佐藤前委員長記者会見の概要
(平成13年7月23日(月)14時15分~14時30分)


(佐藤)7月の19日で任期が切れまして、退任させて頂きました。委員、委員長の6年間皆さんにはいろいろな形でご支援、ご協力を頂きましたことを、心からお礼申し上げます。

(記者)在任期間中を振り返っての感想や印象深かったこと、新委員長にどういったことを託されるのかについて、お願いいたします。

(佐藤)私が委員長に就任したのは平成10年の7月でございましたが、そのちょうど半年後の12月から金融システム改革法が施行されまして、マーケットを巡る様々な規制が緩和されるということで、証券市場にとっては非常に大きな変革の時代でございました。例えば、証券会社が免許制から登録制になりましたし、取引所の集中義務が撤廃されたり、委託手数料が自由化されたり、銀行などの窓口でも投資信託が購入できるようになったりと、様々なことがありまして、その結果、EBなどの新商品が生まれたわけでございます。また、ここ3年間ぐらい、情報通信技術の急速な発展によりまして、インターネットを利用した証券会社が登場したり、インターネットを利用した口座が急激に増加するということがありました。さらに、この時期には証券市場のグローバル化が進みました。外国人投資家の株式保有高も高まり、外資系の証券会社の市場での存在感、プレゼンスも非常に大きくなりました。
 この3年間はこうした大きな変革に懸命に対応してきた3年間だったと感じております。その結果、若干は委員会として成果が挙げられたのではないかと思います。
 そのいくつかをご紹介しますと、ディスクロージャー違反に対する取り組みでございます。長銀ですとか日債銀、ヤクルト本社に対する告発をしております。それから、クレスベール証券に対する告発でございますが、「有価証券募集のための偽計を用いる行為」という規定を使った告発としては、初めての事案でございました。東天紅株式に係る告発ということでは、大量保有報告書の不提出、虚偽記載ということで告発いたしました。不提出に係る告発というのは2例目ですが、1例目については起訴に至っておりませんので、こうした事案で起訴に至ったというのは、本件が初めてでございます。大量保有報告書の虚偽記載ということでも、初めての告発でございます。次に、検査、勧告でございますが、外国証券会社に対する検査件数が増加しております。ただ、誤解を避けるために申し上げますが、私どもは外国証券会社だから力を入れているというわけではなく、外国証券会社の比重、市場における活動が活発になってきた結果、検査をしようという基準において、国内証券会社と外国証券会社とに同じ基準を当てはめても、外国証券会社に対する検査件数が増えてきたということであります。そうした中で、ドイチェ証券、BNPパリバ、ウエストLB、CIBC、ソシエテ・ジェネラルといったところに対して、いわゆる飛ばし類似の金融商品に係る勧告を行っております。それから、EBについても取り組んでおります。作為的な相場形成ということでは、UBS、コメルツ証券、東京三菱証券に対して勧告いたしております。重要なことについて誤解を生じせしめる行為ということでは、日本グローバル証券、新光証券に対し、勧告を行っております。南証券につきましては、初めて「有価証券の募集のための偽計を用いる行為」という規定を使いまして、勧告を行っております。和光証券に対する勧告につきましては、報告徴収を求めたところ虚偽報告をしてきたということで勧告を行っておりますが、このような事例についても、初めてでございます。国際証券に対する勧告は、検査忌避に対する初めての勧告事案でございます。インターネットに関しては、HIS協立証券に対する勧告を行っております。
 調査につきましては、相場操縦、インサイダー取引、風説の流布、その他、告発したものを含めこの3年間で18件行っております。また、260社を超える検査を行い、100社を超える勧告を行っております。また、インターネットの時代に対応した情報収集を開始いたしましたし、国際的な協力の下にインターネット・サーフ・ディを行っております。インターネットを巡回監視するシステムを開発し、稼動し始めております。今年度からは、インターネットの証券情報分析システムを開発するための予算を確保いたしました。
 人員につきまして、私ども監視委員会といたしましては、なかなか十分とは言えない中で、少しでも能力の高い人たち、専門知識や経験豊かな人たちを採用したいということで、デリバティブの専門家ですとか公認会計士の方々をこの3年間で採用し始めました。定員につきましても、人が少ないのではないかというご批判をいつも頂いておりますが、ご存知のように、この3年間というのは政府をあげて公務員の人員削減に取り組んだ時期でもあり、1人でも減らせという大合唱の中で、この委員会が発足しました時に202名でございましたが、現在265名までやっとの思いで増やしてきたわけでございます。増加率としては、31%ということでございますが、この9年間で増えました63名のうち、3分の2の41名がこの3年間で増えたものでございます。ただ、これで十分だということを申し上げる気は決してございません。マーケットの公正性、透明性の確保、一般投資家の信頼、さらに、最近では直接金融が重要であると言われている時代でございますから、より努力していかなければなりません。
 また、新委員長については、既に3年間委員会で十分に仕事をなさった方でございます。ですから、私があれこれ申し上げることもなく、十分に問題点を把握し、意識を持って取り組んでいただけるものと確信いたしております。

(記者)人員を米国並に3000人にし、司法的な機能を持たせたり、証券取引等監視委員会をいわゆる日本版SECに発展させてはどうかという意見があるが、これについてどうお考えになるか。

(佐藤)ご存知のように我が国では、米国と違いまして、証券市場に対する取り組みというのは、監視委員会だけではなく金融庁の各部門に分かれております。あるべき組織、より望ましい姿というのは常に議論していかなければならないことだと思います。小手先のことではなく、今の委員会ではだめなのか、だめならどういうところがだめなのか、どのようにしていくか、ということを徹底的に議論していかなければなりません。また、私たちが、あるべき姿がこうだよと言ったとしても、それが世の中に受け入れられなければなりません。ですから、政治家やその関係者、広くいえばマスコミの方々にもご理解頂かなければなりません。そのためには、機が熟すということも私の経験から、とても重要なことでございます。機が熟さなくても、誰かがやったらいいじゃないか、というご意見もありますが、それが1つの気運に結びついていくためには、準備、調査、立案には膨大なエネルギーがいるわけでございます。この3年間というのは、この委員会にとっては新しい変革の時代に対応するために全力をあげた3年間でございました。この小さな組織で、人員も足りない中で、そちらへエネルギーを傾けることは必ずしも十分ではなかったと思います。
 私どもとしては、今、与えられている職責を十分に果たすように、力を入れていきたいということでございます。今後、今の組織でいいのか、それともどういう組織にしていくのか、ということについては、新委員長以下の新体制で議論されるべき問題だと思います。

(記者)どうもありがとうございました。

(佐藤)どうもありがとうございました。

 

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