平成21年4月24日
証券取引等監視委員会
金融庁設置法第21条の規定に基づく建議について
証券取引等監視委員会は、金融庁設置法第21条の規定に基づき、本日、金融庁長官に対して、下記のとおり建議を行った。
記
外国為替証拠金取引業者に対する規制のあり方に係る建議について
(建議1)
外国為替証拠金取引に係る区分管理の方法の見直しについて
外国為替証拠金取引を取り扱う金融商品取引業者に対する重点検査の結果、カバー取引先への預託によって顧客からの保証金が管理される場合でありながら、顧客からの保証金の額を把握しておらず、自己の固有財産と顧客の財産を適切に区分管理していない事例が多く認められた。
これらの中には、
(1) 顧客から預託を受けた保証金が、カバー取引先から引き出され、不当に流用されていた、
(2) カバー取引先に預託していた顧客の保証金を基に行う自己勘定取引を繰り返した結果、外国為替相場の急変により損失を拡大させ破綻し、顧客に損害を被らせた、
といった事例が認められた。
したがって、こうした状況に鑑みれば、外国為替証拠金取引を取り扱う金融商品取引業者の区分管理について、保証金が金銭である場合の管理方法を金銭信託に限る等、適切な措置を講ずる必要がある。
(建議2)
外国為替証拠金取引に係るロスカットルールの制定について
ロスカットルールとは、保証金に対して損失が一定割合以上となった際には、自動的に反対取引により決済するルールであるが、当該ルールが機能しない場合には、顧客に不測の損害を与えるばかりか、業者の財務体質を悪化させ、最悪の場合には業者が破綻して顧客全体にも著しい損害を与えかねないような問題を含むことから、外国為替証拠金取引に係るロスカットルールの適切な運用は極めて重要である。
外国為替証拠金取引を取り扱う金融商品取引業者に対する重点検査の結果、
(1) ロスカットルールを設けていなかったことから、顧客の損失を拡大させた、
(2) 外国為替証拠金取引に係る約款上、ロスカットルールを定めていたにもかかわらず、顧客の要請に応じて追加保証金の入金を猶予していた、
といった事例が認められた。
したがって、こうした状況に鑑みれば、外国為替証拠金取引を取り扱う金融商品取引業者に対し、ロスカットルールの制定を義務付ける等、適切な措置を講ずる必要がある。
(建議3)
外国為替証拠金取引に係る適切な保証金の預託について
外国為替証拠金取引を取り扱う金融商品取引業者においては、顧客がその入金した保証金を上回る多額の取引を行うことができるという外国為替証拠金取引の特性等から、適切なリスク管理態勢の構築が極めて重要である。
外国為替証拠金取引を取り扱う金融商品取引業者に対する重点検査の結果、為替相場の急変時に適切な対応が取られていない事例が認められた。
現行法上、外国為替証拠金取引の保証金についての規制はなく、外国為替証拠金取引を取り扱う金融商品取引業者が自由にレバレッジを設計しているところであるが、いわゆる高レバレッジの商品については、僅かな為替変動であっても保証金不足が生じ、顧客に不測の損害を与えるばかりか、業者の財務体質を悪化させるおそれがある。
したがって、外国為替証拠金取引を取り扱う金融商品取引業者に対し、為替変動を勘案した水準の保証金の預託を受けることを義務付ける等、適切な措置を講ずる必要がある。
(建議4)
登録申請時の徴求書類等の見直しについて
金融商品取引業の登録にあたり、その適格性を判断するためには、登録申請時に提出する書類は極めて重要である。
外国為替証拠金取引を取り扱う金融商品取引業者に対する重点検査の結果、虚偽の記載をした最終の貸借対照表及び損益計算書を作成したほか、純財産額を算出した書面及び自己資本規制比率を算出した書面についても虚偽の記載をし、登録拒否要件に該当しないものとして登録申請を行い、登録を受けていた事例が認められた。
したがって、こうした状況に鑑みれば、金融商品取引業の登録にあたり、申請書類に記載された純財産額及び自己資本規制比率等の数値が虚偽でないことを裏付ける疎明資料等を提供させる等、適切な措置を講ずる必要がある。