大和証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について


平成18年11月22日
証券取引等監視委員会

.勧告の内容
 証券取引等監視委員会は、大和証券株式会社(東京都千代田区、資本金1,000億円、役職員6,638名)を検査した結果、下記のとおり、当該証券会社及び当該証券会社の使用人に法令違反の事実が認められたので、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分及びその他の適切な措置を講ずるよう勧告した。



.事実関係

 

(1

)内部者取引のおそれのあることを知りながら顧客の有価証券の売買の受託をする行為

 大和証券株式会社姫路支店投資銀行業務担当課長代理A(以下「課長代理A」という。)は、その業務に関し、B社及びB社役員により行われたB社株式に係る内部者取引のうち、B社役員による平成17年10月4日及び6日の当該証券会社姫路支店に開設されたC社名義口座での計2回、1,500株の買付注文について、以下の事情から、証券取引法第166条第1項の規定に違反するおそれのあることを認識していたにもかかわらず、委託注文書を徴求するなどの必要な対応をとることなく、当該買付注文を受託していた。

 

マル1

 C社名義口座開設の経緯等から、同口座がB社役員の借名口座ではないかとの疑念を抱いていたこと。

マル2

 当該買付注文受注時点において、B社に株式分割を行うという公表されていない重要事実が存在することを認識していたこと。

マル3

 当該買付注文が、B社役員の指示によるものではないかとの疑いを持っており、かつ、同社の他の役員により発注されたものであったこと。

 


 当該証券会社及び課長代理Aが行った上記行為は、証券取引法第42条第1項第10号に基づく証券会社の行為規制等に関する内閣府令第4条第8号に該当するものと認められる。


(2


)顧客の有価証券の売買に関する管理の状況が法人関係情報に係る不公正な取引の防止上十分でないと認められる状況

 上記(1)のとおり、課長代理Aは、その業務に関し、内部者取引のおそれのあることを知りながら顧客の有価証券の売買の受託をしていたものであるが、大和証券株式会社姫路支店長D(在籍期間:平成13年4月から平成16年12月まで。以下「支店長D」という。)及びその後任の支店長E(同:平成16年12月から平成18年3月まで。以下「支店長E」という。)は、以下のとおり、内部者取引を防止するための十分な対策を講じないまま業務を行っていた。

 

マル1

 支店長Dは、その業務に関し、以下のとおり、内部者取引を防止するための十分な対策を講じていなかった。

 

 社内では投資銀行業務担当者が有価証券の売買取引の受託担当となることを運用上、原則として禁止する指導が行われているにもかかわらず、課長代理AがC社名義口座からの売買注文の受託を担当することを指示、容認していた。

 C社名義口座でのB社株式の売買等に関し、内部者取引等の観点から注意を要するとの懸念を持っていたことから、課長代理Aに対しては内部者取引等には注意するよう指示していたとするものの、同支店の内部管理責任者等に対しては同様の指示はしておらず、また、自ら同口座でのB社株式の売買等についての確認等を行っていなかった。

マル2

 支店長Eは、その業務に関し、C社がB社の紹介顧客であり、B社株式の買付けを継続して行っていること、課長代理AがC社名義口座からの売買注文の受託を担当していること、及び上記(1)マル2の重要事実が存在することを認識していたにもかかわらず、内部者取引を防止するための十分な対策を講じていなかった。

 


 支店長D及びEが必要な対策を講ずることなく業務を行っていた、当該証券会社の上記の業務の状況は、証券取引法第43条第2号に基づく証券会社の行為規制等に関する内閣府令第10条第4号に該当するものと認められる。


(3


)本人確認法上の本人確認を行わないまま、顧客の有価証券の売買の注文を受託する行為

 課長代理Aは、その業務に関し、上記(1)マル1のとおり、C社名義口座がB社役員の借名口座ではないかとの疑念を抱いていたにもかかわらず、当該口座について形式的な本人確認を行ったのみで、金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律に定める本人確認を行っていなかった。

 当該証券会社及び課長代理Aが行った上記行為は、金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律施行令第3条第1項第29号に規定する「取引の相手方が取引の名義人になりすましている疑いがある場合における当該取引」を行うに際し、本人確認を行わない行為に該当し、金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律第3条第1項に違反するものと認められる。

 

 

 

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