(補足説明)



 投資手法の概要
 当社においては、日経225連動型上場投信(ETF)の売買と、日経225株価指数オプション取引(コールオプションの売買)を組み合わせた投資手法(以下「カバードコール戦略」という。)を策定し、当該手法による取引を顧客に勧誘していた。
 具体的には、

 

マル1

 顧客は、ETF1,000口を1単位として購入すると同時に、オプション取引については、翌限月でかつETF購入価格の上値で最も近接している権利行使価格のコールオプションを1単位売却する。

マル2

 コールオプション限月の最終売買日直前時点で、日経平均株価が権利行使価格を上回っている場合は、コールオプションを反対売買しオプション取引の決済を行うと同時にETFを売却し、一旦、ポジションを全て解消する。その後再び上記マル1の投資を行う。

マル3

 コールオプション限月の最終売買日前に、日経平均株価が権利行使価格を上回っていない場合、コールオプションは反対売買により決済し、ETFはそのまま継続保有する。その後、ETFの実勢価格の上値で最も近接している権利行使価格のコールオプションの売りを再度行う。

という投資手法である。



 誤解を生ぜしめるべき表示その1
 当社本店営業部長が作成し、当該投資手法の勧誘に際し顧客に交付して商品内容を説明していた「ETFを利用したカバードコール戦略のご提案」(以下「提案書」という。)は、ETFを時価10,500円で1,000口を1単位として購入するとともに、購入価格の上値で最も近接した権利行使価格11,000円のコールオプションを1単位売却し、250,000円のプレミアムを得るという具体例を示して当該投資手法の内容について解説するものであるが、取引開始後に日経平均株価が11,000円を上回らない場合に関する説明として、以下の記載がされている。
 

 
3)限月取引最終日(又は、SQ)までに、日経平均株価が11,000円を上回らない場合。

反対売買(又は、権利の自動消滅)により、受取のコールプレミアムは利益(雑所得)となる。
2)の取引を再度行う。(その時点のETF≒日経平均株価水準により、10,500円、11,000円のコールオプションが売却銘柄対象となる。)

限月毎に、年間12回の取引が可能であり同一条件とすると、年間、
 239,500円×12回-2,625円(反対売買(又は、権利消滅)時のオプション手数料と消費税)×12回=2,842,500円の収益
この金額は課税前で、収益として年利換算すれば約27%の利回りであり、ヘッジコストとしては日経平均株価で7,600円台までヘッジしたことになる。


 しかし、日経平均株価が11,000円を上回らない場合に当該投資手法で年率27%の収益を得る場合は、オプション取引を反対売買により決済せずにSQ決済し、毎月の限月取引最終日に日経平均株価指数が10,500円付近である状況が年間を通じて12回連続して発生し、かつ、毎月権利行使価格11,000円のコールオプションが25万円で売却できる場合に限定される。
 提案書には、そうした前提条件が明記されていないこと等から、当該記載は、顧客に当該投資手法の投資効果について「本件カバードコール戦略が、日経平均株価が11,000円を上回らない場合に、年利27%もの高い収益が得られるような投資手法である」との誤解を生ぜしめるべきものと認められる。

 なお、現実の日経平均株価指数の動きや以下の点等を考慮すると、上記の状況が現実の市場で発生する可能性はほとんどない。

 

 一年間を通じて株価が膠着している状態において権利行使価格11,000円のコールオプションの市場価格が常に一定の価格で売却できる可能性はオプションの理論からするとほとんどない(株価が膠着している状況では市場参加者が予測するボラティリティが低下していくことが多く、そうするとオプションの価格が低下していくことが想定される。)。

 実際の本件戦略では、株価の膠着局面や下落局面においては、常にSQ決済ではなく反対売買によってオプションの決済を行っており(実際に50顧客のオプション買い戻しコストの実績は一単位あたり平均約18万円となっている。)、計算式に買い戻しコストの部分に関する記載がなくSQ決済を前提としていると思われる当該記載の収益額や利回りはそもそも本件戦略におけるオプションの収益として発生する可能性のないものである。



 誤解を生ぜしめるべき表示その2
 また、当社本店営業部長は既に本件戦略の取引を行っている顧客の投資実績が一覧表になっている「ETFカバードコール総合管理台帳」(以下「残高表」という。別紙参照)を作成し、勧誘時に本件戦略の投資実績の問い合わせがあった場合に、当該残高表を顧客に提示している。

 残高表は、当該投資手法による取引を行っている顧客毎のETF及びコールオプションの保有状況と取引開始以降の損益の状況を並べた一覧表であるが、各顧客の損益状況を示す「合計損益」部分には、各顧客が保有するETFの含み損益が算入されておらず、そのため当該投資手法による取引全体の実際の損益の状況を反映したものとなっていない。また、残高表には、残高表作成当時のETFの価格と顧客毎のETFの買付け数量・単価並びに全顧客のETF評価損益の合計額が別途記載されているが、各顧客の保有するETFの含み損益はどこにも表示されていない。
 このため、例えば、平成15年1月末時点の残高表を見ると、50名の個人顧客のうち7割以上の38名の「合計損益」が黒字の実績となっているが、各顧客の保有するETFの含み損益等を加えた当該投資手法による取引全体の実際の損益状況は、50顧客全員が赤字の投資実績となっている。
 本店営業部長が本件戦略勧誘の際に、当該残高表を提示して、各顧客の本件戦略の投資実績について説明をした行為は、本件戦略の投資実績という重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為であると認められる。

 なお、本店営業部長は、残高表を自らのパソコンの中の表計算ソフトのファイルで作成、管理を行っていたものであるが、当該ファイルには本件残高表にある顧客毎の「受取プレミアム合計」「ETF売却利益」「合計損益」の項目の他に、この項目の右の方にETFの含み損益を示す項目や、本件戦略の実現損益とETF含み損益の本件戦略の合計の損益を示す項目が設けられており、顧客毎に数値の記載がされている。本店営業部長は、これらのETFの含み損に関する項目の部分を除いて印刷をして残高表を作成し、顧客に提示していた。



 当社の勧誘を受けて当該投資手法による取引を行っている顧客の属性
 平成15年1月末時点の個人顧客50名は、いずれもオプション取引は初めての顧客である。年齢構成は、60歳未満が12名、60歳以上70歳未満が22名、70歳以上80歳未満が15名、80歳以上が1名となっている。

(別 紙)(PDF:7KB)

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