他社株券償還特約付社債券(以下「EB」という。)に関連し
行われた証券会社における不適正な取引に対する
検査結果に基づく勧告について


平成13年2月16日
証券取引等監視委員会

1.勧告の内容
 証券取引等監視委員会は、ユービーエス・ウォーバーグ・ジャパン・リミテッド東京支店(東京都千代田区大手町、東証・大証会員、役職員約540名、以下「UBS証券」という。)及びコメルツ・セキュリティーズ・ジャパン・カンパニー・リミテッド東京支店(東京都千代田区丸の内、日本における代表者 川崎 正、東証・大証会員、役職員約210名、以下「コメルツ証券」という。)を検査した結果、下記のとおり当該証券会社の使用人に係る法令違反の事実が認められたので、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、適切な措置を講ずるよう勧告した。


2.事実関係

○ 実勢を反映しない作為的相場を形成させるべき一連の有価証券の売買取引

(1) UBS証券
 UBS証券株式本部トレーディング部ディレクターは、特定の上場銘柄の株式を対象とするEBに関し、当該銘柄の株価の水準によりボーナス・クーポン(追加利息)を支払うか否かを判定する日である平成12年5月10日の14時59分から大引けにかけて、当該銘柄の株式について、当該銘柄の株価を引き下げる目的をもって、顧客から受託した当該銘柄の株式の売付注文を利用して成行又は低い指値の一連の売付けを行い、株価を下落させた。
 なお、この結果、当該銘柄の株価は、ボーナス・クーポンの支払判定株価を下回ることとなり、当該EBについては、ボーナス・クーポン総額約70百万円が支払われないこととなった。

(2) コメルツ証券
 コメルツ証券金融派生商品本部エクイティー・デリバティブズ・トレーディング部トレーダー及び同部シニアトレーダーは、特定の上場銘柄の株式を対象とするEBに関し、当該銘柄の株価の水準によりボーナス・クーポン(追加利息)を支払うか否かを判定する日である平成12年8月15日の14時58分から大引けにかけて、当該銘柄の株式について、当該銘柄の株価を引き下げる目的をもって、顧客から受託した当該銘柄の株式の売付注文を利用して低い指値の一連の売付けを行い、株価を下落させた。
 なお、この結果、当該銘柄の株価は、ボーナス・クーポンの支払判定株価を下回ることとなり、当該EBについては、ボーナス・クーポン総額約77百万円が支払われないこととなった。
 当該証券会社において使用人が行った上記行為は、外国証券業者に関する法律第14条第1項において準用する証券取引法第42条第1項第9号に基づく外国証券業者に関する内閣府令((1)については平成12年総理府令第65号、(2)については平成12年総理府令第116号による改正前のもの)第24条第15項において準用する証券会社の行為規制等に関する内閣府令((1)については平成12年総理府令第65号、(2)については平成12年総理府令第116号による改正前のもの)第4条第3号に規定する「実勢を反映しない作為的相場を形成させるべき一連の有価証券の売買取引をする行為」に該当すると認められる。


参 考

EB(他社株券償還特約付社債券)に関する調査の概要

1.調査目的

(1) EBの一般的な形は、償還日までの特定日等に対象銘柄が一定の価格以上であれば額面をそのまま金銭で償還し、逆に一定価格未満であれば、対象銘柄を一定の株数で償還される商品である。
(2) 最近では、含み損を抱えた株式で償還されるリスクも指摘されており、また、ボーナス・クーポンが付いたEBも発行されているが、それらは高い利率が期待できる反面、相場の変動によりボーナス・クーポンが付かなかったケースもある。

(3) 最近の証券会社に対する検査においても、EBに関連する問題点が散見されており、また、一般投資家等からEBに関連する情報提供も見られることから、今般、個別のEBの内容について調査を行ったものである。

(4) 今回の調査によって、個別のEBの内容を把握するとともに、証券会社に対する検査やEB対象銘柄の価格形成の審査に当たっての重要な資料とするものである。

2.調査内容等

(1)対象債券:平成12年中に発行された売出金額の総額が5億円以上のEB

(2)対象会社:これまでにEBの売出人となったことのある証券会社を含む大手、準大手証券会社等の40社

(3)主な調査項目:発行者、アレンジャー、対象銘柄、発行日、償還期限、ノックイン価格、ボーナス・クーポン判定価格、評価日等

(4)報告依頼日:平成13年1月25日


資料等
(ファイル容量は134kbあります。)

 

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