金融庁設置法第21条の規定に基づく建議について

平成17年11月29日
証券取引等監視委員会

 証券取引等監視委員会は、金融庁設置法第21条の規定に基づき、本日、金融庁長官に対して、下記のとおり建議を行った。




議1.顧客による「見せ玉」等売買の申込み行為による相場操縦を課徴金の対象とすることについて

 


 相場操縦の一手法として、市場の株価を誘導するために、約定させる意思がないにもかかわらず、市場に注文を出して売買を申込み、約定する前に取り消す、いわゆる「見せ玉」等が認められた。
 相場操縦の禁止について規定する証券取引法第159条第2項第1号は、顧客による「見せ玉」等売買の申込み行為を規制の対象としているが、相場操縦に対する課徴金について規定する同法第174条は、売買等が成立している取引のみを規制の対象としており、「見せ玉」等売買の申込み行為は売買等が成立していないことから、課徴金制度が適用されない。したがって、相場操縦等の不公正取引規制の実効性を確保するための課徴金制度においても「見せ玉」等売買の申込み行為を適用対象とする必要がある。



議2.証券会社の自己の計算における「見せ玉」等売買の申込み行為を刑事罰及び課徴金の対象とすることについて

 


 証券会社の顧客が「見せ玉」等売買の申込み行為を行った場合、証券取引法第159条第2項第1号にいう売買等の委託に該当し、処罰の対象となるにもかかわらず、証券取引所の取引参加者である証券会社が自己の計算で「見せ玉」等売買の申込み行為を行った場合には、売買等にも売買等の委託にも該当しないことから、同号による禁止の対象とされていない。
 「見せ玉」等売買の申込み行為による相場操縦につき、証券会社とその顧客において、当罰性には何ら差異がないことから、証券会社の自己の計算における「見せ玉」等売買の申込み行為をも、同号における禁止規定の対象とするとともに、同法第197条第1項第7号において規定する刑事罰の対象とする必要がある。
 当該行為については、併せて同法第174条に規定する課徴金の対象にもする必要がある。



議3.業務範囲の見直しに係る顧客保護について

 


 金融審議会金融分科会第一部会(中間整理)によると、業務範囲に関して、「投資サービス法においては、本来業務として、投資商品として位置付けられる幅広い金融商品に係る販売・勧誘やこれに関する資産運用・助言、資産管理を、一体として規制すべきである。この際、現行法の下においては、例えば、現在、証券業と証券投資一任業を兼業するためには、証券業の登録、投資顧問業との兼業の届出、投資助言業の登録、一任の認可、証券業との兼業の認可といった手続が必要となるほか、兼業に伴う弊害防止措置についても証券取引法と投資顧問業法にそれぞれ規定が置かれているなど、縦割りの法律が健全な兼業を妨げているといった指摘があることに留意が必要である。」と指摘されている。

 当委員会による証券会社に対する検査の結果を踏まえると、現在も、取引一任勘定取引により顧客が不当な手数料の支払いを強いられるような状況が散見されるところである。このため、投資サービス法における業務範囲の見直しに当たって、幅広い金融資産にかかる販売・勧誘やこれに関する資産運用・助言、資産管理を一体として規制することとなり、それに伴い取引一任勘定取引契約の禁止の扱いも見直される場合には、投資者保護に支障を来たさないよう証券会社が顧客の利益を損なうことを防止するため、現行の投資顧問業法における投資一任契約に係る規制も踏まえ、必要かつ適切な措置を講ずる必要がある。

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