金融庁設置法第21条の規定に基づく建議について


平成19年2月16日
証券取引等監視委員会

 証券取引等監視委員会は、金融庁設置法第21条の規定に基づき、本日、金融庁長官に対して、下記のとおり建議を行った。



 

議1. 引受審査について

 証券会社の検査の結果、(1)主幹事会社が、新規上場・公募増資を予定している発行体の業績の見通しについて適切な審査を行っていないものと認められる事例、(2)主幹事会社が、上場会社による公募増資において発行体の財政状態、経営成績等について何ら引受審査を行っていない事例が認められた。

 株券等の募集・売出しに際して引受けを行おうとする証券会社には、発行体の財政状態、経営成績、業績の見通し等の厳正な審査を通じて、投資者が当該募集・売出しについて適切な投資判断をなし得る状況を確保するとともに、投資者が不測の損害を被ることを未然に防止する役割が期待されているところ、証券会社がこのような引受審査を適切かつ十分に実施することが確保されるよう、適切な措置を講じる必要がある。


議2. 市場指標を歪める取引の規制について

 証券会社の検査の結果、証券会社のトレーダーが、東京証券取引所における東証株価指数先物取引のある限月の売買取引(以下「本件TOPIX先物取引」という。)において、同一委託者による同一指数での買付注文と売付注文とを対当させることにより、権利の移転を目的としない取引を大量かつ反復継続的に成立させ(以下、このようにして成立した取引を「本件仮装取引」という。)、その結果、当日の本件TOPIX先物取引の約定指数の出来高加重平均値(いわゆる「市場VWAP」)を当該トレーダーに有利な方向に変動させるとともに、当日公表された本件TOPIX先物取引の出来高が、本件仮装取引に対応する枚数分増加するという事態を生じさせていた事例が認められた。

 市場VWAPは、取引関係者において広く参照されている数値であり、当該数値を実勢を反映しない数値とする取引は、当該数値に基づいて行われる市場内・外における他の取引の内容を歪めさせ得るものである。また、仮装取引により、その対象とされた取引の出来高を現実の需給に基づかない取引によって増加させる行為は、出来高を参照しつつ投資判断を行う市場関係者の投資判断を誤らせ得るものである。

 ついては、証券会社が市場VWAP、あるいは、出来高といった市場指標を実勢を反映しないものに歪めさせる取引を行うこと及び証券会社がこれらの取引を受託することが規制されるよう、適切な措置を講じる必要がある。


議3. 法定帳簿の保存期間の見直しについて

 平成18年証券取引法改正においては、罰則の見直しが行われ、虚偽有価証券報告書等の提出(第24条第1項ほか)、不公正取引(第157条)、風説の流布・偽計等(第158条)、及び相場操縦行為等(第159条)に係る懲役刑が5年以下から10年以下に引き上げられている。

 これに伴い、これらの罪に係る公訴時効については、刑事訴訟法第250条の規定によって5年から7年へと延長されている。

 一方、証券取引法第188条に定める証券会社等の業務に関する書類(以下「法定帳簿」という。)については、保存期間も含め具体的には証券会社に関する内閣府令第60条に規定されているところであるが、そのうち注文伝票については保存期間が5年とされているところであり、5年から7年へと延長された公訴時効に対応したものとなっていない。

 そのため、法定帳簿の保存期間につき、公訴時効の延長も勘案しつつ、適切に見直す必要がある。
 

 

 

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