証券取引等監視委員会メ-ルマガジン (第101号)

平成29年9月29日
証券監視委ウェブサイト http://www.fsa.go.jp/sesc/index.htm


<目次>
1)市場へのメッセージ
 最近の取引調査に基づく勧告について
 1.アサカ理研株式に係る相場操縦について
 2.シーシーエス株式会社社員からの情報受領者によるインサイダー取引違反行為及び当該社員による公開買付けの実施に関する事実に係る伝達違反行為について
2)コラム
 「JPX自主規制法人の年次報告2017」の発行について[日本取引所自主規制法人からの寄稿]

 


1)市場へのメッセージ


◆ 最近の取引調査に基づく勧告について ◆
1.アサカ理研株式に係る相場操縦について
 
 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は,取引調査の結果に基づいて,以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。
 
・H29.9.1 アサカ理研株式に係る相場操縦
( http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20170901-1.htm )

【事案の概要】
 本件は,インターネット取引により株取引を行っていた個人投資家が,アサカ理研株式の売買を誘引する目的をもって,自身が発注した売り注文に成行又は高指値の買い注文を対当させて株価を引き上げたり,成行又は高指値の買い注文を連続して発注して他の投資者が発注した売り注文を買い付けることにより直前の約定値より株価を引き上げるなどの方法により,同株式を買い付ける一方,同株式を売り付け,同株式の売買が繁盛であると誤解させ,かつ,同株式の相場を変動させるべき一連の売買をしたという事案です。
 
【事案の特色等】
 本年4月11日勧告のフォーバル・リアルストレート株式外6銘柄に係る相場操縦事案や本年3月24日勧告のデジタルデザイン株式に係る相場操縦事案と同様に,本件も個人投資家による相場操縦事案です。
 本件課徴金納付命令対象者(以下,本節において「対象者」といいます。)は,信用取引により,複数の証券会社を介して,対当売買や買い上がり買付けなどを行っています。対象者は,本件取引以前より受託証券会社から注意を受けており,その後,証券会社から注意を受けないように取引をしようと思ったものの,儲けたいという気持ちを抑えることができず,同じような取引を続けました。そして,最終的に新規取引を停止されても,別の証券会社の口座を利用し,同様の取引手法を繰り返しており,悪質性が高いものと考えています。
 対象者は,対当売買が受託証券会社に発覚することを避けるために,売り注文と買い注文を異なる証券会社から発注していましたが,複数の証券会社を用いた対当売買であっても,証券取引所が行っている売買審査や証券監視委の審査・調査によって,誰がそうした取引を行っているのかは容易に判明し,そのような違法行為は必ず発覚します。証券監視委では,こうした相場操縦行為に対して,引き続き関係機関と連携のうえ,厳正に対処してまいります。
 これまでにも相場操縦規制違反について多数の告発・勧告を行ってきたところですが,相場操縦規制違反は後を絶たない状況にあり,その要因・背景としては以下のようなものが考えられます。

  • インターネット取引の普及及び発注システムの進歩等により,個人投資家であっても,迅速かつ大量の発注・取消が可能となっているため,見せ玉等の手法を用いて人為的に相場を変動させれば,容易に売買差益を稼げる,又は損失回避を図ることができるとの誘惑
  • 市場では膨大な取引が行われているため,個人が行う小規模の相場操縦行為までは市場監視の目も届かないだろうとの誤解

 相場操縦行為は証券市場の公正性・健全性を損なうものであり,証券監視委は,証券市場に対する投資家の信頼を確保するため,厳正な調査を実施しており,調査の結果,法令違反が認められた場合には,課徴金勧告や刑事告発を行っています。
 
 本件が広く周知されることにより,相場操縦の抑止効果が発揮されることを期待しています。


2.シーシーエス株式会社社員からの情報受領者によるインサイダー取引違反行為及び当該社員による公開買付けの実施に関する事実に係る伝達違反行為について
 
 証券監視委は,取引調査の結果に基づいて,以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。
 
・H29.9.8 シーシーエス株式会社社員からの情報受領者によるインサイダー取引違反行為及び当該社員による公開買付けの実施に関する事実に係る伝達違反行為
( http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20170908-1.htm )

【事案の概要】
 本件は,オプテックス株式会社(平成29年1月1日オプテックスグループ株式会社に商号変更,以下「オプテックス」といいます。)が平成28年4月7日午後3時頃に公表した,シーシーエス株券に対する公開買付けの開始に関するお知らせにかかわるインサイダー取引です。
 本件は,課徴金納付命令対象者(以下,本節において「対象者」といいます。)が2名の事案です。事案の流れを分かりやすくするため対象者(2)から説明します。
・対象者(2)について
 対象者(2)はシーシーエス株式会社(以下「シーシーエス」といいます。)の社員ですが,同人がその職務に関し知ったオプテックスの業務執行を決定する機関がシーシーエスの株式の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実(以下「本件事実」といいます。)を対象者(1)に対し,本件事実が公表される前にシーシーエス株式を買い付けさせることにより対象者(1)に利益を得させる目的をもって伝達したものであり,対象者(1)は,本件事実公表前に,自己の計算において,シーシーエス株式を買い付けています。
・対象者(1)について
 対象者(1)は対象者(2)から本件事実の伝達を受けながら,本件事実の公表前に,自己の計算において,シーシーエス株式を買い付けたものです。
 
【事案の特色等】
 平成17年4月の課徴金制度導入後,本件を含めこれまでにインサイダー取引による課徴金勧告を行った累計件数は272件(違反行為者ベース)であり,重要事実等別に分類すると,「公開買付け等事実」によるものが75件と一番多い結果となっています。
 これまでのメルマガでお伝えしているとおり,公開買付けについては,公開買付けの当事者である買付企業や買付対象会社のみならず,コンサルティング会社や金融機関など多くの関係者が関与すること,また,当事者間での検討開始から最終的な合意・公表までに相当な時間を要することから,他の重要事実に比べてインサイダー取引が行われやすいとの指摘があります。繰り返しになりますが,公開買付けに関わる全ての関係者において厳正な情報管理に努めることが強く求められていると言えます。
 また本件は,公開買付けの実施に関する事実に係る伝達違反行為についての勧告事案でもあります。利益を得させる等の目的をもって,未公表の重要事実等を伝達した場合,伝達者は取引により利益を得ていない場合であっても伝達された者が行った取引金額に応じて課徴金が課せられることになり得ます。自身のインサイダー取引だけではなく,情報伝達行為も課徴金納付命令の対象となることを十分ご理解いただきたいと思います。
 
 本件が広く周知されることにより,インサイダー取引の抑止効果が発揮されることを期待しています。


2)コラム


◆ 「JPX自主規制法人の年次報告2017」の発行について ◆[日本取引所自主規制法人からの寄稿]

 日本取引所自主規制法人では、当法人の役割や特色、年間活動状況等について取りまとめました「JPX自主規制法人の年次報告2017」を発行いたしました。
 
 当法人の属する日本取引所グループは、わが国の最も中心的なマーケットとして国内外における資産運用及び資金調達を支える重要な機能を担っています。その中で当法人は、皆様に信頼され、安心して取引できる場であり続けられるよう、いわば取引所の品質管理センターとして自主規制業務に日々取り組んでおります。本冊子は、そうした活動について広く情報発信しようと2014年より発行しております。
 
 この度の2017年版では、「マーケットを取り巻く環境変化及びそれに対する取組み」としまして、「MBO後の再上場時における上場審査の明確化」(近時、MBO後の再上場銘柄の増加が見込まれることから追加的な審査の視点・運用を再整理)、「デリバティブ取引に係る新売買審査システムの稼働」や「人工知能の売買審査業務への適用に関する検証」(前年度に実施した現物取引に係る売買審査システムの刷新に続くシステム対応)といったトピック的な内容に加え、自主規制法人の概要や2016年度の各種数値データ等も掲載しております。
 
 本冊子を通じて、市場関係者の皆さまにおいて当法人の自主規制業務についての理解が一層深まり、健全な取引所市場の構築に向けての一助になれば幸甚に存じます。
 
「JPX自主規制法人の年次報告2017」は、当社グループウェブサイトに掲載しておりますのでご参照ください。
http://www.jpx.co.jp/learning/tour/books-brochures/tvdivq0000003toh-att/r_report2017.pdf


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<発 行>
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