平成22年1月20日

証券取引等監視委員会

株式会社RSTに対する検査結果に基づく勧告について

  • 1.勧告の内容

    証券取引等監視委員会が、株式会社RST(東京都港区、資本金1,000万円、役職員19名)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る法令違反等の事実が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

  • 2.事実関係

    • (1) 出資金の使途が不明な状況

      株式会社RST(以下「当社」という。)は、平成19年3月から同20年7月頃までの間、匿名組合(以下「サルベージファンド」という。)契約に基づく権利の私募を行っていた。サルベージファンドは、当社を営業者とし、「沈没船からの歴史的文化財引揚げ事業全般への投資を行うことを目的」とした匿名組合契約で、約8億円の出資金が集められた。

      サルベージファンドの匿名組合契約書では、出資金を、契約書で定義された事業(以下「本件事業」という。)の各事業主体に対して出資・提供することに充てる旨や、出資金の一部を営業者の本件事業に係る営業諸経費に充てることができる旨が規定されていた。

      今回検査において、当社が支出したサルベージファンドの出資金の使途等について検証を行ったところ、当社は、当社が第二種金融商品取引業の登録を受けた平成20年5月16日から前代表取締役社長(以下「前社長」という。)が退任した同20年8月末日(第13期事業年度末)までの間、前社長に対して、仮払経費の名目で約930万円を支払っているが、そのうち約770万円分について、当社では領収証の保管が行われておらず、出資金の使途が不明な状況にある。

      また、当社は、前社長に対して、平成19年9月から同20年8月までの間、上記930万円を含めて約1億5千万円を仮払経費として支払っているところ、当該仮払経費は、当社が前社長から「エクアドル事業権利」と称する権利を1億5千万円で取得したとして、一旦、同20年8月31日付で1億5千万円の未払金を計上し、当該未払金と仮払経費を同日付で相殺した経理処理となっている。しかしながら、当社が前社長から取得したとしている「エクアドル事業権利」と称する権利を表する書面及び当社が前社長から権利を取得したことを示す売買契約書等の書面は存在せず、また、取得金額算出の根拠も不明な状況にある。

      他方、サルベージファンドについて当社は、平成20年8月19日付で投資者に対して、現地国の政変を理由に「事業運営が困難となり契約を終了する。」旨の通知を行っている。しかし、当社がサルベージファンドの事業遂行のために事業委託先に送金したとする金額は、サルベージファンドにより集めた出資金の一部であり、その他の出資金については、国内において、費消又は不明金となっている。

      なお、今回検査基準日までのところ、サルベージファンドについて清算手続が行われていない状況にある。

      上記のとおり、当社では、出資金の使途が不明になっていたり、権利内容が明確ではない権利を取得したものとして経理処理を行っていたりするなど、投資者から集めた出資金の使途について、管理が不十分であることが認められる。

      当該金融商品取引業者における上記の出資金の使途に係る管理の状況は、金融商品取引業の登録を受けて行う集団投資スキームに対する信頼を損なうものであると認められるため、金融商品取引法第51条の規定による業務の運営の状況の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる場合の要件となる「業務の運営又は財産の状況に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当するものと認められる。

    • (2) 分別管理が確保されていない状況で私募を行う行為

      当社は、6種の匿名組合契約(以下「ファンド」という。)に基づく権利の私募を行っているため、各ファンドにおける出資金の使途等について検証したところ、当社の定款及び匿名組合契約書等において、出資金の分別管理に関する定めがなされていないことに加え、以下のとおり各ファンドの出資金等の分別管理が確保されていない状況であるにもかかわらず、私募を行っている状況が認められた。

      • マル1 当社は、投資者に対し、出資申込書又は重要事項説明書と称する契約締結前交付書面において「払込口座」又は「営業者口座」の名称で、6種のファンド毎に異なる出資金の受入口座(以下「出資金受入口座」という。)を指定しており、それぞれのファンドの出資者から振り込まれた出資金は、一旦、それぞれのファンドの各出資金受入口座に入金されている。

        しかしながら、それぞれのファンドの出資者から、それぞれのファンドへの出資金が入金された後、当社は、これらの出資金を一つの口座(以下「総合口座」という。)に集約し、当該総合口座から各種の費用を支出しているため、当該支出が、当社の費用なのか、ファンドに係る費用なのか、どのファンドに係る費用なのかといった点について、分別した管理が確保されていない。

      • マル2 当社は、当社が私募を行っているファンド(以下「Aファンド」という。)の事業の一環であったダイバーズウォッチ販売事業に関し、仕入先に対して、ダイバーズウォッチ等の仕入代金を総合口座から「振込」により支払っているものの、Aファンド以外のファンドの出資金を原資としていた事例が認められるなど、当社のファンドに係る費用の支出について、分別管理が確保されていない。

      • マル3 当社は、事業の維持のため急遽資金補給の必要が生じた場合等には、協力者から借入れを行っているとしているものの、これらの借入れについては、契約書を作成していない場合もあるなど資金使途が明確化されておらず、当社固有の財産(当社の借入れ)なのか、ファンドが掲げる事業を運営等するために必要となる財産(ファンドに係る借入れ)なのか、ファンドに係る借入れだとしても、どのファンドに係る借入れなのかが判別できない状況となっている。

        しかしながら、当社は、これらの借入金を、出資金受入口座に振り込まれた各ファンドに係る出資金が振り替えられる口座となっている総合口座で受け入れ、総合口座から元本及び金利を返済していた。

        よって、当社では、借入金の管理について、当社の借入れなのか、ファンドに係る借入れなのか、どのファンドに係る借入れなのかといった点について分別した管理が確保されていない。

      上記のとおり、当該金融商品取引業者における出資金等の管理の状況は、金融商品取引業等に関する内閣府令第125条に定める「当該事業者の定款(当該事業に係る規約その他の権利又は有価証券に係る契約その他の法律行為を含む。)により(略)基準を満たすことが義務付けられている」とは認められず、「(略)当該金銭を充てて行われる事業を行う者の固有財産その他当該者の行う他の事業に係る財産と分別して管理することが(略)確保されている」とはいえないため、当該状況下で私募を行う行為は、金融商品取引法第40条の3に違反するものと認められる。

    • (3) 収益が発生していない状況で配当金を支払っているにもかかわらず私募を行う行為

      今回検査において、各ファンドの配当状況及び各ファンドに掲げる事業の収益を検証したところ、当社は、一部のファンドにおいて、営業者たる当社に収益が発生していない状況で配当金を支払っているにもかかわらず、私募を行っている状況が認められた。

      上記のとおり、当該金融商品取引業者は、投資者に対して、収益が発生していない状況において、配当金を支払った上私募を行っているため、金融商品取引法第51条の規定による業務の運営の状況の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる場合の要件となる「金融商品取引業者の業務の運営又は財産の状況に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当するものと認められる。

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