【ピックアップ:中小企業金融】
 
「北陸リレーションシップバンキングシンポジウム」の開催について(北陸財務局)

「北陸リレーションシップバンキングシンポジウム」の開催について(北陸財務局) 北陸財務局では、去る4月8日(木)、KKRホテル金沢において、「北陸リレーションシップバンキングシンポジウム」を日本政策投資銀行北陸支店と共催しました。
 当日は、中小企業経営者、金融機関関係者など約200名が参加する中、堀内中央大学総合政策学部教授と金融庁総務企画局木下参事官による基調講演及びパネルディスカッションが行われました。

 第1部の基調講演においては、堀内教授より「金融機能の再生とリレーションシップバンキング」と題した講演があり、その中で「日本の実体経済、及びリレーションシップバンキングの意味と今後その機能がどのような形で求められていくか」という点についての話がありました。
 続いて、木下参事官より「地域金融を巡る取り組みについて」と題した講演があり、その中で「中小企業金融に関する情報交換、中小企業の実態に即した検査の確保、リレーションシップバンキングの機能強化、及び産業金融機能強化策」について話がありました。

 第2部においては、「北陸企業の体質強化と地域金融の果たす役割」をテーマとして、コーディネーターである西村北陸財務局長の進行により、中小企業経営者、経営コンサルタント、企業再生関係者、日本政策投資銀行、堀内教授、及び木下参事官の6名によるパネルディスカッションが行われました。

 パネルディスカッションでは、
 ・  人、モノ、金はないが、やる気と知恵を出せる潜在能力のある企業を応援するような仕組みを作って欲しい。(中小企業経営者)
 ・  金融機関は、創業当時はなかなか融資してくれないが、利益が出るようになると、今は資金が不要だといっても借りてくれと来る。貸し渋り・貸し剥がしではなく、押し貸しである。(経営コンサルタント)
 ・  1年前と違い、現在では全国的に地域再生ファンドの話は理解されており、この意識改革はリレーションシップバンキングのアクションプログラムの成果の賜物である。(企業再生関係者)
 ・  北陸3県すべての銀行と業務協力協定を締結し、地域金融のサポートに取り組んでいる。例えば、銀行と協力して、非常に技術力の高い企業の発行する社債を当行が100%保証し、信金中金と連携して、最終的には社債を地元に購入して貰うなど、地元のお金を地元に回すといった第1号のスキームを北陸で作り、全国的に注目されている。(日本政策投資銀行)
など、中小企業金融や地域再生ファンドの現状等について、プレゼンテーションがありました。
 堀内教授からは、「企業再生のために重要なのは情報である。企業がどの程度再生する可能性があるのか、経営者がどの程度の意欲と能力をもっているかを見極めることが出来る第1候補は銀行である。」との発言や「リレーションシップバンキングの機能強化は、企業経営にコミットするので、DCF法などを用いた検査監督とは矛盾する。」という発言がありました。

 続いて、木下参事官からは「金融機関は、雨が降ったら傘を外し、晴れてくると傘を貸すということが言われている。金融機関は取引先に対してタイムリーに的確な情報発信をすることが重要である。また、企業経営へのコミットに関しては、銀行と証券の連携が重要である。」との発言がありました。

 続いて、パネリスト間で、北陸地域は石川県をはじめ大温泉があり、温泉地の活性化が課題の一つという地域特性を踏まえ「再生ファンドを活用した温泉業の再生」、「金融機関の能力の活用」という観点から意見交換が行われ、この中で、
 ・  温泉地の再生は簡単なものではなく、泥臭い一つ一つの積み上げであり、そうした積み上げがコスト削減等に結びついていくもの。小規模な温泉旅館の場合は、売上規模が小さいので、金融機関にとっては、手間がかかるがリターンが小さいという意味でなかなか成功しないのではないか。(企業再生関係者)
 ・  金融機関は、データベースの宝庫である。それを活用し、あるビジネスとあるビジネスをマッチングさせるということを推進して欲しい。(経営コンサルタント)
 ・  中小企業は、大企業では当たり前に行われている方針管理・目標管理などが人材不足ということもあり出来ていない。潜在的に業績が上がる企業はたくさんあるが、これらを生かす手法が分かっていない。かといって、コンサルタントを雇うだけの元手もないのが現状である。銀行はそういう指導が出来る人材がいるので積極的に支援して欲しい。(中小企業経営者)
などの意見が出されました。

中小・地域金融機関に対する利用者等の評価に関するアンケート調査結果について

 昨年3月に公表した「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」において、「中小・地域金融機関に対する利用者等の評価に関するアンケート調査を平成15年度から実施する。その結果を公表し金融機関全体の利用者の利便の向上を促すとともに、同時に行政においても活用する」こととされていました。

 これを受け、平成16年2月から3月にかけて全国の財務局において、中小・地域金融機関に対する利用者等の評価に関するアンケート調査を実施しました。

 具体的には、中小・地域金融機関の利用者である商工関係者、消費者等のほか、商工会議所等の経営指導員(中小企業診断士等)計736名に対し、中小企業金融の再生、地域貢献、預金者へのサービスについて5段階により評価していただくとともに、今後、中小・地域金融機関に特に何を期待するか(複数回答可)について調査しました。

 調査の結果、リレーションシップバンキングのアクションプログラムが公表されて以降、1年足らずの調査実施段階において、調査項目によって違いはあるものの、すべての項目について調査対象者から一定程度(2割弱〜4割弱程度)の積極的な評価が得られています。他方、全体としてみれば、依然として積極的な評価に比べて消極的な評価(例えば、「あまり進んでいない」及び「全く進んでいない」の合計)の比率が高いという状況にあり、引き続きリレーションシップバンキングの機能強化計画を着実に実施することにより、積極的な評価の割合が高まっていくことが期待されます。

 金融庁としては、今回の調査結果も参考にしながら、引き続き中小・地域金融機関の機能強化計画の実施状況のフォローアップに努めることにより、リレーションシップバンキングの機能強化を確実に図って参りたいと考えています。


 アンケート調査の結果について、詳しくは金融庁ホームページの「報道発表など」から「中小・地域金融機関に対する利用者等の評価に関するアンケート調査結果の公表について」(平成16年4月27日)にアクセスしてください。

「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」情報の受付・活用状況について


.「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」とは
 金融庁では、中小企業等への金融の円滑化に向けた取組みの一環として、中小企業など借り手の声を幅広く聞くため、「貸し渋り・貸し剥がしに関する情報の電子メール・ファックスによる受付制度」(通称「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」)を開設しています。これは、中小企業が、金融検査マニュアルなどを理由に金融機関から不当な扱いを受けた場合等に、金融庁等に直接通報できるよう、ファックスや電子メールの受付窓口を設けたものです。


.ホットラインに寄せられた情報の受付と活用の状況(平成16年3月末現在)
 
(1)  受付状況
 「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」の受付・活用状況については、四半期毎に公表することとしており、平成16年4月23日に第5回目の公表を行いました。平成14年10月の開設以降平成16年3月31日までに受け付けた情報の累積件数は1,380件となっています。受付状況の詳細は別表を参照してください。
 


 過去4回の公表内容については、それぞれ金融庁ホームページの「報道発表など」から「「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」情報の受付・活用状況について」(平成15年4月21日)「「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」情報の受付・活用状況について」(平成15年7月29日)「「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」情報の受付・活用状況について」(平成15年10月24日)「「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」情報の受付・活用状況について」(平成16年1月30日)にアクセスしてください。

(2)

 活用状況
 
 金融機関全般に関する活用としては、貸し渋り・貸し剥がしホットラインに寄せられた情報を参考に、昨年7月、「与信取引に関する顧客への説明態勢及び相談苦情処理機能に関する事務ガイドライン」を制定しました。
 また、昨年8月に策定した「平成15検査事務年度検査基本方針及び基本計画」に基づき、今事務年度(平成15年7月〜平成16年6月)の検査においては、特に借り手企業に対する説明責任の履行状況等の重点的検証を行っています。
 更に、寄せられた情報を参考に、金融機関に対して、中小企業金融の円滑化や顧客への十分な説明態勢の確立、相談・苦情処理機能の強化等を要請しています。
 
(参考 )こうした取組に加え、本年2月に改訂した「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕」においては、金融機関と借り手企業との間の密度の高いコミュニケーションを通じた経営実態の把握状況等を検査において勘案することとしています。


 個別金融機関に関する活用は、以下の方法により行っています。
 
(i ) 受け付けた情報については、監督において、四半期毎にとりまとめ、金融機関の対応方針、態勢面等のヒアリングを実施しています。これらの情報のうち、情報提供者等が金融機関側への企業名等の提示に同意している情報については、臨機に、事実確認等のヒアリングを実施しています。
 なお、これらのヒアリングの結果、監督上確認が必要と認められる場合には、銀行法第24条等に基づく報告を徴求することとしています。
(ii ) 検査においては、検査を実施する金融機関に関し、検査時までに受け付けた全ての情報や当該金融機関から徴求した報告の内容を参考とし、借り手企業に対する説明責任の履行状況や苦情処理態勢等の検証を行っています。
 なお、検査の結果、問題があると認められる金融機関に対しては、銀行法第24条等に基づき、その改善措置に関する報告を徴求することとしています。


 具体的な活用の状況は、以下のとおりです。
 
(i ) 昨年10月1日から12月31日までに受け付けた情報については、監督において、これを基に49金融機関に対してヒアリングを行いました。
 また、そのうち監督上確認が必要と認められた3金融機関に対して、報告を徴求しました。
(ii ) 昨年10月1日から12月31日までに着手した検査においては、20金融機関の検査に際し、検査時までに寄せられた情報等を参考とし、借り手企業に対する説明責任の履行状況や苦情処理態勢等の検証を行いました。


 なお、「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」に寄せられた情報をより有効に活用し、政府全体として対応を図るため、中小企業庁と連携して関係省庁間の連絡会議を随時開催しています。

(別表)
「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」情報の受付状況
(平成16年1月1日から3月31日までの受付分)
「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」情報の受付状況(平成16年1月1日から3月31日までの受付分)


「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」の要領について、詳しくは金融庁ホームページの「政策ピックアップ」のコーナーから「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」にアクセスしてください。


【集中連載】
 
金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕の改訂について(最終回:「DDSの取扱い」)

 アクセスFSA第14号から続く金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編]の改訂についての集中連載も、今回の第5回目で最終回となります。
 今回の金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編]改訂にあたっては、約50先(約250件)のパブリック・コメント(ご意見)が寄せられました。
 主なご意見としては、1.具体的な取扱いの明確化、2.適用範囲の拡大(主にDDSの取扱い)、3.改訂された別冊の周知徹底等がありました。このうち、1.については第4回目のキャッシュフローの明確化の際に記載しているところであり、今回は主に2.DDSの取扱いについて記載します。


 DDSの取扱いに関する適用範囲の拡大
 DDSの取扱いについては、約40件のご意見をいただき、その多くが取扱いに関しての範囲等に関するものでした。
 


.対象者の拡大
 今回、改訂を行った別冊においては、その対象者を「中小企業基本法に規定する中小企業者及びこれに準じる医療法人等」としていますが、この対象範囲を大企業・中堅企業にも広げるべきであるとの意見をいただきました。
 しかしながら、DDSの検査上の取扱いを明確にした背景は、中小企業は総じて自己資本が過小であり、融資の一部が資本的性格となっているなど、我が国特有の中小企業に対する融資の特性に着目したものであり、多様な資本調達が可能な大企業・中堅企業をその対象とすることは、制度の背景からいっても適当ではないことから、対象範囲は、原案どおり「中小企業基本法に規定する中小企業者及びこれに準じる医療法人等」としています。


.対象債権の拡大
 今回、改訂を行った別冊においては、その対象債権を「要注意先債権(要管理先への債権を含む)」としていますが、この対象範囲を破綻懸念先以下についても広げるべきであるとの意見をいただきました。
 しかしながら、資本的劣後ローンの債務者側の会計実務が未だ発展途上にあり、高い引当率を要求される破綻懸念先以下の債権についてDDSを実行することは、金融機関の経営に少なからず影響を与える可能性があることを考慮するとともに、要注意先という早期の段階で金融機関が中小企業の再生に向けた取組みに資することを期待した結果、対象範囲は、原案どおり「要注意先債権(要管理先への債権を含む)」としています。


.資本的劣後ローンの返済
 今回、改訂を行った別冊においては、資本的劣後ローンの返済については、「資本的劣後ローンへの転換時に存在する他の全ての債権及び計画に新たに発生することが予定されている貸出債権が完済された後に償還を開始する」としていますが、この償還開始時期について、早期の償還が可能とするべきであるとの意見をいただきました。
 資本的劣後ローンは、資本的性格を帯びた債権であるからこそ、資産査定上は資本として取り扱っています。よって、通常時の返済劣後性を無制限に広げることはできません。しかしながら、多様化する資本商品の中には、償還株式のように償還を定めたものもあり、償還が全ての債権に劣後する取扱いは、DDSの利用弊害にも繋がりかねないので、ご意見を踏まえて、償還について、次のとおり定めました。
 「経営改善計画が達成され、債務者の業況が良好となり、かつ、資本的劣後ローンを資本と見なさなくても財務内容に特に問題がない場合には、債務者のオプションにより早期償還することができる旨の条項を設けることは差し支えない。」


 おわりに
 2月より連載させていただいた、金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編]改訂については、当初より判り易く解説することを目標に記載しておりましたが、やや技術的な面を強調し、判りにくい点もあったと思いますが、お許しください。
 なお、パブリック・コメントのご意見にもありましたように、作成した別冊を「検査官、金融機関、中小企業者の方々」に周知徹底していくことが、今後とも重要であり、研修・説明会などを随時実施し、その徹底に努めて参りたいと考えておリます。


 「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕」の改訂に当たってお寄せいただいたご意見の概要やそれに対する考え方等について、詳しくは金融庁ホームページの「報道発表など」から「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕等の改訂について」(平成16年2月26日)にアクセスしてください。
 「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕」について、詳しくは金融庁ホームページの「政策ピックアップ」のコーナーにある「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」や、アクセスFSA第14号から続く「集中連載:金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕の改訂について」(第1回【改訂の背景】、第2回【「債務者との意思疎通」、「擬似エクイティへの対応」】、第3回【「運用の改善」、「検証ポイントの検討と事例の大幅な拡充(その1)」】、第4回【「検証ポイントの改訂と事例の大幅な拡充(その2)」及び「別冊以外の改訂部分」】)にアクセスしてください。
 金融検査については、アクセスFSA第10号の「金融便利帳:金融検査」で解説しておりますので、アクセスしてみてください。

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