株式会社キャッツ株式に係る相場操縦事件に関して行われた証券会社における不適切な行為に対する検査結果に基づく勧告について

平成16年6月30日
証券取引等監視委員会



.勧告の内容

 関東財務局長が、株式会社キャッツ株式に係る相場操縦事件に関して、ゲット證券株式会社(東京都中央区、資本金約8億円、役職員約20名)及び丸三証券株式会社(東京都中央区、代表取締役社長 長尾 榮次郎、資本金100億円、役職員約1,060名)を検査した結果、下記のとおり当該証券会社並びにその役員及び使用人に係る法令違反等の事実が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分及びその他の適切な措置を講ずるよう勧告した。





.事実関係

 


(1)


 実勢を反映しない作為的相場が形成されることとなることを知りながら一連の有価証券の売買取引の受託等をする行為

 平成16年2月24日、当委員会が東京地方検察庁検察官に対し告発した株式会社キャッツ株式に係る相場操縦事件に関連して、

 


マル1


 ゲット證券株式会社代表取締役社長、取締役営業第一部長(当時)、営業第一部次長(当時)及び営業部長は、その業務に関し、平成13年6月5日から平成14年10月28日の間、当該事件に係る犯則嫌疑者(告発と同時に起訴。以下「被告人」という。)が、高指値注文の連続発注による買付け等の方法により、当該株式の株価の引上げを意図していることを知りながら、当該株式の売買注文を受託、執行した。
 なお、当該営業部長は、当社に入社する以前に在籍していた明和證券株式会社においても、被告人が高指値注文等により当該株式の株価の引上げを意図していることを知りながら、当該株式の売買注文を受託、執行している。


マル2


 丸三証券株式会社は、平成13年6月8日から同年7月10日の間、被告人が高指値注文による買付け等の方法により、当該株式の株価の引上げを意図していることを知りながら、当該株式の売買注文を受託、執行した。



と認められる。

 ゲット證券株式会社及び丸三証券株式会社並びにその役員及び使用人が行った上記行為は、証券取引法第42条第1項第9号に基づく証券会社の行為規制等に関する内閣府令第4条第3号に規定する「実勢を反映しない作為的相場が形成されることとなることを知りながら一連の有価証券の売買取引の受託等をする行為」に該当すると認められる。


(2)


 なりすましの疑いのある取引について本人確認を行わない行為

 ゲット證券株式会社営業部長は、平成15年1月6日以降、被告人が複数の法人口座において、当該法人になりすまして取引を行っていることを知りながら、本人確認を行わないまま、取引を受託、執行した。

 当該証券会社が行った上記行為は、金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律施行令第3条第1項第29号に規定する「取引の相手方が取引の名義人又は代表者等になりすましている疑いがある場合における当該取引」を行うに際し本人確認を行わない行為に該当し、金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律第3条第1項に違反すると認められる。


(3)


 内部管理の不備及び証券会社としての不適切な業務運営等

 ゲット證券株式会社に対する検査において、上記のような代表取締役社長を含む役職員による法令違反行為が認められたが、このような法令違反行為が発生したことは、以下のような要因によるものと認められる。

 


マル1


 監査部は、社内基準等から問題と思われる受注が継続されていたことを認識し、また、東京証券取引所への取次ぎ証券会社から注意喚起が行われたにもかかわらず、取引停止等の実効性のある措置を講じていない。

マル2

 当社は、被告人に係る複数の信用取引口座に対し、代表取締役社長の特例承認等により、過大な信用供与を行うなど、被告人による大量の取引を可能なものとしており、証券会社として極めて不適切な業務運営を行っている。

マル3

 役員及びコンプライアンス担当者は、コンプライアンスに対する意識が著しく欠如する等、適切な業務執行を実現するための姿勢が見られず、その責務を果たしていない。



 このように、ゲット證券株式会社は、代表取締役社長をはじめとする経営陣等のコンプライアンスの重要性に対する認識が著しく欠如していること等から、被告人の法令違反行為を含む不適切な行為に加担し、かつ管理部門もそれらを知りながら容認している等、内部管理に極めて問題があると認められるとともに、証券会社としての業務運営上、重大な不備があると認められる。

補足説明
(PDFファイル・容量は9kbあります。)

 

 

 

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