証券取引等監視委員会メ-ルマガジン (第118号)

平成30年11月12日
証券監視委ウェブサイト
https://www.fsa.go.jp/sesc/index.htm

 

<目次>
市場へのメッセージ
1. 『開示検査事例集』の公表について
2. 平成30事務年度 証券モニタリング基本方針について
3. おひさまエネルギーファンド株式会社に対する検査結果に基づく勧告について


市場へのメッセージ


1. 『開示検査事例集』の公表について

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、平成30年9月19日、「開示検査事例集」を公表いたしました。
https://www.fsa.go.jp/sesc/jirei/kaiji/20180919.htm

○開示検査事例集について

 「開示検査事例集」は、適正な情報開示に向けた市場関係者の自主的な取組みを促す観点から、証券監視委による開示検査の最近の取組みや開示検査によって判明した開示規制違反の内容、その背景・原因及び是正策等の概要を取りまとめたものです。

 平成20年以降、「金融商品取引法における課徴金事例集~開示規制違反編~」を公表してきましたが、上場企業・会計監査人・投資家等の市場関係者の皆様がより利用しやすくするため、昨年度から「開示検査事例集」と名称を変更し、その内容も刷新しております。

 具体的には、課徴金納付命令勧告を行った事例だけでなく、勧告は行わないものの、開示規制違反の背景・原因を追究した上でその再発防止策を会社と共有した事例、会社に対して訂正報告書等の自発的な提出を促した事例等、多様な事例をご紹介しております。

○最近の開示検査について

 平成29事務年度(29年7月~30年6月)に実施した開示検査は30件であり、そのうち、13件の開示検査が終了しました。終了した13件のうち、3件は課徴金納付命令勧告を行い、2件は訂正報告書等の自発的な提出を促しました。

 これら開示規制違反の多くは、架空売上や売上の前倒し計上など、売上をめぐる不適正な会計処理による有価証券報告書等の虚偽記載でした。また、こうした開示規制違反に至る背景・原因として、多くの場合、経営陣のコンプライアンス意識の欠如及びガバナンスの機能不全が認められました。

 本年度の「開示検査事例集」でも、昨年度に引き続き、多様な事例を紹介しております。また、課徴金納付命令勧告を行った事例等を含め、最近1年間に開示検査を終了した事例については、冒頭にまとめて掲載しております。

○市場関係者へのメッセージ

 証券監視委としては、「開示検査事例集」を通じて、市場関係者の皆様の、開示規制違反の手法、背景・原因等についての理解を深めていただくことで、上場会社とその会計監査人である公認会計士・監査法人とのコミュニケーションや投資家の皆様と投資先である上場会社との対話がますます活発に行われることを期待しています。そして、その活発なコミュニケーションや対話は、開示規制違反の未然防止・再発防止につながるものと考えております。


2. 平成30事務年度 証券モニタリング基本方針について

 証券監視委は、平成30年9月14日に、今事務年度の金融商品取引業者等に対する証券モニタリングの基本的な取組み方針等を「平成30事務年度 証券モニタリング基本方針」として公表しました。
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20180914-1.htm
 
<証券モニタリング基本方針の主なポイント>

○証券モニタリングの基本的な進め方

・全ての金融商品取引業者等を対象に、オフサイト・モニタリングにおいて金融庁関連部局等と連携して、経済動向や業界動向等の環境分析やビジネスモデルの分析等のリスクアセスメントを行い、リスクベースでオンサイト・モニタリング先を選定する取組みを継続していきます。

・オンサイト・モニタリングでは、問題の全体像を把握し、実効性のある再発防止策につなげていきます。また、問題が顕在化していないものの、業務運営態勢等について改善が必要であると認められた場合には、証券監視委の問題意識をモニタリング先と共有し、実効性ある内部管理態勢の構築等を促していきます。

○今事務年度の取組方針

・投資家の高収益商品への期待を反映した取扱商品を拡大する動きや、新たな業務への進出を図るなど、従来の手数料収入に依存したビジネスモデルを変更する動きに着目したリスクアセスメントを行います。

・以下のような状況が把握される場合等を中心に、今事務年度においては、積極的にオンサイト・モニタリングを実施し、深度ある検証を行います。

> 個別の法令違反事項の発生や業務運営態勢に懸念があり、早期に深度ある検証が必要な状況

> リスクの所在が不明確な商品を取り扱い、その勧誘実態等の検証が必要な状況

> オフサイト・モニタリングによる情報分析だけでは業務運営等の実態が必ずしも把握できない状況(検査未実施期間が長期化している場合を含む)

> 分別管理が適切に行われていないなど、投資者保護上、重大な問題が懸念される状況

・この他、無登録業者に関する情報を積極的に収集・分析し、関係機関と連携して調査を行い、裁判所への違反行為の禁止命令等の申立てを行います。

○テーマ別のモニタリング事項

 証券モニタリングでは、金融行政方針を踏まえつつ、以下の項目について業態横断的な検証を行っていきます。

・マネー・ローンダリング対策(AML)、テロ資金供与対策(CFT)への取組状況
・サイバーセキュリティ対策の十分性
・顧客本位の業務運営を実現するための施策の実施状況
・高速取引注文に係る売買審査の高度化の取組状況

 上記のほか、金融商品取引業者等を取り巻く環境の変化等に応じて機動的にその他のテーマ別の検証に取り組んでいきます。

○規模・業態別の主な検証事項

 金融商品取引業者等の規模、業態や特性等に応じて、金融行政方針を踏まえつつ、検証を行っていきます。(業態別の主な検証事項は本文参照)

○自主規制機関との連携・モニタリング結果の情報発信

・自主規制機関等との間では、情報交換をタイムリーに行うなど、引き続き緊密に連携していきます。

・証券モニタリングを通じて把握した問題点あるいは他に模範となりうる取組み(ベストプラクティス)等について、必要に応じて、金融商品取引業者等に対してフィードバックを行い、改善に向けた自主的な取組みを促していきます。

 今後とも、証券監視委は、市場の公正性・透明性を確保し、投資者保護を図るため、金融庁関連部局、各財務局等及び関係機関との連携を一層強化し、効果的・効率的な証券モニタリングを実施することで、投資者が安心して投資できる環境の確保に努めてまいります。


3. おひさまエネルギーファンド株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

 関東財務局長がおひさまエネルギーファンド株式会社(以下「当社」といいます。)を検査した結果、下記のとおり問題が認められたので、証券監視委は、平成30年9月21日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して行政処分を行うよう勧告いたしました。
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20180921-1.htm

【事案の概要】

 当社は、自然エネルギー事業を投資対象としたファンドの取得勧誘を行っているところ、前回検査(検査基準日:平成25年11月29日)において、当社の前代表取締役であるA氏(以下「A前社長」といいます。)が一人で資金管理業務を行っていたこと等に起因して、分別管理が確保されていないにもかかわらずファンドの取得勧誘を行っていた等の法令違反行為が認められ、平成26年5月、関東財務局長から、適切な再発防止策及び改善計画の策定・実施、経営管理態勢の整備等を内容とする業務改善命令が発出されています。

 当社は、同命令を受け、平成26年6月、改善策を記載した報告書を当局に提出していますが、今回検査において、当社の改善策の実施状況を検証したところ、以下の問題が認められました。

○業務改善命令に違反している状況

(1) A前社長単独で資金管理業務が行われている状況

 当社は、前回検査で認められた問題を受け、A前社長を資金管理業務に一切関与させない旨を改善策として報告書に記載しています。

 しかし、実際にはA前社長単独で資金管理業務が行われている状況が継続しており、当社において、報告書に記載した改善策が履行されていない状況が認められました。

 また、他の取締役や内部管理統括責任者においても、引き続きA社長単独で資金管理業務を行っている状況を認識していましたが、これを放置し、他の役職員によりA前社長の資金管理状況を事後的にチェックする仕組み等も構築していませんでした。

(2) 区分経理が行われていない状況

 当社は、前回検査で認められた問題を受け、ファンド毎に預貯金口座を開設するとともに、平成26年7月に新たに「分別管理規程」を策定し、分別管理の適切な実施のための態勢を整備する旨を改善策として報告書に記載しています。

 しかし、「分別管理規程」において、出資金と営業者固有の財産を分別して管理することや、ファンドの会計帳簿において、出資金の経理状況が直ちに判別できる状態とすること等を規定したものの、実際には、会計帳簿において、出資金と営業者固有の財産を区分した経理が行われていない状況となっていました。

 また、当社コンプライアンス部においてファンドの会計帳簿等を確認するとともに、内部監査においてその適切性について検証する旨を改善策として報告書に記載していたにもかかわらず、いずれについても実施されておらず、上記の区分経理が行われていない状況を看過していました。

 A前社長は、こうした状況を改善することなく、これを利用し、平成24年5月から今回検査基準日(平成30年5月7日)までの間、出資金の一部が入金されている営業者口座から、合計で830万円を自らの住宅地の購入費用や生活費等に費消していました。また、私的費消を隠蔽するため、決算期の異なる他のファンドの営業者口座から私的費消したファンドの営業者口座に対し、延べ2350万円の資金移動を行っていました。

 なお、当社に対しては、平成30年9月28日に、関東財務局長から行政処分(業務停止命令・業務改善命令)が行われています。
https://lfb.mof.go.jp/kantou/kinyuu/pagekthp032000773.html


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