楽天証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

平成21年3月13日

証券取引等監視委員会


  • 1.勧告の内容

    証券取引等監視委員会は、楽天証券株式会社(東京都品川区、資本金74億円、役職員261名)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る法令違反の事実が認められたので、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

  • 2.事実関係

    • ○ 金融商品取引業に係る電子情報処理組織の管理が十分でないと認められる状況

      楽天証券株式会社(以下「当社」という。)は、(1)平成20年11月11日に、すべての顧客に対して前場を含め約7時間にわたる受注停止という影響を及ぼした大規模システム障害(以下「平成20年11月11日の障害」という。)、及び(2)平成21年1月13日に、3,024名の顧客に対して前場を含め最長5時間弱にわたる発注遅延という影響を及ぼしたシステム障害(以下「平成21年1月13日の障害」という。)を発生させたものであるが、以下のとおり、当社においては、システム障害による被害の拡大を未然に防ぐための、又は被害を最小化するための障害復旧態勢の整備が不十分であり、障害発生時に顧客に無用の混乱を生じさせないための適切な措置が講じられていないことが認められた。

      • (1) 平成20年11月11日の障害

        • マル1 当社は、データベース製品の不具合によって発生した障害(以下「1次障害」という。)の復旧作業中、担当ベンダーによるオペレーションの順番相違等により、「日本株式の逆指値注文の受注停止」等といった2次障害を発生させた。

          上記2次障害は、このようなリスクの高い臨時オペレーションに対して、担当ベンダー以外の者が結果確認をするダブルチェック態勢等がとられていなかったこと、及び当社が当該オペレーションの終了報告を担当ベンダーから受けるのみで、結果確認をしていなかったことに起因するもので、オペレーションミスの防止態勢に不備があったものと認められる。

        • マル2 当社は、夜間バッチ処理が遅延したため自動起動しなかったシステムを手動起動で復旧する作業を担当ベンダーへ指示したが、担当ベンダーの参照したマニュアルに一部記載漏れがあったため、当該作業において、一部処理の起動漏れが発生し、「先物・オプションの大阪証券取引所イブニングセッション受注開始遅延」等といった2次障害が発生した。

          上記2次障害は、当該マニュアルの実効性が確保されていなかったこと、及び障害影響範囲を確認していなかったこと等、管理・確認態勢の不備に起因するものと認められる。

        • マル3 当社においては、受注停止及びログイン停止の解除というような重要な判断における判断基準又は判断指針が事前に具体化及び明確化されていなかったという態勢上の不備から、当社重度システム障害対策委員会は、障害復旧状況を確認しないまま、受注停止及びログイン停止の解除を行い、その結果、当社は、過誤訂正の対象となる注文を受けてしまうなどの結果を発生させた。

      • (2) 平成21年1月13日の障害

        • マル1 当社は、平成20年2月、2つに分かれていたデータセンターを統合するに際し、発注システムのネットワーク設定という重要な作業において、設定作業ごとにチェックを入れるなどの見落とし防止の工夫やエビデンスによる確認作業等を行わなかったため、誤設定を看過し、その結果、平成21年1月13日の障害を発生させており、当社のオペレーションミスの防止態勢には不備があると認められる。

        • マル2 当社は、上記誤設定により、東京証券取引所との接続が断たれてしまった発注システムに滞留していた注文を、正常に接続されていた発注システムに振り替えるといった復旧作業を行ったものの、準備されていた障害復旧手順書においては、上記作業ケースが想定されておらず、復旧作業に相当の時間を要してしまった。

        • マル3 当社においては、「受注済・発注未済取引の失効処理」を実施する判断基準又は判断指針が事前に具体化及び明確化されていなかったことから、訂正・取消しが行われた注文についての当社重度システム障害対策委員会による失効の判断が遅れ、失効処理が完了するまでの間、当該注文を行った顧客は訂正・取消しもできず、相当の時間、当該注文分の売買余力が拘束されていた状態にあった。

    当社における上記の業務の運営の状況は、金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第14号に規定する「金融商品取引業等に係る電子情報処理組織の管理が十分でないと認められる状況」に該当するものと認められる。

 

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