平成21年12月8日

証券取引等監視委員会

コスモ証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

  • 1.勧告の内容

    証券取引等監視委員会は、コスモ証券株式会社(大阪府大阪市中央区、資本金135億円、役職員919名)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者及びその役員に係る法令違反等の事実が認められたので、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分及びその他の適切な措置を講ずるよう勧告した。

  • 2.事実関係

    • ○ 法令違反その他の不適当な勧誘行為が組織的かつ多数行われ、それが看過されているなど、経営管理態勢及び営業管理態勢に重大な不備が認められる状況

      コスモ証券株式会社(以下「当社」という。)は、投資信託の主力商品として、平成20年11月以降、ブル型・ベア型の投資信託(以下「ブルベア投信」という。)の取扱いを開始し、同21年3月以降は、これに替わり、毎月分配型投資信託の4銘柄(以下「毎月分配型4投信」という。)の販売に注力していたが、当社において、当該主力商品に係る営業に関して、下記のとおり、コンプライアンスよりも収益(手数料等)を優先する考えのもと、法令違反その他の不適当な勧誘行為が業務組織を通して多数行われ、それが看過されているなどといった状況が認められた。

      • (1) ブルベア投信について

        • マル1 収益を優先した営業推進の状況

          当社において営業を統括している取締役常務執行役員営業本部長(以下「営業本部長」という。)をはじめとする営業本部は、平成20年11月以降、営業本部長自ら各部店長に電話にて指示するなどし、営業員にブルベア投信に係る残高目標を課すとともに、日々、営業員ごとの残高やその推移、ブルベア投信に係る受入手数料を集計・把握するなどし、コンプライアンスよりも優先して収益(手数料等)目標を達成するよう強力に営業推進を行っていた。

        • マル2 法令違反その他の不適当な乗換勧誘

          • ア.整合性のない勧誘

            平成20年11月から同21年8月までの間の2,885顧客に係る取引を検証したところ、収益(手数料等)を上げるため、同一の営業員が同一日において、別々の顧客に対して合理的な理由なく異なる相場観等を伝え、ブル型及びベア型双方につき乗換えを勧誘している事例が、183営業員により1,154顧客に対して合計3,111件認められた。当該3,111件によって顧客が負担した手数料は、総額約237百万円となっている。

          • イ.重要な事項につき説明を欠く乗換勧誘

            平成20年11月から同21年8月までの間の取引につき38顧客を抽出して検証したところ、乗換勧誘時に売却する投資信託の概算損益につき説明されていない取引が30営業員により237件認められ、乗換えに関する重要な事項が説明されていない状況が認められた。これは、当社においては、投資信託の乗換えの勧誘に関して誤った解釈に基づく取扱いがなされていたことによるものであった。

            また、上記38顧客のうち、平成21年2月の乗換え回数が5回以上の顧客は11名であり、当該11顧客については頻繁に乗換えが行われているものと認められた。

        • マル3 コンプライアンスに係る内部牽制等が機能していない状況

          当社においては、平成21年4月及び5月に、業務監査部の営業考査課及び検査部がブルベア投信について調査及び特別検査を実施し、月例報告会等において、営業考査課レポート及び特別検査の結果の報告が行われ、ブルベア投信に関する注意喚起がなされるなどした。しかしながら、当該注意喚起等が営業員等に徹底されておらず、その後も上記マル2ア.の整合性のない勧誘は行われており、ブルベア投信に係る不適当な勧誘行為を是正するには不十分な状況となっており、また、下記(2)の毎月分配型4投信に係る不適当な勧誘行為に対する抑止にもなっていない状況が認められた。

      • (2) 毎月分配型4投信について

        • マル1 収益を優先した営業推進の状況

          当社において営業本部は、平成21年3月以降、毎月分配型4投信についても、ブルベア投信に引き続き、コンプライアンスよりも優先して収益(手数料等)目標を達成するよう営業推進をし、これにより収益優先の営業活動が各営業部店において現に行われていることを承知していながら、これを黙認している状況にあったものと認められる。

        • マル2 法令違反その他の不適当な乗換勧誘

          平成21年3月から同年8月までの間の取引につき128顧客を抽出して検証したところ、当社においては、上記マル1の営業本部主導による収益目標を達成するためとして、下記ア.及びイ.の不適当な勧誘行為が行われている事例が、18部店の営業員40名により56顧客に対して合計84件認められた。当該84件によって顧客が負担した手数料は、総額約24百万円となっている。

          • ア.非勧誘を偽装していた点について

            当社コンプライアンスマニュアルは、買付後6か月未満の乗換提案の禁止及び高齢者に対する勧誘制限等の取引規制を定めており、乗換提案を行う場合には、乗換えに係る重要事項等を説明したことを記載する「投資信託乗換提案説明書」を作成して事前に部店長・内部管理責任者の承認を得ることなどを規定している。しかしながら、当該勧誘制限等を回避するために非勧誘を装っていた事例が上記のとおり84件認められ、その際、当該営業員らは、上記「投資信託乗換提案説明書」を作成していなかった。

          • イ.重要な事項につき説明を欠いていた点について

            上記ア.のとおり非勧誘を装っていた結果、上記84件の全取引につき、顧客に対して、矛盾していたり一貫性のない説明あるいは偏った説明により乗換勧誘を繰り返したり、乗換えに係る合理性を含む顧客の投資判断に影響を及ぼす重要な事項について説明をすることなく乗換勧誘をしている状況が認められた。

        • マル3 社内管理態勢の不備

          上記マル2の18部店すべての部店長は、同マル2ア.のような非勧誘を装った乗換勧誘が各営業部店で行われていた状況を承知していながら、収益優先の考えのもとに黙認していたとしており、このうち2支店においては、支店長及び副支店長自らが非勧誘を装った乗換勧誘を行っていた。

          また、当社は、投信アラーム・アテンション制度を定め、顧客に対して過度な投資勧誘が行われていないかをモニタリングするとしているほか、乗換勧誘を行うことに経済合理性があるか等について業務監査部が日々モニタリングを実施することとしているが、いずれにおいても上記マル2の毎月分配型4投信に係る不適当な事例を全く把握できていなかった。

      • (3) なお、当社においては、適切な業務運営を図る責任のある社長をはじめとする経営陣が上記のような法令違反その他の不適当な勧誘行為や内部管理態勢の不備につき、これを是正すべく指導・管理をしたというような事情は、今回検査において把握されていない。

        上記のとおり、当社においては、経営陣の一人である営業本部長をはじめとする営業本部がコンプライアンスよりも収益(手数料等)を優先する考えのもとで強力な営業推進を行うなどした結果、投資信託の主力商品に係る営業において、不適当な勧誘行為が営業本部や営業部店等の業務組織を通して多数行われ、顧客に多額の手数料を負担させていた。また、当社においては、そのような不適当な勧誘行為につき、内部管理部門による十分な牽制機能等が果たされず、看過されており、さらに経営陣においてもこれらの不適切な業務運営の把握・管理等ができておらず、当社の経営管理態勢及び営業管理態勢には重大な不備があるものと認められる。

        また、営業本部長は、とりわけ営業に係る適切な業務運営を図るべき立場にあるにもかかわらず、自らの指示等が不適当な勧誘行為につながる可能性があることを認識していながら、コンプライアンスよりも収益(手数料等)を優先する考えのもと強力な営業推進をするなどした結果、上記(1)マル2及び(2)マル2の不適当な勧誘行為を多数生じさせており、当該各勧誘行為は当該役員に係る行為と認められる。

        当該金融商品取引業者及びその役員に係る上記(1)マル2イ.及び(2)マル2イ.の乗換勧誘の際に重要な事項を説明していない状況は、金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第9号の「投資信託受益証券等の乗換えを勧誘するに際し、顧客に対して、当該乗換えに関する重要な事項について説明を行っていない状況」に該当するものと認められる。

        また、当該金融商品取引業者における上記の業務の運営の状況は、法令違反に該当しない不適当な勧誘行為並びに経営管理態勢及び営業管理態勢に係る重大な不備についても、行政処分によりその業務の改善を求める必要が高いものと認められ、金融商品取引法第51条の「業務の運営の状況に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当するものと認められる。また、当該金融商品取引業者の役員に係る法令違反に該当しない不適当な勧誘行為は、同法第64条の5第1項第2号の「著しく不適当な行為をしたと認められるとき」に該当するものと認められる。

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