佐渡新証券取引等監視委員会委員長交代記者会見の概要

(平成19年7月20日(金)15時25分~15時45分 場所:金融庁会見室)


【佐渡新委員長より発言】

委員長に就任した佐渡賢一です。よろしくお願いします。就任に当たり当委員会に課せられた責任の重さを痛感し、改めて身の引き締まる思いにあり、大層緊張しておりますが、若干の抱負を述べさせていただきます。当委員会の目的役割は、監視という権限権能によって市場の公正を確保し、市場に対する投資者の信頼を保持することにあります。当委員会は発足以来、調査・検査を通じ着実に実績を積み重ね、その役割を果たしてきたのであり、確固たる組織に育て上げてきた先輩諸氏のご努力に、まず敬意を表します。さて当委員会の抱えた現状を見ますと、まさにさらなる飛躍が期待される重要な時期と実感しております。市場の一層の拡大が望まれる中、取引や金融商品の多様化・複雑化・グローバル化が進み、投資者の保護は最も重要な課題です。そのためには市場の公正を確保し、透明性を高めることが何よりも必要であります。近時、当委員会の監視機能を強化実効在らしめる改革がなされ、課徴金調査、開示検査などの新たな権限が付与され、また種々の困難の中で組織の拡大拡充も図られております。本格施行が目前に迫る金融商品取引法において、監視対象等はさらに拡大されます。これらの改革は、当委員会に寄せる期待の大きさを示すものであり、我々はしっかりこれを受け止め、日々の実践をもってこれら期待に応えていかなければなりません。市場の動向を的確に把握し、情報収集・分析能力を高め、職務に忠実で、誇りある専門家集団でありたいと願っています。また監視に万全を期し、大きな成果を挙げるためには、関係当局や自主規制機関等との連携強化が欠かせません。他機関と緊密な協力関係を築きたいと考えております。そして端的にいえば、当委員会は市場の公正を汚す不心得者には怖い存在であり、一般の投資家には心強い存在でありたいと望むものであります。今後、各委員、事務局と一丸となって、公正・透明で信頼される市場の構築に向けてまい進したいと決意しております。簡単ではありますが、以上抱負を述べさせていただきました。

【質疑応答】

問)抱負の中での言葉と重なる部分もありますけれども、委員会が求められる役割の中で特に重要とお考えになられる点いくつか教えてください。

答)執務に当たっての基本的な心構えを今述べたとおりでありますけれども、具体的な施策・方針等については就任したばかりでありますので、各委員や事務局とよく相談し認識を一致させて事にあたりたいと考えております。

問)検事時代に著名事件を手がけられていらっしゃいますが、特に証券犯罪に携わった経験について教えてください。

答)いくつかありますけれども、まず思い出にあるのは当委員会が発足する前ですが、当時仕手筋として活発に活動していた被告人が、上場株式を大量に買い占めて経営参画し、その後会社財産を売り払ったり、買い占めた株式を市場内で株価を高値操作し、市場外で経営陣に高値買取を迫り、暴力団の関与もあるなどの複雑な事件がありました。

これは、各社に与えた影響が非常に大きく、刑事事件が決着した後も、一部ではつい最近まで株主代表訴訟で経営陣の責任が争われ、ようやく最高裁の判断が下されました。当時は売買手口から捜査しなければならない時代でした。現在はこのような分野は、当委員会が即座に解明することができるでしょう。この種の事件捜査は様変わりしていると思っております。

当委員会の告発事件では、東京地検次席検事や大阪地検検事正として、相当数の処理に当たりました。特に大阪地検では、当委員会から告発された森本組、メディアリンクス等の事件が大型の詐欺横領事件に発展し、関係者に厳しい判決が出されました。また、大阪証券取引所の相場操縦事件の公判対策等に当たったことが思い出されます。

問)他機関との連携ですが、特に検察、警察との連携について今後の方針はありますか。

答)犯則調査事件の最近の状況を私なりに考えていることを申し上げますと、

近年当委員会が告発する事件は、大型で複雑困難な案件が多く、積極果敢に取り組んでいると思いますが、中でも東京地検と協同で強制調査し、告発にいたったライブドア、村上ファンドにかかる事件は非常に印象深い、将来を見据え参考になるものであろうと思います。本件はいずれも裁判継続中ですが、共に第一審の東京地裁では実刑という厳しい判決がだされ、市場の公正を汚すことがいかに重大な犯罪であるか、改めて広く認識させたもので極めて意義の深いものと考えております。

証券取引法違反事件はこれまでのところほぼ東京、大阪地区に限られていましたが、近年、札幌、秋田、釧路等の地域的な広がりを見せております。また私の経験に照らして述べますと、犯罪収益が市場を利用してマネーロンダリングされることを大層危惧しております。従来捜査機関との協同調査は、ほぼ検察に限られていましたが、最近株価操縦などを大阪府警と協同して強制調査し、成功裏に終えたという案件もありました。このように犯則調査の分野に新しい動きがありますので、そういう動きを的確に捉えて対処していきたいと考えております。

問)座右の銘、ご趣味、東京での今後の生活をどう過ごしていくか教えていただきたい。

答)座右の銘は特にないです。これまでの検察での仕事と同じく、当委員会の仕事も目的ははっきりしておりますので、その仕事に打ち込む、一生懸命やりたいと考えております。

転勤先の京都に今家族が住んでおりますので、単身赴任を続けるということになります。

趣味は秋田地検の検事正以来、白神山脈の美しさに引かれて、山登りを暇を見つけて行っております。それぞれの転勤先の地域の山を登る、それが最近の最大の趣味です。

問)検事時代の実績経験を今回どう活かしていきたいですか。

答)個々の現場の仕事の状況をまだよく理解しておりませんが、基本的な仕事のあり方は同じだろうと思っております。事案を早期に見極めて着手し処理していく、そのための努力をしていくことだと思っております。

問)勤務先が東京になるのが久しぶりということですが、東京に久しぶりに戻ってきて感じたこと、マーケットについて現状どのように意識されているか。

答)久しぶりの東京で、テンポについていけていない。人の歩く早さにびっくりしています。

次席検事時代はちょうどバブルが崩壊した後の、決着をつけるような事件がおきていた時期で、これにひと段落して少し元気になってきてるのかな、という印象を受けています。その先頭をきっているのが証券市場なんだろうなと思います。

問)証券犯罪のグローバル化について。

答)証券市場のグローバル化に伴い、国内市場の公正性確保の上で国際的な協力と連携の強化がこれまで以上に重要な課題になっていると認識しています。

特に外国に居住する者が、わが国証券市場において証券取引を行う、クロスボーダー取引を悪用して不公正な取引が行われると、現状では当委員会が外国居住者を直接調査できないため、そのまま見過ごすということになりますと、監視の空白を招き、悪質者を跋扈させかねないことになります。そこで、その者が居住する海外証券規制当局との連携を強化し、その協力を得て相手国で悪質者をきちんと処分してもらうことで監視の空白を埋めていく必要があります。これは極めて現実的な問題です。当委員会ではシンガポール、英国、香港の証券規制当局との間で、この種の案件をすでに3件成功裏に導いております。今後ともこうした連携を一層強化していかなければならない、そう考えております。

問)出身について。

答)北海道の旭川市です。

問)警察との連携強化の中で暴力団犯罪というのが証券市場に流れ込んでいるが、警察との日ごろの連携については考えていますか。

答)そういう事案の発生が見込まれて現に行われつつあるわけで、そういう経験を生かして、関係の強化を考えたいと思っております。

(以 上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る