証券取引等監視委員会メ-ルマガジン (第35号) 平成25年10月1日
証券監視委ウェブサイト http://www.fsa.go.jp/sesc/index.htm

<目次>

1.市場へのメッセージ

2.コラム


1.市場へのメッセージ


◆With Asset Management(株)に対する検査結果に基づく勧告について◆

証券監視委は、With Asset Management(株)(第二種金融商品取引業者)を検査した結果、金融商品取引法に違反する以下の事実が認められたことから、8月2日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して行政処分を求める勧告を行いました。

(1) ファンドの多くについて運用が適切でないと認識しながら行う勧誘行為等

当社は、平成20年4月に金融商品取引法に基づく第二種金融商品取引業の登録を受け、平成21年11月から今回検査基準日(平成25年4月)までの間、当社等を営業者とする計30種類の匿名組合契約(ファンド)に基づく権利の持分の取得勧誘を行いました。本件ファンドの多くにおいて、顧客の投資資金は(株)Infinity Holdings(IH社)に対して金銭貸付けを行うことで運用することとされていました。当社とIH社は、平成24年6月までは、資本関係上、IH社が当社を支配する関係にあり、また、同年7月以降も継続して、当社が運営するファンドの資金管理をIH社が行っているほか、IH社の代表取締役が当社営業員に対し営業推進に係る指示を出しているなど、当社は、IH社に従属しており、両社が一体となってファンド関連の業務を行う状況が継続していると認められました。

こうした中、当社は、本件ファンドの多くについて、顧客の投資資金をIH社への金銭貸付けによる運用の形式を採ってIH社に提供していましたが、IH社は、その資金を貸金業の登録を受けることなく、反復継続して多数の企業及び個人に対し金銭貸付けを行うことにより運用していました(無登録貸金業(貸金業法第11条))。しかしながら、当社は、IH社に従属する状態であったため、IH社への金銭貸付けについて適切な債権管理を一切せず、さらに、IH社が貸金業の登録を受けていないと認識していたにもかかわらず、IH社に資金を提供するため、本件ファンドの取得勧誘を漫然と継続していました。このような当社の状況は、第二種金融商品取引業のファンド販売の形式を利用して、実質的には、IH社の無登録貸金業の資金調達を行う機能を果たしていたものと認められました。

また、当社の営業員は、IH社の投資先である会社の社債について、第一種金融商品取引業者の登録のないIH社の代表取締役からの指示により、複数の既存顧客に対して勧誘し、取得させていました。当社営業員による社債の私募又は募集の取扱いは、無登録で金融商品取引業を行っている状況であり金融商品取引法違反に該当しますが、当社においては、営業員による不正行為が漫然と見過ごされているという、従業員管理態勢が不十分な状況にありました。

当社のこのような状況は、金融商品取引法第52条第1項第9号(金融商品取引業に関し、不正又は著しく不当な行為をした場合において、その情状が特に重いとき)に該当するものと認められました。

(2) ファンド持分の取得勧誘に関して、顧客に対し、虚偽のことを告げる行為

さらに、当社営業員は、実際の運用実績を上回る虚偽の運用実績を記載した運用報告書を使用し、勧誘を実施しており、当該行為は、金融商品取引法第38条第1号(金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為)に該当するものと認められました。

なお、当社に対しては、関東財務局より8月8日、今回の検査結果を踏まえた行政処分(登録取消し・業務改善命令)が行われたほか、IH社に対する無登録貸金業に係る警告書及びIH社の代表取締役に対する無登録金融商品取引業に係る警告書が発出されています。

証券監視委は、こうした投資者保護上問題がある不適切な業務に関する問題を含む検証をするため、第二種金融商品取引業者に対し継続的に検査を実施してまいります。

◆「取引調査に関する基本指針」及び「開示検査に関する基本指針」の公表について◆

証券監視委では、平成17年4月に課徴金制度が導入されて以降、金融商品取引法上の権限に基づき、風説の流布・偽計、相場操縦及び内部者取引といった不公正取引に対する取引調査や、有価証券報告書をはじめとする各種開示書類の提出者等に対する開示検査を行ってきています。取引調査・開示検査の結果、金融商品取引法に違反する行為が認められた場合には、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して課徴金納付命令等を行うことを勧告しており、こうした活動を通じて、市場の公正性・透明性の確保及び投資者保護の実現に努めてきています。また、証券監視委が行った勧告については、証券監視委のウェブサイトや年次報告書、課徴金事例集において公表してきているところです。

こうした中、課徴金制度が導入されてから8年が経過し、取引調査・開示検査の実務が定着してきたことを踏まえ、調査・検査手続の透明性を高めることを狙いとして、取引調査・開示検査の基本的な考え方や標準的な実施手続等を公表することとしました。具体的には、証券監視委は、平成25年6月26日から同年7月25日までの間、「取引調査に関する基本指針(案)」及び「開示検査に関する基本指針(案)」について、広く意見の募集を行い、平成25年8月30日、「取引調査に関する基本指針」及び「開示検査に関する基本指針」を公表しました。これらの基本指針は、それぞれ平成25年8月30日から適用されております。

証券監視委は、引き続き、市場の公正性・透明性の確保及び投資者保護の観点から、本指針に基づき、適正な取引調査・開示検査の実施に努めていく所存です。


2.コラム
[日本証券業協会からの寄稿]


◆「JSDAキャピタルマーケットフォーラム」(第1回)を開催いたしました◆

本協会では、本年5月、我が国資本市場の発展を担う研究者の育成、知識の蓄積のため、若手の研究者(法学・経済学・会計学)を中心に、学識経験者(大学教授、弁護士、民間研究機関の研究者など)や協会員の実務家との研究・交流の場として「JSDAキャピタルマーケットフォーラム」を設置いたしました。

本フォーラムは毎年数回開催し、本年度から5年間継続する予定です。

本フォーラムの第1回会合が去る9月10日(火)に開催されました。当日は、今後の本フォーラムの進め方についてフリーディスカッション形式で議論が行われました。

議論の中では、(1)「証券会社等に対して聞きたいこと」、「本フォーラムに期待すること」として、若手の研究者からの証券市場や証券実務に関しての質問や本フォーラムで実施したいことなどが、(2)「今後研究が望まれるテーマ」として、実務家側として研究が望まれるテーマ・課題などがそれぞれ報告され、それらについて意見交換が行われました。

また、若手の研究者から「資本市場に関して興味のある事項」、「今後取り組みたい研究テーマ」などについてそれぞれ報告があり、それらについても意見交換が行われました。

本協会では、毎回のフォーラムの模様をホームページなどで情報発信するとともに、今後の研究成果としてのレポートなども公表していく予定です(10月中を目途に本協会のホームページ内に専用ページを開設する予定です)

本件に関するお問い合わせ先:日本証券業協会自主規制企画部

(TEL 03-3667-8470)


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