平成22年1月29日

証券取引等監視委員会

株式会社Art Investment Bankに対する検査結果に基づく勧告について

  • 1.勧告の内容

    証券取引等監視委員会が、株式会社Art Investment Bank(東京都中央区、資本金3,000万円、役職員6名)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る不正又は著しく不当な行為等の事実が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

  • 2.事実関係

    • (1) 集団投資スキーム持分の私募の取扱いにおいて公益及び投資者保護上著しく不当な行為が認められる状況

      株式会社Art Investment Bank(以下「当社」という。)は、A社を営業者として、AIBアート1号有限責任事業組合(以下「1号組合」という。)に対する出資を出資対象事業とする匿名組合契約(以下「1号ファンド」という。)持分の私募の取扱いを行っていた。また、今回検査基準日現在(平成21年10月21日)では、AIBアート2号有限責任事業組合(以下「2号組合」といい、1号組合と併せて「当組合」という。)に対する出資を出資対象事業とする匿名組合契約(以下「2号ファンド」といい、1号ファンドと併せて「当ファンド」という。)持分の私募の取扱いを行っている。

      さらに、当社は、A社との有限責任事業組合契約に基づき、当組合の組合員として、A社から当組合に出資された資金を基に美術品の売買等に係る業務を執行している。

      今回検査において、当ファンド持分に係る当社の私募の取扱い業務について検証したところ、以下の事実が認められた。

      • マル1 当社が私募の取扱いを行っている匿名組合の出資対象事業である1号組合が、絵画の購入を委託していた業者に対して、5作品(以下「本各作品」という。)に係る売買代金全額の支払いを行っていたにもかかわらず、当該業者がオークションハウス及び海外の業者に売買代金全額を支払っていない状況にあり、1号組合は、本各作品の所有権を取得していないことが判明した。

        当社は、本各作品が以上のような状況にあるにもかかわらず、売買代金支払い後も、本各作品の保管等に関する証明等を確認するなど、本各作品に係る売買契約の履行状況及び所有権の取得状況を把握しておらず、今回検査着手後の平成21年11月4日に至るまで、本各作品につき1号組合が所有権を取得していない事実を看過していた。

        また、当社は、1号組合が上記のような状況にあるにもかかわらず、1号組合に対する出資を投資対象事業とする1号ファンド持分について、平成21年6月30日まで私募の取扱いを行っており、今回検査で指摘を受けて、上記のような状況を認識した後も、1号組合と同様のスキームで運用される2号組合に対する出資を出資対象事業とする2号ファンド持分について、同年11月4日から現在に至るまで私募の取扱いを中止するといった対応等を何ら採っていない状況にある。

      • マル2 当社では、1号組合が上記のような状況にあることに加え、1号ファンドの決算日が毎年3月31日であるところ、決算日から半年以上経過した時点においても、決算報告書の作成すら行われていないことを認識しながら、記載に不備のある契約関係書類に基づき、私募の取扱いを行っている状況が認められた。

      当社が行った上記マル1の行為は、本各作品に係る売買契約の履行状況及び所有権の取得状況を把握していない状況を重大な過失によって看過しているものであり、また、当該状況を認識した後においても必要な改善措置を講じているとは認められないなど、当組合の組合員としての善管注意義務を果たしていない状況下において、当組合に対する出資を出資対象事業とする当ファンド持分に係る私募の取扱いを行っているものであること、上記マル2の行為は、当ファンドに係る決算報告がなされていない状況において、当該状況を認識しながら記載に不備のある契約締結前交付書面及びパンフレットにより私募の取扱いを行っていたものであることからすると、当社の状況は、金融商品取引法第52条第1項第9号が定める「金融商品取引業に関し、不正又は著しく不当な行為をした場合において、その情状が特に重いとき」に該当するものと認められる。

    • (2) 集団投資スキーム持分の私募の取扱いにおいて公益及び投資者保護上問題が認められる状況

      当ファンド持分に係る当社の私募の取扱い業務について検証したところ、当社は、金融商品取引業の無登録業者(以下「本件無登録業者」という。)が金融商品取引業の登録を受けていないことを知りつつ、本件無登録業者が、顧客に対し、投資の意思決定を行わせる勧誘行為と認められる行為をしていた事実を認容し、勧誘行為を行わせている事実が認められた。

      このような当社の状況は、金融商品取引法第51条の規定による業務の運営の状況の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる場合の要件となる「業務の運営の状況に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当すると認められる。

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