証券取引等監視委員会メ-ルマガジン (第104号)

平成29年12月28日
証券監視委ウェブサイト http://www.fsa.go.jp/sesc/index.htm


<目次>
1)市場へのメッセージ
 1.FGX LIMITEDの役員1名の金融商品取引法違反行為に係る裁判所への申立てについて
 2.最近の取引調査に基づく勧告について
 3.株式会社ストリーム株券に係る相場操縦事件の告発について
2)コラム
 1.日本証券業協会の協会員に対する監査結果について〔日本証券業協会からの寄稿〕
 2.高速取引行為を行う者の登録制の導入等に係る対応について(制度要綱の公表)〔日本取引所自主規制法人からの寄稿〕


1)市場へのメッセージ


1.FGX LIMITEDの役員1名の金融商品取引法違反行為に係る裁判所への申立てについて

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、平成29年10月24日、東京地方裁判所に対して、守脇健也(以下「被申立人」といいます。)に金融商品取引法違反行為の禁止及び停止を命ずるよう申立てを行いました。

 平成29年10月24日 FGX LIMITEDの役員1名の金融商品取引法違反行為に係る裁判所への申立てについて
          ( http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20171024-1.htm )

【事案の概要等】
 被申立人は、ニュージーランドでFGX LIMITEDという会社を設立し、その唯一の取締役となっていましたが、同社は、平成26年9月から、インターネット上にウェブサイトを開設し、そのサイト上で、主に日本国内に住んでいる一般投資家を相手に、バイナリーオプションと呼ばれるオプションの販売を行っていました。
 バイナリーオプションとは、ある銘柄の株式等の価格が将来のある時点で現在よりも上がっているか下がっているかなどを予想して購入するオプションであり、予想が当たった場合には支払った購入代金(オプション料)を上回るお金をもらえる一方、予想が外れた場合には購入代金(オプション料)をすべて失うという内容のオプションです。バイナリーオプションのうち、株価の値動きなど「金融指標」の動きを予想するタイプのバイナリーオプションについては、これを金融商品市場外で販売する場合、金融商品取引法上の登録(第一種金融商品取引業の登録)を受ける必要があります。しかし、被申立人やFGX社は、この登録を受けることなく、ウェブサイトを通じて「金融指標」の動きを予想するタイプのバイナリーオプションを販売していました。
 被申立人やFGX社は、これまでに、合計で約400名の一般投資家に対して約3億円分の上記バイナリーオプションを販売していました。なお、FGX社は、平成27年12月にニュージーランドにおいて会社登録を抹消されましたが、被申立人は、その後も、証券監視委の申立てを受けるまで、同じウェブサイト上でバイナリーオプションの販売を続けていました。
 被申立人に対しては、平成29年12月20日に、東京地方裁判所から、金融商品取引法違反行為の禁止及び停止を命ずる決定が出されています。
 証券監視委においては、引き続き、関係機関とも連携しつつ、無登録業者に対して厳正に対処してまいります。投資者の皆様におかれては、無登録業者と取引を行うことがないように、注意してください。


2.最近の取引調査に基づく勧告について

 証券監視委は、取引調査の結果に基づいて、以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。
  
 平成29年11月21日 引け条件付きの成行注文を利用したセントラル硝子株式外4銘柄に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について
          ( http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20171121-2.htm )

【事案の概要等】
 本件は、インターネットで株取引を行っていた個人投資家が、セントラル硝子株式他4銘柄の株式の売買を誘引する目的をもって、引け条件付きの成行(以下「引成」という。)買い注文(※1)を大量に入れる方法により、上記株式の買付けの委託を行う(いわゆる買い見せ玉)などし、上記株式の売買が繁盛であると誤解させ、かつ、上記株式の相場を変動させるべき一連の売買及び委託をし、上記銘柄につき約37万円の売買差益を得たほか、その外4銘柄でも同様の手口を用いて、合計約169万円の売買差益を得たという事案です。

【事案の特色等】
 本年4月11日勧告のフォーバル・リアルストレート株式外6銘柄に係る相場操縦事案等と同様に、本件も見せ玉を用いた個人投資家による相場操縦事案です。本件課徴金納付命令対象者は、約定させるつもりのない買い注文をザラバ(※2)中に発注した場合、自らの意に反して約定してしまうリスクがあると考え、そうしたリスクを回避するためにザラバ中に約定することのない、引成買い注文を大口で発注する手法により株価を引き上げ、売買差益を得ようとしました。
 本件で見せ玉として利用された引成注文は、上述のとおり、証券会社などが提供する一般的な板情報には表示されず、いわゆる「フル板」に表示される注文ですが、「フル板」を利用しているような限られた投資家を誘引する取引であっても相場操縦となることに注意が必要です。
 
 証券監視委は、証券取引所の売買審査部門等と連携して、このような手口も見逃すことなく立件していきたいと考えています。
 証券監視委は、これまでに相場操縦規制違反について多数の告発・勧告を行ってきたところですが、相場操縦規制違反は後を絶たない状況にあり、その要因・背景としては以下のようなものが考えられます。

・インターネット取引の普及及び発注システムの進歩等により、個人投資家であっても、迅速かつ大量の発注・取消が可能となっているため、見せ玉等の手法を用いて人為的に相場を変動させれば、容易に売買差益を稼げる、又は損失回避を図ることができるとの誘惑
・市場では膨大な取引が行われているため、個人が行う小規模の相場操縦行為までは市場監視の目も届かないだろうとの誤解

 相場操縦行為は証券市場の公正性・健全性を損なうものであり、証券監視委は、証券市場に対する投資家の信頼を確保するため、厳正な調査を実施しており、調査の結果、法令違反が認められた場合には、課徴金勧告や刑事告発を行っています。
 本件が広く周知されることにより、相場操縦の抑止効果が発揮されることを期待しています。

(※1)引成注文とは、前場または後場の引けにおいてのみ有効となる成行注文のことをいいます。引成注文は、証券会社などが無料で提供している一般的な板情報では通常表示されませんが、一部の証券会社が無料又は有料で顧客に提供しているすべての発注株数が表示される「フル板」と呼ばれる板情報には表示されており、証券会社や機関投資家だけではなく、個人投資家も確認できます。
(※2)ザラバとは寄付きと引けの間の取引時間をいいます。


3.株式会社ストリーム株券に係る相場操縦事件の告発について

 証券監視委は、金融商品取引法違反(相場操縦)の嫌疑で、平成29年11月21日、犯則嫌疑者3名を、また、平成29年11月27日、別の犯則嫌疑者4名を、それぞれ東京地方検察庁に告発しました。

【事案の概要等】
 本件は、犯則嫌疑者Aらが、共謀の上、東京証券取引所が開設するマザーズ市場に上場されている株式会社ストリームが発行した株券について、その株価の高値形成を図ろうと企て、次の≪第1≫~≪第4≫の相場操縦行為を行ったものです。

 ≪第1≫
 犯則嫌疑者A、同B、同C、同D及び同Eは、ほかの者と共謀の上、同株券の売買を誘引する目的をもって、平成26年2月13日から同月20日までの間、同市場において、次の手法により、同株券の株価を410円から576円まで上昇させました。

・6取引日にわたり、9名義で、証券会社5社を介し、連続した高指値注文を行って高値を買い上がるなどの方法(買い上がり買付け等)により、同株券合計18万600株を買い付け、さらに、7名義で、証券会社5社を介し、複数の価格帯に下値買い注文を厚く入れるなどの方法(下値支え等)により、同株券合計10万3700株の買付けの委託を行い、もって同株券の売買が繁盛であると誤解させた。

・同市場における同株券の相場を変動させるべき一連の株券売買及びその委託をするとともに、同株券の売買が繁盛に行われていると他人に誤解させるなど同株券の売買の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもって、2取引日にわたり、同株券合計1万株について、証券会社1社を介し、1名義で売り付けると同時に別途買い付け、もって権利の移転を目的としない仮装の売買(仮装売買)をし、さらに、3取引日にわたり、同株券について、証券会社3社を介し、3名義で売り付けると同時期に、これと同価格において、証券会社5社を介し、8名義で買い付けることをあらかじめ通謀の上、同株券合計9万1500株の売付け及び買付け(馴合売買)をした。


 ≪第2≫
 犯則嫌疑者A、同B、同C、同D及び同Eは、ほかの者と共謀の上、同株券の売買を誘引する目的をもって、平成26年5月22日から同月28日までの間、同市場において、次の手法により、同株券の株価を574円から800円まで上昇させました。

・5取引日にわたり、6名義で、証券会社5社を介し、連続した高指値注文を行って高値を買い上がるなどの方法(買い上がり買付け等)により、同株券合計16万4600株を買い付け、さらに、4名義で、証券会社4社を介し、複数の価格帯に下値買い注文を厚く入れるなどの方法(下値支え等)により、同株券合計1万5000株の買付けの委託を行い、もって同株券の売買が繁盛であると誤解させた。

・同市場における同株券の相場を変動させるべき一連の株券売買及びその委託をするとともに、同株券の売買が繁盛に行われていると他人に誤解させるなど同株券の売買の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもって、5月28日、同株券合計900株について、証券会社3社を介し、2名義で売り付けると同時に別途買い付け、もって権利の移転を目的としない仮装の売買(仮装売買)をし、さらに、5月26日、同株券について、証券会社1社を介し、1名義で売り付けると同時期に、これと同価格において、証券会社2社を介し、2名義で買い付けることをあらかじめ通謀の上、同株券合計4万9900株の売付け及び買付け(馴合売買)をした。


 ≪第3≫
 犯則嫌疑者A、同B、同C、同D、同E、同F及び同Gは、ほかの者と共謀の上、同株券の売買を誘引する目的をもって、平成26年6月25日から同月27日までの間、同市場において、次の手法により、同株券の株価を808円から1059円まで上昇させました。

・3取引日にわたり、9名義で、証券会社6社を介し、連続した高指値注文を行って高値を買い上がるなどの方法(買い上がり買付け等)により、同株券合計10万1600株を買い付け、さらに、6名義で、証券会社5社を介し、複数の価格帯に下値買い注文を厚く入れるなどの方法(下値支え等)により、同株券合計2万3500株の買付けの委託を行い、もって同株券の売買が繁盛であると誤解させた。

・同市場における同株券の相場を変動させるべき一連の株券売買及びその委託をするとともに、同株券の売買が繁盛に行われていると他人に誤解させるなど同株券の売買の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもって、2取引日にわたり、同株券合計5000株について、証券会社4社を介し、5名義で売り付けると同時に別途買い付け、もって権利の移転を目的としない仮装の売買(仮装売買)をし、さらに、6月27日、同株券について、証券会社1社を介し、1名義で売り付けると同時期に、これと同価格において、証券会社2社を介し、2名義で買い付けることをあらかじめ通謀の上、同株券合計9000株の売付け及び買付け(馴合売買)をした。


 ≪第4≫
 犯則嫌疑者A、同B、同C、同D、同E、同F及び同Gは、ほかの者と共謀の上、同株券の売買を誘引する目的をもって、平成26年7月17日から同月24日までの間、同市場において、次の手法により、同株券の株価を1400円から1510円まで上昇させました。

・5取引日にわたり、13名義で、証券会社6社を介し、連続した高指値注文を行って高値を買い上がるなどの方法(買い上がり買付け等)により、同株券合計14万2100株を買い付け、さらに、9名義で、証券会社5社を介し、複数の価格帯に下値買い注文を厚く入れるなどの方法(下値支え等)により、同株券合計13万7300株の買付けの委託を行い、もって同株券の売買が繁盛であると誤解させた。

・同市場における同株券の相場を変動させるべき一連の株券売買及びその委託をするとともに、同株券の売買が繁盛に行われていると他人に誤解させるなど同株券の売買の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもって、7月18日、同株券合計2300株について、証券会社2社を介し、1名義で売り付けると同時に別途買い付け、もって権利の移転を目的としない仮装の売買(仮装売買)をし、さらに、3取引日にわたり、同株券について、証券会社1社を介し、1名義で売り付けると同時期に、これと同価格において、証券会社5社を介し、10名義で買い付けることをあらかじめ通謀の上、同株券合計5万9000株の売付け及び買付け(馴合売買)をした。


【本件の意義】
 本件は、多数の犯則嫌疑者らが、共謀の上、長期間にわたって犯則行為を実行し、株価を不正に吊り上げた相場操縦事案です。
 犯則嫌疑者らは、本件犯則行為において、借名を含めた多数の異名義口座を用いただけでなく、仮装売買に加え、大口の馴合売買を繰り返し、出来高を急増させたり、多数回にわたる買い上がり買付けや下値支えなどの手法も用いることで、需給バランスによって形成されるべき市場の株価に大きな影響を与えており、本件は、相場操縦の規模、手口の巧妙さなどの点に照らしても、極めて悪質・重大な事案といえます。
 市場の公正性・透明性を確保するためには、重大・悪質な事案に対して厳正に対処することが必要であり、同種行為を抑止するためにも、本件告発の意義は高いものと考えられます。
 
 証券監視委は、引き続き、市場の公正性・透明性の確保に向けて、重大で悪質な違反行為について、関係機関とも連携の上、犯則調査の権限を適切に行使し、厳正に対処していきます。
 
 なお、本件については、日本取引所自主規制法人及びシンガポール通貨監督庁(Monetary Authority of Singapore)より支援がなされています。
 
(本件に関する公表文)
 http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20171121-1.htm (11月21日告発)
 http://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2017/2017/20171127-1.htm (11月27日告発)
 

2)コラム


1.日本証券業協会の協会員に対する監査結果について〔日本証券業協会からの寄稿〕

 先般、平成29年度上半期の協会員に対する監査結果を取りまとめました。
 平成29年度上半期の監査は、金融商品の説明及び勧誘状況の検証等を重点項目に掲げ、会員(証券会社)35社、特別会員(銀行等)20機関に対して監査を実施し、会員30社、特別会員20機関に対し監査結果を通知いたしました。
 監査結果について簡単にご紹介しますと、会員において、法令違反では、広告における表示すべき事項、有価証券の「実売り」に係る管理方法の確認が認められたほか、協会規則違反として、勧誘開始基準に係る不備が認められました。
 なお、法令・諸規則違反等の指摘に、重大な違反は認められておりません。
 平成29年度下半期の監査におきましても、引き続き、金融商品の投資勧誘・販売態勢の検証等を重点事項に掲げ監査を実施することとしています。
 
○ 詳細の内容につきましては、本協会ホームページにおける『協会員への監査について』をご確認ください。
  http://www.jsda.or.jp/katsudou/kansa/index.html
 
○ 本件に関するお問い合わせ先
  :日本証券業協会 監査1部(TEL 03-3667-8455)


2.高速取引行為を行う者の登録制の導入等に係る対応について(制度要綱の公表) 〔日本取引所自主規制法人からの寄稿〕

◆背景・趣旨
 平成29年5月17日に「金融商品取引法の一部を改正する法律」が成立し、同年10月24日には金融商品取引法施行令、金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令、金融商品取引業等に関する内閣府令、関連する金融庁告示、金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針(本編)及び金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針(別冊)高速取引行為者向けの監督指針が公表され、高速取引行為を行う者について、新たに登録制の導入等が実施されることになりました。
 これに伴い、東京証券取引所及び大阪取引所(以下、「TSE/OSE」といいます。)においては、後述の制度概要の通り対応を行うものとし、所要の規則改正を行うべく、同年12月20日から平成30年1月19日までの間、制度要綱に関するパブリックコメントを募集しています。
 ※なお、金融庁による金融商品取引法施行令等のパブリックコメントの結果によっては、当該対応に変更が生じる可能性があります。
 
<パブリック・コメントリンク先>
 東京証券取引所:http://www.jpx.co.jp/rules-participants/public-comment/detail/d2/20171220.html
 大阪取引所:http://www.jpx.co.jp/rules-participants/public-comment/detail/d8/20171220-01.html

◆ 制度概要
【取引戦略の明示】
 高速取引行為に係る注文に対し、その取引戦略の明示を求める。取引戦略は監督指針に定める4類型を用いる(マーケット・メイク、アービトラージ、ディレクショナル、その他)。
【仮想サーバ/専用TAP等の申請】
 高速取引行為に係る注文が行われる仮想サーバ(大阪取引所市場のデリバティブ取引においては専用TAP及びユーザID)に対し、その実質的な利用者である高速取引行為を行う者を把握するため、専有して利用する者の商号等の登録を求める。
【関連情報の提出】
 高速取引行為を行う者としての登録が完了したことを示す証跡、国内における代理人等の連絡先、その他業務方法書等の写し等の提出を高速取引行為を行う者に求める。
【取引所の行う調査その他の必要な措置への協力】
 高速取引行為を行う者に対し、取引所が行う調査その他必要な措置への協力を求める。また、取引参加者に対し、高速取引行為を行う者に取引所規則等を遵守することを要請し、同意を得るように求める。
 
 なお、TSE/OSEでの市場取引を公正にし、及び投資者を保護するため、日本取引所自主規制法人(以下「当法人」といいます。)は、自主規制業務とみなされる高速取引行為を行う者の法令又は法令に基づく行政官庁の処分の遵守の状況の調査その他必要な措置について受託することとし、TSE/OSEの規則改正を受けて、当法人においても必要な規則改正を実施する予定です。
 
 日本取引所自主規制法人 売買審査部
 


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<発 行>
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