センチュリー証券(株)に対する検査結果に基づく勧告について


平成14年4月2日
証券取引等監視委員会

1.勧告の内容

 関東財務局長がセンチュリー証券株式会社(東京都中央区日本橋、東証・大証会員、役職員約350名)を検査した結果、下記のとおり当該証券会社及び当該証券会社の使用人に係る法令違反等の事実が認められたので、本日、 証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分及びその他の適切な措置を講ずるよう勧告した。


2.事実関係

(1) 取引一任勘定取引の契約の締結

 上尾支店長ほか11名は、それぞれの顧客との間で、株式の売買等の受託につき、顧客の個別の取引ごとの同意を得ないで、売買の別(有価証券指数等先物取引の受託については、現実指数が約定指数を上回った場合に金銭を支払う立場の当事者となるか又は当該金銭を受領する立場の当事者となるかの別、有価証券オプション取引の受託については、オプションを付与する立場の当事者となるか又は取得する立場の当事者となるかの別)、銘柄、数及び価格(有価証券指数等先物取引の受託については、約定指数、有価証券オプション取引の受託については、オプションの対価の額)の全部又はこれらの一部について定めることができることを内容とする契約を締結した上で、取引を受託、執行した。

・上尾支店長
 一任の形態  一部(数及び価格)
 契約締結日  平成10年2月18日から同13年4月24日
 受託執行期間 平成10年2月18日から同13年4月24日

・本店営業部次長
 一任の形態  全部又は一部(価格)
 契約締結日  平成13年2月23日から同年5月23日
 受託執行期間 平成13年2月23日から同年8月20日

・本店第一営業部証券貯蓄課契約社員
 一任の形態  一部(価格)
 契約締結日  平成13年2月5日から同年7月23日
 受託執行期間 平成13年2月5日から同年7月23日

・本店第二営業部歩合外務員
 一任の形態  全部
 契約締結日  平成4年4月9日から同11年4月20日
 受託執行期間 平成4年4月9日から同13年8月20日

・本店第二営業部歩合外務員
 一任の形態  全部
 契約締結日  平成10年7月28日
 受託執行期間 平成10年7月28日から同13年8月20日

・本店第二営業部歩合外務員
 一任の形態  一部(価格、対価の額又は約定指数)
 契約締結日  平成12年12月6日から同13年8月20日
 受託執行期間 平成12年12月6日から同13年8月20日

・本店第二営業部歩合外務員
 一任の形態  一部(価格)
 契約締結日  平成13年1月12日から同年8月20日
 受託執行期間 平成13年1月17日から同年8月20日

・本店第二営業部歩合外務員
 一任の形態  一部(価格)
 契約締結日  平成11年1月29日から同13年7月24日
 受託執行期間 平成11年1月29日から同13年7月24日

・津山支店次長兼営業第一課長
 一任の形態  全部
 契約締結日  平成11年4月26日
 受託執行期間 平成11年4月28日から同13年8月20日

・津山支店営業第一課課長代理
 一任の形態  全部
 契約締結日  平成11年8月31日及び同年12月9日
 受託執行期間 平成11年9月1日から同13年8月20日

・仙台支店営業第二課歩合外務員
 一任の形態  全部
 契約締結日  平成12年12月11日及び同13年2月22日
 受託執行期間 平成12年12月11日から同13年8月20日

・仙台支店営業第二課歩合外務員
 一任の形態  一部(価格)
 契約締結日  平成12年10月27日から同13年8月20日
 受託執行期間 平成12年10月27日から同13年8月20日


 当該使用人が行った、上記の契約の締結行為は、証券取引法第42条第1項第5号(平成10年11月30日以前の行為については、同年法律第107号による改正前の第50条第1項第3号。以下同じ。)に規定する「取引一任勘定取引の契約を締結する行為」に該当すると認められる。

 また、上記行為は、後記「(4) 証券会社としての適正性を欠いた業務運営」のとおり、当社の管理監督上の重大な過失により実行されたものと認められることから、証券取引法第42条第1項第5号に該当する会社の行為と認められる。


(2) 投機的利益の追求を目的とした有価証券の売買

マル1 津山支店次長兼営業第一課長は、平成10年3月11日から同13年8月20日までの間、顧客の口座を使用して、自己の計算に基づく株式の売買を多数回にわたり行った。
 当該次長が行ったこれらの取引は、専ら投機的利益の追求を目的とした有価証券の売買と認められる。

マル2 大阪支店第一営業部主任は、平成6年10月7日から同13年8月20日までの間、複数の顧客の口座を使用して、自己の計算に基づく株式の売買を多数回にわたり行った。
 当該主任が行ったこれらの取引は、専ら投機的利益の追求を目的とした有価証券の売買と認められる。


 当該使用人が行った上記行為は、証券取引法第42条第1項第9号(平成10年11月30日以前の行為については、同年法律第107号による改正前の第50条第1項第6号)に基づく証券会社の行為規制等に関する内閣府令第4条第5号(平成12年6月30日以前の行為については、証券会社の行為規制等に関する命令第4条第5号、平成10年11月30日以前の行為については、同年総理府令・大蔵 省令第33号による改正前の証券会社の健全性の準則等に関する省令第2条第5号)に規定する「投機的利益の追求を目的として有価証券の売買をする行為」に該当すると認められる。


(3) 有価証券の売買その他の取引に関し、重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為

 センチュリー証券株式会社は、平成12年12月から同13年1月にかけて、他社株券償還特約付社債券の売出期間経過後における販売に際し、多数の顧客に対し、適正な取引価格よりも高い売出価格と同値の取引価格を提示することにより、重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示を行った。

 上記行為は、証券取引法第42条第1項第9号に基づく証券会社の行為規制等に関する内閣府令第4条第1号に規定する「有価証券の売買その他の取引に関し、重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為」に該当すると認められる。


(4) 証券会社としての適正性を欠いた業務運営

 前回検査に引き続き今回の関東財務局の検査においても、上記のような多数の法令違反行為が認められたが、これら多数の法令違反行為が引き続き発生したことは、以下のような要因によるものと認められる。

マル1 代表取締役社長は、コンプライアンスの重要性に対する認識が著しく欠如していることから、前回検査の指摘に対し会社として決定した改善策を実行するに必要な組織体制の整備、予算確保等を含めた具体的な指示・行動を行っておらず、また、業務運営について議論すべき取締役会等において、コンプライアンスに関する議論を十分に行なわず、専ら収益向上のための営業施策の検討と指示に終始している等、コンプライアンス面の経営責任を果たしているとは認められない。
 更に、各取締役においても、コンプライアンスの重要性に対する認識が欠如していることから、取締役自らが、顧客面談記録を捏造し、違法行為の再発を助長している事例も認められた。

マル2 内部管理統括責任者は、自己の責務を内部管理統括補助責任者任せにしており、同補助責任者をはじめ営業責任者及び内部管理責任者に対する指導、監督を行っていないなど、内部管理統括責任者としての職責を果たしていない。

 このように、センチュリー証券株式会社は、代表取締役社長をはじめとする経営陣等は、コンプライアンスの重要性に対する認識が欠如していることから、収益向上を意図した営業推進のみに注力し、コンプライアンスの徹底や内部管理体制等の整備に積極的に取り組むことを怠っており、これらは、証券会社としての適正性を欠いた業務運営であると認められる。

 

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