東京プリンシパル証券株式会社に対する検査結果について


平成19年5月9日
証券取引等監視委員会

.検査結果の概要
 証券取引等監視委員会(以下「委員会」という。)は、証券取引法等に基づき、東京プリンシパル証券株式会社(当時。平成19年1月13日以降は東京プリンシパル・セキュリティーズ・ホールディング株式会社。以下同じ。東京都港区、資本金2億円、役職員11名)に対し、公益又は投資者の保護を図ることを目的として、同社の経営管理及び業務運営の状況等を把握するため、平成19年1月11日(木曜日)、検査着手しようとしたところ、当社は、今日は協力できない等として検査を拒んだ。同日午後、当社は法定の公告等を行わないまま証券業を廃止したことにより、顧客との取引の結了を目的とした範囲内においてのみ証券会社とみなされることとなったため、委員会は、顧客との取引の結了が果たされたか否かについてのみを検証することとなった。
 翌12日(金曜日)、検査官は再び当社を臨店したが、店頭に「社内行事のため休業」とする旨の張り紙が貼り付けられており、検査を実施することができなかった。
 翌13日(土曜日)、当社は証券業に関連する書類を裁断した。
 翌週の1月15日(月曜日)、検査官は三たび当社を臨店したが、当社は対応できる人間がいない等として検査を拒んだ。
 翌16日(火曜日)から検査官は検査に着手し、今回検査の目的となった顧客との取引の結了が果たされたか否かについて検証したところ、顧客との取引に係る重要な書類や、顧客の出資金について適切な管理を行っておらず、顧客との取引の結了が果たされたか否かについて確認できない状況であった。


.委員会の対応
 以上のことから、今回検査においては、委員会が当初実施するとしていた、公益又は投資者の保護を図ることを目的とした当社の経営管理及び業務運営の状況等を把握できず、当社が、勧誘を行っている複数種類の匿名組合出資持分についても証券取引法第2条に規定する有価証券に該当するか否かについて確認できず、更に有価証券等に係る顧客取引の結了が果たされたか否かについても確認できない状況であった。
 今回検査において具体的に認められた法令違反等の詳細は以下のとおりであり、「顧客取引の結了が確認できない状況」については、投資者保護上重大な問題であると認められることから、監督部局へ通知するとともに、「検査を拒み、忌避する行為」については法令違反に該当することから、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。


.法令違反等の詳細
 
(1)  検査を拒み、忌避する行為
 
マル1  代表取締役社長による検査を拒む行為
 平成19年1月11日(木曜日)、東京プリンシパル証券株式会社代表取締役社長(以下「社長」という。)は、委員会の検査官から、証券取引法、金融先物取引法及び、金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律の規定に基づく検査を実施する旨の告知を受けたが、今日は協力できない等として検査を拒んだ。主任検査官は社長を説得し続けたが、社長はこれを拒み続けたため、検査官はやむを得ず当社を退社した。
 その後当社は、「臨時株主総会を開催し、議決したものである。」として、同日、関東財務局長に対し、法定の公告等を行わないまま、「証券業の廃止届出書」を発送した。(翌1月12日に到達。)
 翌1月12日(金曜日)、検査官は、検査のため再び当社を臨店した。しかしながら、当社の店頭に休業とする旨の張り紙が貼り付けられており、検査に着手することができなかった。(なお、前日、検査官が臨店した時は、当社より「翌日休業」との話はなかった。)
 翌週の1月15日(月曜日)、検査官は検査のため三たび当社を臨店したが、社長は、対応する人間がいない等として検査を拒んだ。主任検査官は社長を説得し続けたが、社長はこれを拒み続けたため、検査官はやむを得ず当社を退社した。
 以上の状況であったことから、検査官は平成19年1月15日(月曜日)まで検査に着手することができなかった。
 なお、翌1月16日(火曜日)、検査官は四たび当社を臨店し、検査を実施する旨を告知したところ、社長から、協力する旨の発言があったため、検査に着手した。

マル2

 監査役による検査を忌避する行為
 上記マル1のような状況の中で、東京プリンシパル証券株式会社 監査役は、平成19年1月13日(土曜日)、当社備付けのシュレッダーを用いて、当社の証券業に関連する書類を裁断した。

 東京プリンシパル証券株式会社が行った上記マル1の一連の行為及びマル2の行為は、検査を受忍せず、当該検査を拒み、忌避する行為であると認められる。
 上記(1)の一連の行為は、証券取引法第59条第1項(同法第198条の5第8号及び同法第207条第1項第4号)及び金融先物取引法第85条第1項(同法第152条第3号及び同法第161条第1項第3号)に、(2)の行為は、証券取引法第59条第1項(同法第198条の5第8号及び同法第207条第1項第4号)にそれぞれ違反すると認められる。
 本件については、法令違反に該当することから、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

(2)

 顧客取引の結了が確認できない状況
 上記(1)マル1記載のとおり、東京プリンシパル証券株式会社は、公告等による顧客への周知を図ることなく証券業の廃止を決定し、また、平成19年1月12日付で関東財務局長により金融先物取引業者としての登録も取り消されているため、証券取引法第58条第1項において準用する同法第55条第5項及び金融先物取引法第90条第1項において準用する同法第84条第5項に規定するところにより、有価証券及び金融先物取引に係る顧客との取引を速やかに結了すること(以下それぞれ「有価証券に係る顧客取引の結了」及び「金融先物取引に係る顧客取引の結了」という。)が必要となる。
 今回検査に着手した平成19年1月16日において、当社は既に証券業を廃止し、金融先物取引業者としての登録も取り消された状態であったが、証券取引法第58条第1項及び金融先物取引法第90条第2項に規定するところにより、顧客取引を結了する目的の範囲内においてなお証券会社及び金融先物取引業者としてみなされることから、有価証券に係る顧客取引の結了及び金融先物取引に係る顧客取引の結了の確認を目的とした検査を行ったところ、以下のような状況が認められたものである。
 
マル1  証券業及び金融先物取引業
 東京プリンシパル証券株式会社が募集の取扱いを行っていた証券取引法第2条第2項の規定により有価証券とみなされる権利(以下「みなし有価証券」という。)たる匿名組合出資持分及び外国投資信託の有価証券取引並びに金融先物取引について、当社は、結了すべき顧客との取引はない等としている。しかしながら今回検査において検証したところ、みなし有価証券たる匿名組合出資持分に係る顧客からの出資金の管理を適切に行っていないことが認められた。更に、今回検査においては、上記(1)マル1の状況で検査着手したため当社から提供された資料の範囲においての検証となったことや、上記(1)マル2のとおり有価証券に係る顧客取引の結了を確認するために必要な書類である証券業に関連する書類が裁断されていたことから、有価証券に係る顧客取引の結了及び金融先物取引に係る顧客取引の結了が果たされたか否かについて確認できない。

マル2

 その他業務
 東京プリンシパル証券株式会社は、上記マル1の業務以外に、複数種類の匿名組合出資持分の取得の勧誘を行っているとしており、当該匿名組合出資持分に係る出資金については、匿名組合契約に基づきその50%以上を外国法人の発行する株式等へ出資していることから、みなし有価証券に該当しないとしている。(以下、当該匿名組合出資持分を「海外ファンド」という。)
 当社は、海外ファンドについて、みなし有価証券に該当しないとしているものの、仮に該当すると認められた場合は、有価証券に係る顧客取引の結了が必要となることから、海外ファンドがみなし有価証券に該当するか否か、該当する場合には有価証券に係る顧客取引の結了が果たされたか否かについて検証したところ、海外ファンドへ出資を行う旨の顧客の意思が表示された書面等がほとんど存在せず、当該書面等の管理が不適当であることや、ファンド間における金銭の混同が行われていたことから、そもそも各海外ファンドの出資金総額を把握することが困難である状況が認められた。更に、今回検査においては、上記(1)マル1の状況で検査着手したため当社から提供された資料の範囲においての確認となったことから、当社が取り扱っている海外ファンドが証券取引法第2条に規定する有価証券に該当するか否かについて確認できず、その結果、有価証券に係る顧客取引の結了が果たされたか否かについても確認できない。

 以上のとおり、当社は、顧客との取引に係る重要な書類や、顧客の出資金について適切な管理を行っておらず、そのため、有価証券に係る顧客取引の結了及び金融先物取引に係る顧客取引の結了が果たされたか否かについて確認できない状況となっていることからすると、当社のかかる行為は投資者保護上重大な問題であると認められる。
 本件については、投資者保護上重大な問題であると認められることから、監督部局へ通知した。
 
 

 

 

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