日興証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について


平成13年4月27日
証券取引等監視委員会

1.勧告の内容
 証券取引等監視委員会は、日興証券株式会社(東京都千代田区丸の内、資本金2,089億円、役職員約7,300名)を検査した結果、下記のとおり法令違反等の事実が認められたので、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分及びその他の適切な措置を講ずるよう勧告した。


2.事実関係

(1) 有価証券の売買その他の取引に関し、虚偽の表示をする行為

マル1 日興証券株式会社は、平成8年4月から同9年10月までの間、特定の会社により発行された一連の外国債券を多数の法人顧客に販売している。
 当該外国債券の販売に際し、一部の銘柄について、債券部外国商品課長(当時)及び外国商品課営業員(当時)の関与により、投資勧誘資料である外国証券内容説明書等の記載内容の一部に、事実と異なる為替スワップの相手方、債務の弁済順位等の内容を記載し、これを多数の顧客に交付することにより、虚偽の表示を行った。

マル2 堺支店貯蓄アドバイザー課営業員は、平成10年8月初旬、顧客に外国債券の買付けを勧誘している。
 その際、当該外国債券は元本が保証されていないにもかかわらず、顧客に対する投資勧誘資料に、あたかも元本が保証されているかのような事実と異なる内容を記載し、これを当該顧客に交付することにより、虚偽の表示を行った。

 上記行為は証券取引法(平成10年法律第107号(平成10年12月1日施行)による改正前のもの)第50条第1項第6号に基づく証券会社の健全性の準則等に関する省令(平成10年総理府令・大蔵省令第33号(平成10年12月1日施行)による改正前のもの)第2条第1号に規定する「有価証券の売買その他の取引に関し、虚偽の表示をする行為」に該当すると認められる。

(2) 利益に追加するため財産上の利益を提供する行為

 日興証券株式会社は、西宮支店運用コンサルタント課長(当時)が同課内における新規公開株式の顧客への配分を決定する地位にあった中で、当該課長の関与により、当該課長の担当していた顧客に対し、有価証券取引につき生じた顧客の利益に追加する目的で、平成11年10月1日から同年10月6日までの間、値上がりの蓋然性が高く支店への割当数量が1単位若しくは数単位しかない複数の銘柄の新規公開株式を、恣意的に集中配分することにより、財産上の利益を提供した。

 上記行為は証券取引法第42条の2第1項第3号に規定する「有価証券について生じた顧客の利益に追加するため財産上の利益を提供する行為」に該当すると認められる。

(3) 外務員の職務に関する著しく不適当な行為

 日興証券株式会社は、平成12年5月、新規公開株式の配分方式について抽選方式を採用した。
 宇都宮支店運用コンサルタント課営業員は、当該抽選方式の採用に伴い、顧客が新規公開株式を取得する確率を高めるために複数の仮名口座を開設し、新規公開株式のブックビルディングに参加している事実を知った。
 しかしながら、当該営業員は、当該事実を知った後も何ら適切な対応をとらず、当該顧客が当該仮名口座において同様の参加申込みをし、配分を受けることとなった株式の取得の申込み及び売付けを行っていることを知りながら、さらには、当該顧客に対し複数の新たな仮名口座の開設を許容するなどし、平成12年6月19日から同年12月15日までの間、当該顧客がこれらの仮名口座を通じて配分を受けることとなった株式の取引を受託、執行した。

 当該使用人が行った上記行為は日本証券業協会公正慣習規則第8号「証券従業員に関する規則」第9条に定める禁止行為(仮名取引の受託)に該当し、当該行為の内容から判断すると、証券取引法第64条の5第1項第2号に規定する「外務員の職務に関する著しく不適当な行為」に該当すると認められる。

 

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