平成13検査事務年度検査基本方針及び検査基本計画


平成13年7月23日
証券取引等監視委員会

1 検査基本方針

(1) 基本的考え方
 我が国の証券市場は、金融システム改革の諸施策の実施、情報通信技術の進展などにより大きな変革の渦中にある。市場の自由化、国際化が進展し、投資者及び資金調達者の多様なニーズに応えていくことが求められている。この証券市場を健全に発展させていくためには、公正でかつ投資者から信頼される市場を確立することが不可欠であり、適切な市場ルール等の整備とその実効性を担保するための監視体制の充実及び市場ルール等の違反に対する厳正な対応が要請されている。
 また、他社株券償還特約付社債券(以下「EB」という。)などの新たな金融商品の登場、インターネットを利用した証券取引を専門とする証券会社の参入、私設取引システム(以下「PTS」という。)運営業務などの新たな証券業務の登場等、個人投資家の保護の観点から重大な関心を持つべき分野が拡大している。このため、市場仲介者としての証券会社等においては、市場ルール等に則った適正な業務の確保及び内部管理体制の充実・強化が従来にも増して必要となっている。
 以上を踏まえ、平成13検査事務年度(平成13年7月~平成14年6月)の検査においても、監視委員会の使命に則り証券市場等における取引の公正の確保を図り、市場に対する投資者の信頼を保持することを目指すこととし、特に個人投資家の保護に全力を尽くすことを最大の目標とする。

(2) 平成12検査事務年度検査結果
 平成12検査事務年度(平成12年7月~平成13年6月)の検査結果をみると、新たな金融商品であるEBに関連して、実勢を反映しない作為的相場を形成させるべき一連の有価証券の売買取引をする行為、EBの勧誘に際して、重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為等、依然として一部の証券会社等において重大な法令違反行為が認められている。なお、インターネット取引に関連した法令違反行為が初めて認められている。
 また、個人投資家の利益を軽視した外貨建商品の乗換え勧誘などの営業姿勢上の問題点や、社内管理システムの不備及び不十分な活用、役職員の法令遵守意識の欠如及びこれに起因する法令の理解不足などの内部管理体制上の問題点が認められている。
 検査運営においては、被検査法人の負担軽減及び効果的な検査に資するための同時検査の実施等による金融庁検査局との連携強化に努めている。また、各種情報の活用等による機動的な検査を実施しており、その結果において問題点を指摘している事例がある。
 平成12検査事務年度においては、金融庁検査局と共同で証券会社に係る検査マニュアル(以下「証券検査マニュアル」という。)を策定・公表している。証券検査マニュアルは、検査機能の一層の向上を図るとともに、証券会社等の自己責任に基づく経営を促し、もって透明な金融行政の確立に資することを目的としている。

(3) 平成13検査事務年度の検査実施方針
 以上の基本的考え方及び最近の証券市場をめぐる状況を踏まえ、平成13検査事務年度における証券会社等検査は、下記により実施することとする。

マル1 運営要領
 金融庁検査局や自主規制機関等と連携し、証券検査マニュアルを有効に活用しつつ、厳正かつ的確な検査を実施することとする。
 また、深度ある検査の実施に向けて、検査体制の拡充・強化に努めるとともに新たな業務内容にも対応した検査手法の向上・開発等を図ることとする。
 検査対象会社については、個人投資家等の関心や市場の動きに的確に対応するため弾力的に選定することとし、その際、情報収集体制の拡充による各種情報の活用に加え、証券市場を取り巻く情勢、前回検査の結果等を総合的に勘案する。その上で、個別会社の状況に応じた的確かつ効率的な検査の実施に努めるとともに、適宜、機動的な検査を実施するなど、より実効性のある検査運営に努める。

マル2 検査重点事項
 証券会社等検査では、投資者の保護に資するため、次の諸点を重点事項とする。

(a) 営業姿勢面では、過去に指摘されている事項が依然として改善されていないことに鑑み、証券会社等の誠実かつ公正な営業姿勢の確保及び個人投資家の保護の観点から、投資勧誘の実情等を的確に点検する。

(b) 証券取引の公正確保の観点から、法令を中心とした市場ルール等の遵守状況を最重点事項として多角的に点検する。

(c) 法令違反行為等の未然防止等の観点から、各証券会社等における内部管理体制の整備・運用状況及びその実効性について点検する。
 金融先物取引業者等検査では、先物取引の公正確保の観点から、市場ルール等の遵守状況を重点的に点検する。

マル3 平成13検査事務年度に取り組むべき課題

イ 厳正かつ的確な検査の実施

(a) 機動的検査の一層の推進
 各種情報を有効に活用し、弾力的に検査計画の見直しを行い当初計画にとらわれない機動的な検査の実施に努める。

(b) 金融庁検査局等との連携強化による効果的な検査の実施
 金融庁検査局との同時検査の拡充など他機関との連携の強化に努め、相互の機能の有効活用により効果的な検査を実施する。

(c) 証券検査マニュアルの活用等による効率的な検査の実施
 証券検査マニュアルの活用、的確な業務量の投入及び証券総合システムの活用等により効率的な検査の実施に努める。
 ただし、証券検査マニュアルはあくまで検査官の手引書と位置付けられるものであり、証券会社等の規模、業務範囲や特性等を十分に踏まえ、機械的、画一的な検査に陥らないように留意する。

(d) 登録金融機関に対する検査への業務量の投入
 登録金融機関における証券投資信託の取扱量が増大しているなど証券業務の比重が増していることから、登録金融機関に対する検査について相応の人員・期間を充当する。

(e) 意見申出制度の導入
 検査における被検査法人からの意見申出制度の導入により、検査の質的水準の向上及び手続きの透明性の確保に努める。

ロ 深度ある検査の実施

(a) EB等の新たな金融商品に関する証券会社等の法令遵守状況、営業姿勢についての重点的な点検
 EB等の新たな金融商品について、組成、引受、個人投資家等への勧誘、販売、償還等に関して不適正な行為が行われていないか、また、個人投資家等の利益を軽視した投資勧誘など営業姿勢上の問題点がないか等について重点的に点検する。

(b) インターネット等の高度情報通信技術を利用した取引に係る取引実態の精査
 インターネット証券取引、PTS運営業務による取引等において、不適正な行為が行われていないか等について、取引実態を精査する。

(c) 法令違反行為等の未然防止等の観点からの内部管理体制の点検
 法令違反行為等の再発防止・未然防止等の観点から、証券会社等の適切な社内管理システムの整備及びその実効性ある活用の確保のため、法令違反行為等が生じた原因・背景について内部管理体制の踏み込んだ点検、検討を行う。

(d) 検査の専門性の向上
 新たな金融商品・証券業務等に関して的確な検査を実施するため、民間の専門家の職員への登用や、専門的な研修の充実等により、検査の専門性の向上に努める。


2 検査基本計画

(1) 証券会社等検査
  ・国内証券会社  81社
  ・外国証券会社  11社
  ・登録金融機関   9社

(注1) 上記検査以外に、別途、機動的な検査等を実施する。
(注2) 国内証券会社については、上記のほかに、財務局長等が行う支店のみを対象とした検査を26支店実施することとする。

(2) 金融先物取引業者等検査
  ・金融先物取引業者等  原則として、証券会社等検査の際併せて実施する。

 

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