証券取引等監視委員会メ-ルマガジン (第88号) 平成29年2月20日
証券監視委ウェブサイト http://www.fsa.go.jp/sesc/index.htm

<目次>

1)市場へのメッセージ

最近の取引調査に基づく勧告について

2)コラム

上場会社における不祥事対応のプリンシプルについて[日本取引所自主規制法人からの寄稿]

第1期「JSDAキャピタルマーケットフォーラム」の研究委員による研究論文を公表いたしました[日本証券業協会からの寄稿]

3,000社以上の上場会社がJ-IRISS(ジェイ・アイリス)に登録しています[日本証券業協会からの寄稿]


1)市場へのメッセージ


◆ 最近の取引調査に基づく勧告について ◆

証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、取引調査の結果に基づいて、以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。

  • H29.1.31
IGポート株式に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について
http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20170131-1.htm

【事案の概要】

本件は、インターネットで株取引を行っていた個人投資家が、IGポート株式の売買を誘引する目的をもって、直前の約定値より高指値の自己の売り注文に自己の買い注文を対当させて株価を引き上げ(以下、「対当売買」といいます。)たり、直前の約定値より高指値の買い注文を連続して発注して株価を引き上げる(以下「買い上がり買付け」といいます。)などの方法により、同株式を買い付ける一方、同株式を売り付け、同株式の売買が繁盛であると誤解させ、かつ、同株式の相場を変動させるべき一連の売買をしたという事案です。

【事案の特色等】

昨年9月27日勧告のテクノホライゾン・ホールディングス株式外2銘柄に係る相場操縦事案や昨年11月22日勧告のクロス・マーケティンググループ株式外1銘柄に係る相場操縦事案と同様に、本件も個人投資家による相場操縦事案です。

本件課徴金納付命令対象者(以下「対象者」といいます。)は、現物取引と信用取引を併用し、複数の証券会社を介して、対当売買や買い上がり買付けなどを行っています。本件取引以前より受託証券会社から注意を受けていますが、対象者は自身の取引手法はそれほど悪質なものではないと勝手に解釈し、同じような取引を続けました。そして、最終的に新規取引を停止されても、別の証券会社の口座を利用し、同様の取引手法を繰り返しており、悪質性が高いものと考えています。

対象者は、対当売買が受託証券会社に発覚することを避けるために、売り注文と買い注文を異なる証券会社から発注していましたが、複数の証券会社を用いた対当売買であっても、日本取引所自主規制法人が行っている売買審査や証券監視委の審査・調査によって、誰がそうした取引を行っているのかは容易に判明し、そのような違法行為は必ず発覚します。証券監視委では、こうした相場操縦行為に対して、引き続き関係機関と連携のうえ、厳正に対処してまいります。

証券監視委は、これまでにも相場操縦規制違反について多数の告発・勧告を行ってきたところですが、相場操縦規制違反は後を絶たない状況にあり、その要因・背景としては以下のようなものが考えられます。

  • インターネット取引の普及及び発注システムの進歩等により、個人投資家であっても、迅速かつ大量の発注・取消が可能となっているため、見せ玉等の手法を用いて人為的に相場を変動させれば、容易に売買差益を稼げる、又は損失回避を図ることができるとの誘惑

  • 市場では膨大な取引が行われているため、個人が行う小規模の相場操縦行為までは市場監視の目も届かないだろうとの誤解

相場操縦行為は証券市場の公正性・健全性を損なうものであり、証券監視委は、証券市場に対する投資家の信頼を確保するため、厳正な調査を実施しており、調査の結果、法令違反が認められた場合には、課徴金勧告や刑事告発を行っています。

本件が広く周知されることにより、相場操縦の抑止効果が発揮されることを期待しています。


2)コラム


上場会社における不祥事対応のプリンシプルについて[日本取引所自主規制法人からの寄稿]

日本取引所自主規制法人は、2016年2月24日に「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」を公表しています。

本プリンシプルは、不祥事の発生した上場会社において、ステークホルダーからの信頼回復を図りつつ企業価値の再生を確かなものとするために、当該上場会社に期待される対応や行動に関する原則を整理したものです。

公表から一年近くとなりますが、「不祥事」が発生してしまった場合の企業価値の確かな回復、ひいては資本市場全体の信頼確保に資するべく、改めて本プリンシプルの趣旨をご説明いたします。

※本プリンシプルの詳細は、当社グループウェブサイトをご参照ください。

http://www.jpx.co.jp/regulation/listing/principle/index.html新しいウィンドウで開きます )。

本プリンシプルは、上場会社が自社に関わる不祥事を把握した段階から再発防止策を実施する段階までにおいて、個別具体的な判断のよりどころとすべき以下の4つの原則から構成されます。

原則1 不祥事の根本的な原因の解明

原則2 第三者委員会を設置する場合における独立性・中立性・専門性の確保

原則3 実効性の高い再発防止策の策定と迅速な実行

原則4 迅速かつ的確な情報開示

原則1では、調査により「根本的な原因の解明」に努める必要性を強調しています。不祥事対応の最終的な目的は実効性の高い再発防止策を実施することにあり、そのためには、不祥事の表面的な現象等を捉えるにとどまらず、根本的な原因まで解明することが重要となります。具体的には、不祥事の原因分析において、不祥事に直接関連する特定の業務プロセスや個々人の知識・認識の問題のみに着目するのではなく、それらの背後に当該会社の組織体制や業務管理体制、あるいはガバナンス上の問題点がないかどうかまで踏み込む必要があります。それと同時に、最適な調査体制の構築(社内者による調査か、社外専門家による調査かなど)、適切な調査環境の整備も重要となります。

原則2は、原則1にある「調査体制」に関連して、第三者委員会を設置する場合においては独立性・中立性・専門性の確保が特に重要であることを示すものです。「第三者委員会」の名を冠しながら実態としては独立性・中立性・専門性が確保されていなかったり、仮に不十分な調査であったとしても「第三者委員会が調査した」ことのみを大義名分として上場会社として十分な対応を行わなかったりすることのないよう、適切な対応を求めています。

原則3では、調査により解明された根本的な原因に即した実効性の高い再発防止策を策定し、迅速かつ着実に実行することを求めています。再発防止策が実効性を持つためには、組織の変更や社内規則の改訂等にとどまらず、再発防止策の本旨が日々の業務運営等に具体的に反映されることが重要であり、再発防止策がその目的に沿って運用され、定着しているかを十分に検証することを求めています。

原則4では、情報開示を迅速かつ的確に行い、透明性の確保に努めるよう求めています。不祥事の内容やその時点の状況、投資者の投資判断への影響を個別具体的に判断し、迅速性と的確性のバランスを踏まえつつ、不祥事の内容やその軽重、各時点における情報の確度等をもとにして、開示の必要性、時期及び内容を判断することになります。

当法人としては、本プリンシプルが多様な関係者に広く受け入れられ、不祥事に直面した上場会社の速やかな信頼回復と確かな企業価値再生が図られることを強く期待しています。

日本取引所自主規制法人 上場管理部


第1期「JSDAキャピタルマーケットフォーラム」の研究委員による研究論文を公表いたしました[日本証券業協会からの寄稿]

第1期「JSDAキャピタルマーケットフォーラム」の研究委員(7名)より、研究成果として研究論文を御提出いただきました。

研究論文を御提出いただいた研究委員と研究テーマはそれぞれ次のとおりです。

東京工業大学工学院 経営工学系教授 井上 光太郎 他

テーマ:「株式非公開化取引における株主保護制度の効果に関する国際比較研究」

一橋大学 経済研究所教授 祝迫 得夫

テーマ:「日本における高頻度取引(High Frequency Trading)の現状について」

オーストラリア国立大学クロフォード公共政策大学院 准教授 沖本 竜義 他

テーマ:「東アジア株式市場の関連性の変遷 ~ 平滑推移相関モデルによる長期トレンド分析 ~」

神戸大学大学院 経営学研究科教授 音川 和久 他

テーマ:「決算発表時刻と株価反応 - 日中取引データを用いた実証分析 -」

同志社大学 法学部准教授 白井 正和

テーマ:「会社の非上場化の場面における取締役の義務」

東京大学大学院 法学政治学研究科教授 藤田 友敬

テーマ:「相場操縦規制の基礎理論」

学習院大学 法学部法学科教授 松元 暢子

テーマ:「非営利組織の資産の運用に関するルール - 大学の基金(endowment fund)を中心として -」

上記7名による研究論文については、本協会のホームページ内の専用ページに掲載していますので、ご覧ください。

http://www.jsda.or.jp/katsudou/kaigi/chousa/JCMF/20160916174151.html新しいウィンドウで開きます

本件に関するお問い合わせ先:日本証券業協会自主規制企画部

(TEL 03-3667-8470)


3,000社以上の上場会社がJ-IRISS(ジェイ・アイリス)に登録しています[日本証券業協会からの寄稿]

J-IRISS(ジェイ・アイリス:Japan-Insider Registration & Identification Support System)とは、不公正取引等の防止及び市場の透明性・公正性の維持の観点から、証券取引所の全面的な協力の下、日本証券業協会が運営する上場会社の役員等のデータベースシステムです。

上場会社から役員等の情報をあらかじめJ-IRISSに登録していただくことで、証券会社は自社の顧客情報をJ-IRISSに照合し、顧客のうち上場会社の役員等に該当する者を把握することができます。照合結果を踏まえ、証券会社において顧客の情報を整備し、上場会社の役員等が自社株式を売買するときに「インサイダー取引ではないこと」の確認を実施することで、インサイダー取引を未然に防止しております。

日本証券業協会及び全国の証券取引所は、共同してJ-IRISSへの登録促進に取り組んでいます。その結果、多くの上場会社にご協力をいただき、本年1月31日現在、全上場会社3,653社のうち3,042社に登録いただいており、その登録割合は83.27%です。残り611社(16.73%)の上場会社に対し、引き続き、登録のための働きかけを実施してまいります。

J-IRISSの詳細については、日本証券業協会のホームページをご覧ください。

http://www.jsda.or.jp/katsudou/j-iriss/index.html新しいウィンドウで開きます

本件に関するお問い合わせ先:日本証券業協会自主規制企画部J-IRISS推進室

(TEL 03-3667-8470)


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«発行»

証券取引等監視委員会 事務局総務課

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電話番号:03-3506-6000(代表)

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