犯則事件の調査結果に基づく勧告について


平成14年6月13日
証券取引等監視委員会

1.勧告の内容

 証券取引等監視委員会は、本年3月20日に東京地方検察庁検察官に対して告発した志村化工株式会社株式の相場操縦事件に係る犯則調査の結果、下記のとおり、イー・トレード証券株式会社(東京都千代田区神田神保町、代表取締役社長 井土太良、資本金10,001百万円、役職員約180名)及び当該証券会社の使用人に係る法令違反の事実が認められたので、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分及びその他の適切な措置を講ずるよう勧告した。


2.事実関係

○ 実勢を反映しない作為的相場が形成されることとなることを知りながら一連の有価証券の売買取引の受託等をする行為

 資産管理部課長(外務員)は、志村化工株式会社株式に係る相場操縦(本年3月20日、当委員会より東京地方検察庁検察官に対して告発)において、平成13年1月15日から同年1月19日の5取引日にわたり、犯則嫌疑者から、同社株式について実勢を反映しない作為的相場が形成されることとなることを知りながら一連の同社株式の売買取引を受託・執行した。
 上記受託行為は、証券取引法第42条第1項第9号に基づく証券会社の行為規制等に関する内閣府令第4条第3号に規定する「実勢を反映しない作為的相場が形成されることとなることを知りながら一連の有価証券の売買取引の受託等をする行為」に該当すると認められる。
 また、イー・トレード証券(株)は、会社として適切な管理・監督を行っていれば、上記受託行為により作為的相場が形成されることとなることを知り得る状況であったにも関わらず、扱者の法令違反行為を未然に防止できなかったことから、上記行為は会社の行為に該当すると認められる。


【参考1】志村化工株式会社株式にかかる相場操縦事件について

 証券取引等監視委員会は、志村化工株式会社株式に係る相場操縦が証券取引法違反に当たるとして、平成14年3月20日、犯則嫌疑者3名を東京地方検察庁検察官に対して告発した。(平成14年3月20日、被告発人3名について公訴の提起が行われており、現在、東京地方裁判所において公判係属中。)
本件におけるイー・トレード証券の関与は以下のとおり。

○嫌疑者Aは、他の2名の嫌疑者と共謀の上、平成13年1月12日から同年1月19日まで6取引日にわたり、イー・トレード証券ほかの証券会社を介し、東証一部上場銘柄である志村化工株式会社株式につき、その株価の高値形成を図り、同社株式の売買を誘引する目的をもって、連続した成行又は高指値注文により高値を買い上がるなどの一連の売買取引を行うことにより、株価を546円から719円まで高騰させるなど、いわゆる株価の変動操作等を行った。

○このうち、1月15日から1月19日の5取引日の間にイー・トレード証券が嫌疑者Aより受託・執行した志村化工株式は約980万株。これは同期間中に犯則嫌疑者らが行った同社株式の全売買 約1170万株の約84%に当たる。
 この5取引日中、4取引日(15日、16日、18日、19日)の高値がイー・トレード証券を介した嫌疑者Aの買付けにより形成された。
 また、この間の嫌疑者Aからの買付け注文226件の約59%に当たる133件が成行又は高指値による注文、買い約定件数793件の約38%に当たる303件が買上り買付けであった。

○具体的な手口の例は以下のとおり。

・引け間際である午後2時30分以降、頻繁に高指値や成行の買付け注文を入れて買い上がり、株価を引き上げる。

・直前約定値より高い指値や成行の買付け注文を出すとともに、直前約定値より安い価格帯にも買付け注文を発注する。(買い需要が強いと見せかけて第三者の買いを誘引する。)

・ほとんど約定が期待できない安い価格帯に買付け注文を入れ、引けまで場にさらしたままにしたり、注文を取り消したりする。

・節目の価格帯の売付け注文の消化を図る。

○こうした嫌疑者Aの取引は扱者である資産管理部課長(外務員)が一人で全て対応していた。


【参考2】関連条文

○証券取引法
第42条第1項
証券会社又はその役員若しくは使用人は、次に掲げる行為をしてはならない。
(中略)
第9号 前各号に掲げるもののほか、有価証券の売買(中略)に関する行為で投資者の保護に欠け、若しくは取引の公正を害し、又は証券業の信用を失墜させるものとして内閣府令で定める行為
(以下略)

○証券会社の行為規制等に関する内閣府令
第4条

法第42条第1項第9号(中略)に規定する内閣府令で定める行為は、次に掲げるものとする。
(中略)
第3号 特定の銘柄の有価証券(中略)について、(中略)実勢を反映しない作為的相場が形成されることとなることを知りながら一連の有価証券の売買取引の受託等(中略)をする行為
(以下略)

【参考3】犯則調査に基づく勧告の実施状況

区分 4年7月

8年6月
8年7月

9年6月
9年7月

10年6月
10年7月

11年6月
11年7月

12年6月
12年7月

13年6月
13年7月

14年6月13日
勧告件数 30 11 40 36 37 34 25
  犯則調査に
基づくもの
告発件数 5

 

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