を提出期限までに提出しない場合(改正後の金融商品取引法第172条の7)

  • 2.重要な事項につき虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項の記載が欠けている○大量保有報告書、○大量保有変更報告書、○大量保有報告書・大量保有変更報告書の訂正報告書を提出した場合(改正後の金融商品取引法第172条の8)

です。

課徴金の額は、大量保有報告対象株券等の発行者が発行する株券等の時価総額の10万分の1です。

また、上記1の場合として、当局による報告・資料の提出命令又は検査が開始される前に、提出義務者が証券取引等監視委員会に対し、上記1の場合に該当していることを自ら報告した場合には、直近の違反事実に係る課徴金額を半額にする減算制度が設けられています。(改正後の金融商品取引法第185条の7第12項)

※ 減算制度の報告書の提出先及び様式等はこちら(証券取引等監視委員会へリンク)新しいウィンドウで開きます

なお、違反行為を繰り返した者に対しては、課徴金を加算する制度も設けられています。(改正後の金融商品取引法第185条の7第13項)

これまでに、大量保有報告書制度における不提出事例として以下のようなものがありますので、大量保有報告書等の提出義務のある方は十分にご注意ください。

  • (例1)ある上場会社の発行済株式総数の5%を超える株券を取得していたが、大量保有報告書の提出期限までに提出をせず、提出期限経過後に提出した。

  • (例2)大量保有報告書を提出していたところ、その後、株券の買い増しにより株券等保有割合が1%以上増加したが、大量保有変更報告書の提出期限までに提出をせず、提出期限経過後に提出した。

  • (例3)大量保有報告書を提出していたところ、共同保有者が増えたことから、共同での株券等保有割合が1%以上増加したが、大量保有変更報告書の提出期限までに提出をせず、提出期限経過後に提出した。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトのホームページ「金融庁の政策 » 政策の一覧へ » 市場の信頼性確保」から「大量保有報告制度における課徴金制度の開始について」(平成20年11月28日)にアクセスしてください。


金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針の一部改正について

金融庁では、金融商品取引法等の一部改正(平成20年12月12日施行)に伴い、金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針の一部改正(案)について、平成20年9月19日から10月20日にかけて広く意見の募集を行い、12月2日にパブリックコメント結果を公表し、監督指針の一部改正を行いました。改正された監督指針は、12月12日より適用を行っています。

改正の概要は以下のとおりです。

  • 1.特定投資家向け有価証券の取扱いについて

    • (1)金融商品取引法第40条の4において、「特定投資家向け有価証券」の売買等の制限が整備されたことを踏まえまして、金融商品取引業者によるPTS(私設取引システム)業務の認可に当たっての留意点として、「特定投資家向け有価証券」を取扱う場合における、一般投資家による売買を禁止するための方法・態勢の確立等について追加を行いました。

    • (2)金融商品取引法第40条の5において、「特定投資家向け有価証券」に関する告知義務等が整備されたことを踏まえまして、金融商品取引業者の勧誘・説明態勢に関する監督上の着眼点として、「特定投資家向け有価証券」の取扱い時に義務付けられる告知等の運用状況の実態把握及びその適正化について追加を行いました。

  • 2.投資信託財産等に係る運用報告書の表示要領について

    投資信託及び投資法人に関する法律施行令第3条第9号及び第10号において、投資信託の主たる投資対象たる「特定資産」として、商品現物及び商品先物取引等に係る権利が追加されたことを踏まえまして、それらに投資をする投資信託の運用報告書の具体的な表示要領を追加しました。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針の一部改正について」(平成20年12月2日)にアクセスしてください。


次のページ

サイトマップ

ページの先頭に戻る