平成22年4月9日

証券取引等監視委員会

イニシア・スター証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

  • 1.勧告の内容

    関東財務局長がイニシア・スター証券株式会社(東京都渋谷区、資本金1,143百万円、役職員20名、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業及び投資助言・代理業登録)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る法令違反等の事実が認められたので、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

  • 2.事実関係

    • ○ ファンド持分の取得勧誘に係る虚偽表示等

      イニシア・スター証券株式会社(以下「当社」という。)は、平成21年3月から同年11月にかけて、旅館業に投資する4本の匿名組合(以下「本件ファンド」という。)の出資持分の取得勧誘を行っている。

      本件ファンドは、組合員からの出資金で宿泊施設を取得、旅館業を運営し、当該旅館業から生じる利益を組合員に分配するものであるが、今回検査において、本件ファンドの取得勧誘の状況について、以下の事実が認められた。

      • (1) 本件ファンドは、宿泊施設の取得・管理等を業務委託しているX社から宿泊施設の取得等を再委託されているY社に対し、宿泊施設の取得費用として出資金の大半を前払金として支払っている。

      • しかしながら、Y社は、前払金の入金日又はその翌日には、これを自社の借入金返済などの運転資金に充当しており、同社においては、前払金の受領後、又は宿泊施設取得後も3か月以上にわたり、宿泊施設の取得、又は前払金の精算を行っていない状況が認められた。

      • 本件については、Y社の前社長である当社社長が、本件ファンドの最初のファンドの販売時にX社と話し合い、Y社が前払金を受けることを取り決め、これについては、当時の当社社長(現Y社社長、以下「前社長」という。)にも説明している。また、当社社長及び前社長は、Y社への前払金が、Y社において長期間滞留し、Y社の運転資金に使用されている状況も認識していた。

      • しかしながら、当社社長及び前社長は、これらの事実を当社の他の役職員に知らせないまま、取得勧誘を継続させていた。

      • (2) このような状況の中、当社は本件ファンド持分の取得勧誘を行っているが、取得勧誘に際し、投資者に交付する契約締結前交付書面、匿名組合契約書等にはY社に係る記載はなく、投資者に対する営業員による説明も行われていなかった。

      • Y社については、同社の業務又は財産の状況の変化を直接の原因として本件ファンドの資産に損失が生ずることとなるおそれがあるにもかかわらず、当社は、前社長が本件ファンドの資金がY社へ前払いされることを知った以降、また、前社長に代わって当社社長が就任した以降も、投資者に対し、Y社に関する記載がない契約締結前交付書面等を交付し、投資者に対し、Y社に係る説明を行うことなく取得勧誘を行っていたものである。

      当社においては、上記(1)のとおり、本件ファンドの資金がY社に前払いされ、Y社において運転資金として使用されており、Y社の業務又は財産の状況の変化を直接の原因としてファンド資産に損失が生ずることとなるおそれがあるというファンド資産に重大な懸念が生じているにも関わらず、当社社長は、当社の他の役職員に対し当該事実を説明することなく取得勧誘を継続させている。

      このような当社の業務の運営の状況は、金融商品取引法第51条に規定する、当社の業務の運営に関し、投資者保護のための必要な改善を図る必要があるものと認められる。

      また、上記(2)の行為は、本件ファンドの資産に与える影響について、契約締結前交付書面に記載すべき事項を表示していないこと、またこれを説明していないことにより、事実と異なる表示を行っていることから、金融商品取引法第38条第6号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第2号(虚偽表示)に該当するものと認められる。

サイトマップ

ページの先頭に戻る