証券取引等監視委員会メ-ルマガジン (第61号) 平成27年12月1日
証券監視委ウェブサイト http://www.fsa.go.jp/sesc/index.htm

<目次>

1.市場へのメッセージ

2.コラム


1.市場へのメッセージ


◆開示規制違反に係る課徴金事例集について◆

証券監視委は、本年8月28日「金融商品取引法における課徴金事例集~開示規制違反編~」を公表しました。今回は、本事例集の主な内容を紹介したいと思います。

  • 1.課徴金納付命令勧告の傾向

    • (1)総論

      証券監視委は、平成17年4月に課徴金制度が開始されて以降本年6月末までの間に、開示規制違反等について89件、課徴金額合計で82億8,730万9,979円の課徴金納付命令勧告(以下「勧告」という)を行っています。件数の内訳は「開示書類の虚偽記載」に対するものが85件、「開示書類の不提出」に対するものが3件、「公開買付開始公告の不実施」に対するものが1件となっています。

      平成26年度においては、開示書類の虚偽記載に対して8件、計6億464万円の勧告を行いました。

    • (2)違反行為者(発行者である会社)の市場別分類

      開示書類の虚偽記載について、違反行為者を市場別にみると、本則市場45件に対して、新興市場47件となっています。本則市場の上場会社数は、新興市場の上場会社数の約3倍であることを踏まえると、新興市場における勧告率が相当に高いと言えます。事案の背景は様々ですが、一般に、新興市場では会社規模が小さく、意思決定権限や事務分担が特定の役職員に集中する傾向があり、また、特定部門における不正が会社全体の財務に大きな影響を与えやすいことが、その背景の1つとして指摘されます。

      平成26年度は、勧告を行った8件のうち7件が発行者である会社に対する勧告であり、そのうち6件が新興市場の上場会社でしたが、これらの上場会社では、事業拡大を優先したことや、経営者のコンプライアンス意識の欠如、取締役会の機能不全等に起因して、不適正な会計処理が行われていました。

    • (3)違反行為者の業種別分類

      違反行為者の業種別にみると、情報・通信業(19件)、サービス業(14件)、卸売業(11件)において、勧告件数が多くなっています。

      特に、情報・通信業では、上場会社の業種別構成割合(約10%)に比べて、違反行為者の業種別割合(約24%)が高くなっており、ソフトウェア等の無形固定資産が、不適正な会計処理に利用される事例がみられました。無形固定資産は、一般的に、資産の状況を目で見て確認することが出来ないことや資産計上額に将来予測の要素が多く含まれること、劣化が早く一度に多額の損失が発生しやすいことといった特徴があり、不適正な会計処理に利用されやすい勘定科目であると言えます。

      なお、平成26年度における勧告件数は、情報・通信業(2件)、不動産業(2件)、卸売業(1件)等となっています。その態様をみると、実際には開発が行われていないソフトウェアを資産として計上していた事案や、ソフトウェア取引における工事進行基準に基づく売上の前倒し計上が行われていた事案等、ソフトウェアに関するものが3件ありました。

    • (4)違反行為の科目別分類

      違反行為の科目別の内訳では、特別損失又は特別利益(25件)、資産(23件)、売上高(21件)において、勧告件数が多くなっています。

      平成26年度においては、売上高で4件、資産の科目で2件、特別損失及び純資産の科目でそれぞれ1件の勧告を行っています。最も件数の多かった売上高では、販売先に資金を還流させて、その分を販売代金に上乗せすることにより売上を過大計上する事案等がありました。

      さらに、有価証券報告書等の記述部分に関する虚偽記載についても勧告を行っています。本事案は、新興市場から本則市場への指定換え等の要件である流動性基準を満たすため、当社の大株主である当社役員の所有株式数及び発行済株式総数に対する所有株式数の割合を過少に記載したという事案でした。

      証券監視委としては、有価証券報告書等の記述部分についても、投資判断にとって重要な事項であり、適正な開示が行われることが必要であると考えています。

  • 2.おわりに

    本事例集は、適正な開示に向けた市場関係者の自主的な取組を促す観点から、開示検査で確認された不適正な会計処理の傾向や個別事案の概要を取りまとめたものです。本稿では、個別事例の詳細については紹介できませんでしたが、事例集においては、事例毎に、イメージ図を載せるほか、できるだけ不適正な会計処理等が行われた原因・背景を記載するなど事案の全体像について理解しやすい記載に努めました。本事例集については、証券監視委のウェブサイト( http://www.fsa.go.jp/sesc/jirei/kaiji/20150828.htm )に掲載しておりますので、企業関係者や会計監査人の方々におかれましては、本事例集の具体的事例を参考とし、適正なディスクロージャーの確保に向けご尽力いただきたく存じます。また、投資家、とりわけ機関投資家の方々におかれましては、投資判断や投資先企業との建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)を行う際などにも、本事例集を参考にしていただければ幸いです。

    証券監視委は、引き続き、上場企業等が虚偽記載等を行った場合には厳正に対応するとともに、当該企業が自律的かつ迅速に正しい企業情報を市場に提供するよう企業自身の取組を促すほか、虚偽記載等の原因となった内部管理上の問題も指摘し、改善を求めるなど、関係者への働きかけを強化してまいりたいと考えています。


2.コラム

[日本証券業協会からの寄稿]


◆本協会の協会員に対する監査結果について◆

今般、平成27年度上半期の協会員に対する監査結果を取りまとめました。

平成27年度上半期の監査は、金融商品の説明及び勧誘状況の検証等を重点項目に掲げ、会員(証券会社)40社、特別会員(銀行等)23機関に対して監査を実施し、会員36社、特別会員19機関に対し監査結果を通知いたしました。

監査結果について簡単にご紹介しますと、会員においては、法令違反として自己資本規制比率の算出誤りや、有価証券の「実売り」に係る管理方法の確認義務に関する不備が認められたほか、協会規則違反として個人情報の管理に係る不備が認められました。また、特別会員においては、法令違反として金融商品事故に係る未届出が認められたほか、協会規則違反として役職員による有価証券の売買等に係る管理不備が認められております。

なお、法令・諸規則違反等の指摘に、重大な違反は認められておりません。

平成27年度下半期の監査におきましても、引き続き、金融商品の投資勧誘・販売態勢の検証等を重点事項に掲げ監査を実施することとしています。

  • 詳細の内容につきましては、本協会ホームページにおける『協会員への監査について』をご確認ください。

    http://www.jsda.or.jp/katsudou/kansa/index.html新しいウィンドウで開きます

  • 本件に関するお問い合わせ先:日本証券業協会 監査1部

    (TEL 03-3667-8455)


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