証券会社の検査結果に基づく建議について

平成15年6月30日
証券取引等監視委員会


 証券取引等監視委員会は、証券取引法の規定に基づき、証券会社の検査を行った結 果、法令遵守のための内部管理に関して問題点が認められたので、金融庁設置法第21条の規定に基づき、本日、金融庁長官に対して、下記のとおり建議を行った。

 最近終了したインターネット取引を取り扱う複数の証券会社の検査において、以下の行為が認められた。

(1) 

証券会社が、インターネット取引において、不十分な売買審査体制の下で、買い上がり買付けと自己対当取引と繰り返す等の作為的相場形成となる顧客の注文を継続的に受託している行為

(2) 

証券会社が、インターネット取引において、個人顧客が空売りの価格規制を潜脱する目的で行ったと認められる短時間に連続する複数回の信用売り注文を受託し、これを発注している行為

(3) 

証券会社が、インターネット取引において、顧客の注文が本人になりすましている疑いがある取引であるにもかかわらず、これを受託している行為

 上記の行為は、インターネット取引の非対面性に起因して発生しているものであると考えられる。すなわち、これらの違法又は不適切な顧客の注文については、通常の対面営業であれば、顧客と直接接触してその注文を受ける担当者が相応の注意を払っていれば、これに気付いて未然にその受託を拒否することができる性質のものであるが、インターネット取引においては、顧客からの注文は全て自動的に市場に発注されてしまうことから、そのような対応が不可能な状況にあると考えられる。
 よって、インターネット取引を取り扱う証券会社においては、違法又は不適切な顧客の注文を市場から排除するために、通常の対面営業の証券会社のそれとは異なる、インターネットの非対面性という営業方法の特質に配慮した内容の売買審査の体制及び顧客管理の体制が構築されていなければならない。
 しかしながら、上記の検査においては、インターネット取引を取り扱う証券会社において、違法又は不適切な注文を排除するのに十分な売買審査体制や顧客管理体制が構築されていなかったことが認められている。

 したがって、市場の公正性を確保するため、インターネット取引を取り扱う証券会社の売買審査体制や顧客管理体制の適正性を確保させるための適切な措置を講じる必要がある。


今回の建議の補足説明

 最近終了したインターネット取引を取り扱う複数の証券会社の検査において認められた行為等の詳細は、以下のとおり。
 

(1)

 証券会社が顧客からインターネットを通じて受託した特定銘柄の注文について、数日間にわたって多数回の直近約定値を上回る高指値による買い上がり買い付け、顧客自身の対当売買などの取引が繰り返し行なわれており、当該銘柄における当該顧客の市場関与率も高くなっていたが、当該証券会社は、このような取引について、価格形成上問題のある取引として社内のシステムで抽出していたものの、その後に十分な売買審査を行っていなかったことから、当該顧客に対して注意喚起や一時的な取引停止などの適切な対応を取っていなかった。
 その他の証券会社においても、売買審査の体制について、価格形成上問題のある取引の抽出基準の整備が不十分なものとなっている状況や、注意喚起や一時的な取引停止等の具体的な基準が未整備となっている状況等が認められている。
 

(2)

 個人投資家による売買単位の50倍以内である信用取引による売付注文は、空売りの価格規制の適用除外となっているが、個人顧客が当該規制を潜脱する目的で行ったと認められる短時間に連続する複数回の信用取引による売付注文について、これを複数の証券会社が受託、執行していた。
 これらの証券会社では、そのような法令違反となる信用取引による売付注文がないかについて事後的なチェックを全く行っておらず、顧客に対して注意喚起などの適切な対応を取っていなかった。
 

(3)

 証券会社は、携帯電話番号等による顧客口座の名寄せ調査を行った結果、携帯電話番号等が同一でありながら姓や住所が異なる複数のインターネット取引専用口座を把握していたが、その顧客口座からの株式の委託注文の受託に際し、当該注文の発注者が取引の名義人になりすましている疑いがあ るにもかかわらず、本人確認を行わないまま、当該注文を受託、執行していた(本年3月28日、本人確認法違反で勧告)。
 その他の証券会社においても、同様の名寄せ調査を行い、問題と思われる口座を把握していながら、当該口座についての確認を十分行っていない状況が認められている。

 

 

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