東海東京証券及びリテラ・クレア証券の勧告
(作為的相場形成)についての補足説明



.今回勧告を行った事案は、証券会社の自己売買担当者が、他の市場参加者の注文を誘うことにより自己の売買を有利にすることを意図して行った、約定させる意思のない一連の発注(いわゆる「見せ玉」)について、実勢を反映しない作為的相場形成の法令違反にあたると判断したものであるが、その主要な売買パターンは概ね以下のとおり。

 

(1)

 ザラ場における買付注文の「見せ玉」(参考図「作為的相場の形成状況」添付)

   

マル1

 特定銘柄の自己ポジションがない状態から、当該銘柄の一定数量の株式をザラ場中に買い付ける(図1)。

   

マル2

 マル1の買付注文が約定後、「買い板」を厚く見せかけて他の市場参加者からの買付注文を誘引し、株価を引き上げる目的で、その時点での最も高い買い指値(ベストビット)より下の指値で、売却予定株数の数倍の数量の約定させる意図のない買付注文を複数回に分けて発注する(「見せ玉」)(図2)。

   

マル3

 マル2の発注により他の市場参加者からの「見せ玉」より高い指値の買付注文が入ってきたところで、マル1の取得価格より高い価格の指値で売付注文を発注し、約定させる(図3)。

   

マル4

 マル3の直後に「見せ玉」を全て取り消す(図4)。

 

(2)

 ザラ場における売付注文の「見せ玉」

   

マル1

 特定銘柄の自己ポジションがない状態から、当該銘柄の一定数量の株式をザラ場中に信用で売り付ける。

   

マル2

 マル1の信用売付注文が約定後、「売り板」を厚く見せかけて他の市場参加者からの売付注文を誘引し、株価を引き下げる目的で、その時点での最も低い売り指値(ベストオファー)より上の指値で、買付予定株数の数倍の数量の約定させる意図のない売付注文を複数回に分けて発注する(「見せ玉」)。

   

マル3

 マル2の発注により他の市場参加者からの「見せ玉」より低い指値の売付注文が入ってきたところで、マル1の売付価格より低い価格の指値で買付注文を発注し、約定させる。

   

マル4

 マル3の直後に「見せ玉」を全て取り消す。

 

(3)

 引け間際における不成り買付注文(引けまでに約定しなければ引け成行き注文となる条件を付した指値の買付注文)の「見せ玉」

   

マル1

 概ね引けの5分から15分前に、特定銘柄の自己ポジションがない状態から、 当該銘柄の一定数量の株式を買い付ける。

   

マル2

 マル1の買付注文が約定後、「引けの成行き買い板」を厚くして引け値が高くなると見せかけて他の市場参加者からの買付注文を誘引し、株価を引き上げる目的で、売却予定数量の数倍の数量の約定させる意図のない不成り買付注文を複数回に分けて発注する(「見せ玉」)。

   

マル3

 マル2の発注により他の市場参加者からの「見せ玉」より高い指値の買付注文が入ってきたところで、マル1の取得価格より高い価格の指値で売付注文を発注し、約定させる。

   

マル4

 マル3の直後に「見せ玉」を全て取り消す。

 

(4)

 同一銘柄において上記(1)と(2)を繰り返し行う手法
 特定の銘柄について、上記(1)の見せ玉の発注と上記(2)の見せ玉の発注を連続して交互に繰り返す。



.今回勧告を行った事案は、行為者自身が他の市場参加者の注文を誘うことにより自己の売買を有利にすることを意図して発注した約定させる意思のない「見せ玉」であったことを認めているが、以下のような外形的・客観的状況からも「見せ玉」であることが認定できる。

 

マル1

 自己の売付(買付)注文が約定した直後に、買付(売付)注文を全て取り消している。

 

マル2

 指値の価格帯や発注の数量等が、買い板(売り板)を厚く見せかけ、他の市場参加者からの買付注文(売付注文)を誘引する効果を有するものとなっている。

 

マル3

 上記行為を反復継続して行っている。

 

マル4

 行為者の通常のディーリングの規模からして、過大な量の発注をしている。

 

マル5

 オーバーナイトで玉を持たない日計り商いをしている行為者が、上記1(3)の不成り買付注文を行っている。

 

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