委員長インタビューの概要(ラジオたんぱ「兜町パワーランチ」)
放送日時:13年9月11日(火)11時00分~12時30分
聞き手:日本短波放送 倉澤良一報道解説部長


(倉澤)
監視委員会の委員長がラジオたんぱに出られるのは初めてなので、今後もこういう機会を是非作っていただきたいと思います。
 さて、監視委員会の役割は、証券市場の信頼を向上させていく上で、近年非常に大事になってきていると思います。
 まずは監視委員会の使命、業務を行っていく上での覚悟をお聞かせください。

(委員長)まず前提として我が委員会の所掌事務についてお話しします。1つ目は、犯則事件(法律違反事件)の調査・告発です。これは、証券取引等の公正を害する犯則事件の調査を行い、場合によっては検察庁に告発するというものです。2つ目は、証券会社等の検査です。これは、市場ルールが守られているかどうかという点について証券会社等に対する検査を行うというものです。3つ目は、取引審査です。これは、証券取引等に関わる資料の収集及び取引内容の審査ということであります。要するに、法違反の可能性のある取引を発見していく仕事です。4つ目は、勧告です。これに関しては、時々新聞等でご覧になることがあると思います。勧告は、検査または調査の結果に基づき、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して証券会社等に対する行政処分を求める行為であります。例えば証券会社の営業停止、外務員の資格の停止などが行われます。その他、建議があります。これは、検査または調査の結果に基づき、内閣総理大臣、金融庁長官、または財務大臣に意見を具申し、それに対する適正な措置を求めていくというものです。
 次に、監視委員会の使命についてお話しします。監視委員会は、取引の公正を図るということを究極の目的としています。それは同時に、市場に対する投資家の信頼を保持するということを目的としているものです。
 私は、市場に対する投資家の信頼を保持することが証券市場の発展、ひいては国民経済の発展につながると考えています。国民経済の適切な発展のためには、資金運用の場である証券市場が適切に機能することが重要です。また、証券市場が適切に機能し発展するためには、多数の投資家が安心して証券市場に参加できることが前提条件となります。この意味で、個々の取引の公正が十分に確保されることが必要であると考えています。
 もう少し付け加えさせていただくと、我が国の経済の再生・発展のためには、これまでの銀行システムを中心とした間接金融に加えて、証券市場を中心とした直接金融の発展が必要です。とりわけ証券市場を中心とした直接金融の場に個人投資家が積極的に参加することが必要であると考えています。先般の緊急経済対策においても、個人投資家を証券市場に呼び込むための様々な促進策が示されています。しかし、税制などの促進策とともに重要なのは、やはり投資家の証券市場に対する揺るぎない信頼を育てていくことではないかと思っております。
 こういったことから、取引の公正を図り、証券市場に対する投資家の信頼を得るために働くことが監視委員会の使命だと考えています。

(倉澤) 委員長はよく『3つの不信』とおっしゃいますが、それを取り除くのも一つの役目だと思われますか?

(委員長) 当然です。今言ったような監視委員会の使命を果たすという立場から証券市場の現状を分析してきましたが、そんな中で、『3つの不信』が存在していると考えるに至りました。
 『3つの不信』の1つ目は、市場仲介者に対する不信です。個人投資家の中には、証券会社やその職員、役員に対する根強い不信があるように思われます。証券会社は投資家と市場をつなぐ市場の仲介者として証券市場において極めて重要な役割を担っています。市場仲介者に対する信頼感がなければ個人投資家が証券市場に参加することはないと思います。しかし、残念ながら、証券会社やその役員・職員による法令違反行為は後を絶ちません。何十年にもわたって同じような違反行為が繰り返されています。これが現状です。
 2つ目は、市場参加者に対する不信です。一部の市場参加者、つまり仕手筋といわれる勢力や海外ファンドに代表される外国勢力等のマーケットのプロに市場が操られていて、素人の自分が投資してもそういう勢力にうまく利用されてしまうのではないかという不信感があります。更には、企業の役員など一般の人が知らない情報を持っている者だけが、不当に利益を得ているのではないかという不信感もあるように思います。
 3つ目は、監視当局への不信です。監視委員会は平成4年に設立され、これまでに合計36件の刑事告発、188件の勧告を行ってきています。その一方で監視委員会の人数やノウハウの不足により、不正を見逃しているのではないかという不信感や、社会的問題となっている事案に迅速に対応できていないのではないかという不信感があることも事実であると考えております。
 こうした3つの不信感があり、これを払拭していくのが我々の仕事です。

(倉澤)個人投資家保護の立場を強く感じますが、その具体的な行動、目標というのはどういったところにあるのでしょうか?

(委員長) 委員会では『3つの不信』を払拭するためのいわば戦略目標をいろいろ考えてみました。
 1つ目は、悪質な証券会社の徹底摘発です。検査などを通じて、個人投資家の利益を犠牲にして自らの利益をあげるような証券会社やその役員、職員など、悪質な仲介業者の徹底的な摘発を図ります。証券会社の中には、法令上の義務等を守る意識の著しく低いところや、十分な内部管理体制をとっていないところがあります。そういった証券会社については、検査などで厳しく問題点を指摘し、必要な処分をしていきたいと思っています。
 2つ目は、市場の公正性を損ねる証券犯罪の一掃を考えております。特に相場操縦については、価格の形成という市場の持つ最も重要な機能そのものを破壊する悪質な行為であり、極めて厳正に対処していきます。いわゆる仕手筋による大規模な相場操縦はかなり難しい問題を含んでいますが、人員の重点配置などにより積極的な摘発をしていきたいと考えています。
 3つ目は、監視委員会のプレゼンスの向上です。この点からは、単に不正行為の摘発実績をあげる、つまり件数をあげるというだけでなく、個人投資家のニーズや社会的関心に的確に応えるタイムリーな摘発を迅速に行うということを考えております。

(倉澤)そういった意味では、個人投資家との連携というのが非常に大切なように思われます。個人投資家からの情報を監視委員会としては望んでいらっしゃるようですが、個人投資家との連携についてはどう考えておられるでしょうか?

(委員長) 証券市場の公正を害するような行為は、潜在的には極めて多いと私は思っております。ただ、我々がそのすべてを捕捉することは大変難しい。一方、現に取引を行っている個人投資家の方は、このような行為の情報に接することが非常に多いのではないかと思われます。我々の使命を達成するために、是非個人投資家の方々に情報提供をお願いしたいと思っています。
 個人投資家からの情報は、電話とか、文書、インターネット、または役所に来ていただくなどによって寄せられています。特に平成11年4月にインターネットによる情報受付を開始してからは、急激に増加しています。平成12年7月~平成13年6月までで1356件の情報をいただいきました。これは、監視委員会の発足以来初めて千件を上回る情報をいただいたということになります。大変ありがたいことです。

(倉澤)最後に個人投資家へのメッセージはありますか。

(委員長) 私は今申し上げたような考えのもとに職務を遂行していきたいと思っています。ただ、監視委員会の活動はあくまでも事後的な監視活動でありますので、仮に個人投資家の方が違法行為に巻き込まれて被害にあっても、委員会では個別的な被害救済はできません。また、我々がすべての違法行為を摘発するということも現実的には不可能です。従って、不正行為に巻き込まれないためには、個人投資家の方々にはやはり勉強していただかなければなりません。例えば、株式投資や証券市場の特性などについて十分に学習・理解していただきたいと思います。そのためには出版物を読むということも必要でしょうし、証券市場における会社の説明、あるいは証券外務員の方々の説明を十分に聞いて理解をして、その上で証券取引を行っていただきたいと思います。とにかく証券取引はこのように自己責任のもとで行われるのが重要であります。まだまだ日本の個人投資家は自己責任の面については十分なものがないのではないでしょうか。
 例えば、ある証券について、証券会社の説明を鵜呑みにしてすべていいことばかりだというような発想によって証券取引を行うということであります。ですが、ハイリスク・ハイリターンという言葉があるように、利益を生じるところにはリスクがあるものです。そういったことを十分に判断した上で、賢い投資家として行動していただきたいと思います。

(倉澤)ありがとうございました。

(以上)

 

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