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一般信用取引 |
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イ |
早期に新規信用取引停止等の措置を講じていた社においても立替金が発生している原因のひとつが、本件関連顧客が一般信用取引を利用していたため、既存ポジションを減少させることが困難であったことである。今回立替金が発生した社の中には一般信用取引において発生した社がかなりある。 |
ロ |
今回の検査実施先の中には、一般信用取引のリスク特性に留意した与信リスク管理が不十分であったと認識し、一般信用取引に対する代用有価証券に係る規制等の改善策を実施している社があった。 |
ハ |
なお、早期に新規信用取引停止等の措置を講じた社の中には、本件銘柄の新規信用取引を停止したこと等から本件銘柄の信用取引はゼロであったものの、本件銘柄を代用有価証券として受け入れていたため立替金が発生した社があり、ある社はその改善策として、流動性等を加味して代用有価証券の掛け目を変更する社内ルールを整備している。 |
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新興市場等の流動性リスク |
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イ |
今回の検査実施先の中には、自己資本規制比率に基づく信用取引残高総額の管理と、委託保証金(追証)管理の観点からの口座管理以外は、顧客毎の建玉限度額の設定のみで、それ以上特段の与信リスク管理を行っていなかった社が多い。 |
ロ |
しかしながら、今回明らかになったのは、流動性リスク等如何によっては、信用取引に係る与信リスクがかなり大きなものとなることであり、今回の検査実施先の中には、流動性リスク等に留意した与信リスク管理が不十分であったと認識し、改善策を実施・検討している社が多い。また銘柄別管理を新たに導入した社もあった。 |
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「2階建て取引」 |
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イ |
代用有価証券と建玉とが同一銘柄であるいわゆる「2階建て取引」が、今回立替金が発生した口座の中にはかなりあった。その多くが、当初委託保証金として現金を預託していたものの、当該保証金により建玉を現引きし、代用有価証券として入庫したことから、事後的に「2階建て取引」となったものであった。 このことが、急激な株価の下落に対応するため建玉の処分を開始したものの、株価の下落により建玉及び代用有価証券の評価額の下落が同時に発生し、多額の立替金の発生に結びついたものと考えられる。 |
ロ |
「2階建て取引」に対する与信リスク管理のあり方については、各社の与信リスク管理態勢全体の中で議論する必要があるが、今回の検査実施先の中には、株価急落時の「2階建て取引」のリスク特性に留意した与信リスク管理が不十分であったと認識し、改善策を実施・検討している社があった。 |
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対面取引とネット取引 |
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イ |
今回立替金の発生した口座のほとんどがネット取引口座であったが、ネット取引を取り扱う証券会社においては、平成15年6月30日の当委員会の建議にもあるように、対面取引とは異なる、インターネットの非対面性という特性に配慮した顧客管理態勢や与信リスク管理態勢を構築する必要があると考えられる。 |
ロ |
しかしながら、今回の検査実施先の中には、対面取引においては原則「2階建て取引」を認めていないが、ネット取引においては認めている社があった。また、ネット取引の建玉限度額を対面取引より大きく設定している社もあった。更に、信用取引開始基準等において、ネット取引について対面取引より緩和されたものとなっている社も多い。 |
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顧客管理部門や売買管理部門とリスク管理部門の連携 |
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イ |
本件に対する対応が遅れた社の中には、顧客管理部門や売買管理部門がリスク管理部門に対して取引の状況等の情報を伝達していなかった、あるいはリスク管理部門がそうした情報をリスク管理に反映させていなかった社が認められた。今回の検査実施先の中には、この点を与信リスク管理上不十分であった点として認識し、改善策を実施・検討している社も多い。 |
ロ |
なお、今回多額の立替金を発生させた社の中には、売買審査において高い売買関与率により複数回抽出されていたにも関わらず、それを看過していた事例があった。 |
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業界内における情報の共有化 |
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イ |
今回の検査実施先のうち早期に本件銘柄等に対応した社の多くは、同業他社の対応状況に関する情報、東京証券取引所からの照会等を契機として、新規信用取引停止等の措置を講じている。 |
ロ |
本件のような、ネット取引の非対面性等を悪用し、多数の証券会社において多数の借名口座を開設する不公正取引に対応するためには、個人情報の保護に留意した上で業界内の情報交換や共同データベースの構築、証券取引所による迅速かつ横断的な情報提供等による業界内における情報の共有化が必要と考えられる。 |
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