証券取引等監視委員会メ-ルマガジン (第96号)

平成29年5月12日
証券監視委ウェブサイト http://www.fsa.go.jp/sesc/index.htm


<目次>

1.新着情報
2.市場へのメッセージ
(1)ファンドクリエーション・アール・エム株式会社に対する検査結果及び勧告について
(2)アーツ証券株式会社ほかによる診療報酬債権等流動化債券(レセプト債)に係る偽計事件の告発について
3.コラム
 日本取引所自主規制法人からの寄稿 「人工知能技術の売買審査業務への適用について」


1.新着情報



◎アセットプランニング株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20170512-1.htm


2.市場へのメッセージ
(1)ファンドクリエーション・アール・エム株式会社に対する検査結果及び勧告について
(2)アーツ証券株式会社ほかによる診療報酬債権等流動化債券(レセプト債)に係る偽計事件の告発について


(1) ファンドクリエーション・アール・エム株式会社に対する検査結果及び勧告について

 証券取引等監視委員会(以下、「証券監視委」といいます。)は、ファンドクリエーション・アール・エム株式会社(投資運用業、以下「当社」といいます。)を検査した結果、平成29年3月29日、金融庁に対して行政処分を行うよう勧告いたしました(詳細は下記リンク参照)。

ファンドクリエーション・アール・エム株式会社に対する検査結果及び勧告について
http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20170329-1.htm

【事案の概要等】
 当社は、株式会社ファンドクリエーショングループを持株会社とする会社グループ(以下「FCグループ」といいます。)に属しており、当社を含むFCグループ内の各社が連携してA不動産投資信託の運用・管理を行っていました。
 本件は、当社が行ったA不動産投資信託の運用業務において、FCグループ内他社への運用財産の売却、すなわち利害関係者間での取引に関して利益相反管理が適切に行われていないなど、不適切な業務運営が行われていたものです。
 投資運用業者については、忠実義務等を負っているのはもちろんのこと、顧客本位の業務運営を行い顧客資産の適切な運用が期待されているところですが、本件は、グループに所属する投資運用業者について、グループ内における独立性の確保や利益相反の管理など、管理態勢の適切な構築が重要であることを改めて認識させられるものとなっています。


(2)アーツ証券株式会社ほかによる診療報酬債権等流動化債券(レセプト債)に係る偽計事件の告発について

 証券監視委は、平成29年3月6日(告発①)及び3月27日(告発②)、金融商品取引法違反(偽計)の嫌疑で、犯則嫌疑法人2社及び犯則嫌疑者3名を千葉地方検察庁に告発しました。

 本件は、犯則嫌疑者らが、共謀の上、診療報酬債権等流動化債券(レセプト債)の発行を業とする特定目的会社がレセプト債を販売するに当たり、犯則嫌疑法人オプティファクターの従業員らに証券会社に対する虚偽の説明をさせた上、事情を知らない証券会社の従業員らにその顧客に対する同債券の購入に係る勧誘をさせたことにより、一般投資家に同債券が販売されたものです。

 ●告発に至るまでの経緯
 本件レセプト債の販売に関しては、本件告発より前の平成28年1月29日、証券監視委は、アーツ証券株式会社に対する検査の結果、虚偽告知等の法令違反等が認められたとして、内閣総理大臣及び金融庁長官に対し、行政処分を求める勧告を実施しました(※1)。同日、関東財務局から同社に対し、登録取消し等の行政処分が実施され(※2)、同年中には、レセプト債の販売に関連する複数の地場証券会社に対しても、財務局より行政処分(業務改善命令)が実施されています。

(※1)アーツ証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
(※2)アーツ証券株式会社に対する行政処分について

 しかし、本件は、形式的な業規制違反では評価しきれない以下に述べるような悪質性が認められます。そこで、証券監視委は、犯則調査の権限を行使すべきであると考え、行政処分を求める勧告をもって対応を終えることなく、犯則嫌疑者らを告発しました。

 犯則嫌疑者らは、破綻寸前の極めてリスクの高い資産状態にあったレセプト債を発行・販売するに当たって、共謀の上、運用実績報告書に記載された裏付資産を水増しし、同債券が安全性の高い金融商品であることが記載された債券提案書を交付させるなどの巧妙な手段を用いて、販売証券会社及び顧客を騙しており、悪質性は非常に高いと言えます。また、犯則嫌疑者らの偽計行為によって、一般投資家に販売された多額のレセプト債が未償還となるなど、証券市場の公正性は大きく損なわれており、生じた結果も重大であると考えられます。なお、本件の犯則行為に係る範囲においては、虚偽の説明により、販売証券会社の顧客530名に対し、販売金額合計57億600万円のレセプト債が販売されています。

 本件の詳細は、証券監視委ウェブサイトをご覧ください(URLは、下の(本件に関する公表文)に記載しています)。

●過去の偽計事件との比較
 本件は、証券監視委発足(平成4年)以来、20件目及び21件目の偽計事件(投資一任契約の締結に係る偽計、風説の流布等を含まず。)の告発となります。証券監視委ウェブサイト等で過去の偽計事件(新日本理化株式会社及び明和産業株式会社の各株券に係る風説の流布、偽計及び大量保有報告書不提出事件(平成27年12月24日)石山Gateway Holdings株式会社に係る偽計事件(平成27年6月15日)など)をご覧いただくと、本件とは大きく犯則形態が異なっていることがわかります。

 偽計とは、他人に錯誤を生じさせる詐欺的ないし不公正な策略・手段を言います。また、偽計の手段・態様には制約が付されていないため、偽計には様々な形態があり得ます。偽計に該当するか否かは、偽計について規定した金融商品取引法の趣旨に照らし、投資家の判断を誤らせ、公正な相場の形成が阻害されるかどうかという観点から、判断されるものと考えられます。

 本件と同じように、実態を秘し、虚偽の説明等により、債券が一般投資家に販売された偽計事件については、15年以上前の事件となりますが、虚偽の説明等によってプリンストン債が販売されたクレスベール証券に係る偽計事件(平成12年3月21日及び同月22日告発)(※3)があります。また、本件とは適用条文が異なりますが、犯則形態が似ているものとして、AIJ投資顧問株式会社による投資一任契約の締結に係る偽計事件(平成24年7月9日同月30日同年9月19日及び同年10月5日告発)があります。これは、AIJ投資顧問株式会社が、虚偽の運用実績等を記載した資料を年金基金の運用担当者らに提示するなどし、同社との間で投資一任契約を締結させたものです。

(※3)クレスベール証券に係る偽計事件については、証券監視委の平成11年度版年次公表をご参照下さい。

 証券監視委では、引き続き、本件のような偽計行為に対して厳正に対処することにより、同種事案を抑止し、投資者の保護を図っていきます。

 なお、本件については、シンガポール通貨監督庁(Monetary Authority of Singapore)及び米国証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange Commission)より支援がなされています。

(本件に関する公表文)
平成29年3月6日(告発①)
http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20170306-1.htm
平成29年3月27日(告発②)
http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20170327-1.htm
 


3.コラム
[日本取引所自主規制法人からの寄稿]

◆人工知能技術の売買審査業務への適用について◆

 日本取引所自主規制法人(以下、「当法人」といいます。)と株式会社東京証券取引所(以下、「東証」といいます。)は、世界に先駆けて売買審査業務に対し人工知能技術を導入することとしました。

 当法人の売買審査業務では、不公正取引に該当する可能性のある注文を一定の基準によってシステムにより幅広く抽出した後、初期段階の調査として、審査担当者が個別に売買状況を分析しています。市場環境の変化や取引手法の多様化に伴い、市場全体における注文件数は増加しており、当法人におけるシステムによる抽出件数も増加傾向にあります。現状、売買審査業務には支障はありませんが、今後、抽出されたすべての注文について、人の手によって個別に売買状況を分析していくという調査手法が大きな負担となり、適切な売買審査業務を遂行していくことが困難となることも想定されます。
 こうした状況に対応するために、当法人と東証では、2016年4月から人工知能技術の現物取引に係る売買審査業務への適用に向けた検証を進めてきました。検証にあたっては、日本電気株式会社(以下、「NEC」といいます。)及び株式会社日立製作所(以下、「日立」といいます。)にご協力いただき、両社の持つ人工知能技術(NEC:RAPID 機械学習、日立:Hitachi AI Technology/H)を初期段階の調査に適用した際の有効性を検証しました。検証の結果、審査担当者がシステム的に抽出された注文を分析し、より本格的な調査が必要と判断した事案を人工知能に学習させる事で、人工知能による不公正取引の可能性が疑われる注文の抽出精度を高められることが実証されました。今後は、審査担当者が初期段階の調査における人工知能の分析結果を確認した後、より詳細な調査を行うこととなります。売買審査業務の枠組みや、調査結果の最終判断を審査担当者が行うことに変わりはありませんが、人工知能技術を活用することで、審査担当者が詳細な調査に注力でき、更に深度のある精緻な売買審査が可能となることが見込まれ、JPX市場の公正性が一層高まることが期待されます。
 今後、当法人と東証では、2017年度中の実用化を見据え、人工知能技術の導入を進めてまいります。

日本取引所自主規制法人 売買審査部


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