平成22年6月17日

証券取引等監視委員会

髙木証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

  • 1.勧告の内容

    近畿財務局長が、髙木証券株式会社(大阪府大阪市北区、資本金110億円、役職員393名)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る法令違反等の事実が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

  • 2.事実関係

    ○ 法令違反行為が長期に亘り継続して行われ、それが看過されているとともに、苦情処理態勢等を含む内部管理態勢に重大な不備が認められる状況

    髙木証券株式会社(以下「当社」という。)は、平成15年5月、当社専用の不動産投資ファンド(以下「当該ファンド」という。)の導入を決定し、同年6月以降、積極的な販売を行った。その結果、当該ファンドは、平成19年11月までの販売期間中に187名の営業員により、延べ20,541名の顧客に総額527億円が販売されている。(なお、当該ファンドが「みなし有価証券」と規定された同16年12月以降は、152名の営業員により、延べ12,879名の顧客に総額328億円販売されている。)

    今回検査において、当該ファンドに係る勧誘状況等を検証したところ、下記のとおり、当該ファンドの安全性に関して、顧客に対し誤解を生ぜしめるべき表示をする行為が、長期に亘り継続して行われていたほか、その背景として、当社における内部管理態勢に重大な不備が認められた。

    (注)当該ファンドは、顧客からの出資金に金融機関からの借入金を加えることによりレバレッジを効かせた運用を行っており、償還時には、借入金の返済が出資金の償還に優先されるため、投資対象不動産の売却価格が下落した場合には、レバレッジ効果が働き、不動産価格の下落幅以上に出資金が大幅に元本割れするリスク(以下「レバレッジリスク」という。)が内在する商品である。

    • (1) 重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為が長期に亘り継続して行われていた状況

      平成16年12月以降(「みなし有価証券」該当後)に当該ファンドの販売実績のある営業員20名に勧誘状況等をヒアリングしたところ、そのうち17名が、また、その他書面による確認を実施した営業員14名全てが、レバレッジリスクを理解していなかったことから、当該ファンドの募集の取扱い時に、顧客に対し、投資判断に影響を及ぼす重要な事項である同リスクを説明していない状況が認められた。また、上記20名から17名を除いた3名は、販売当初から同リスクを理解していたが、うち1名が、顧客に対し同リスクを説明していなかった。

      上記のとおり、ヒアリング等による確認を行った営業員34名(販売顧客数延べ1,866名)のうち、不適当な勧誘行為を行っていた営業員は32名(同1,754名)に及んでおり、これら32名の営業員が、当該ファンド勧誘時において不適当な勧誘行為を行った結果、出資金の毀損率が、不動産価格の下落率と同程度であるかのような誤解を顧客に与えており、誤解を生ぜしめるべき表示をする行為が認められた。

    • (2) 顧客勧誘時の商品説明資料等の記載内容

      当社営業員は、顧客に対し当該ファンドの商品説明を行う際、主に商品パンフレットを使用し、併せて目論見書等を顧客に交付していた。

      レバレッジリスクについては、少なくとも借入金の優先返済及び出資金に対する借入金の割合の上限率(以下「借入上限率」という。)に係る説明がなされるべきと考えられるところ、商品パンフレットにおいてはこれらが記載されていなかった。また、目論見書等においては、これらの記載はあるものの、営業員から説明を受けない限り、顧客には分かりづらい表現となっているなど、顧客が同リスクを理解することが困難な状況となっていた。

    • (3) 当該ファンド導入時の調査・分析等商品企画業務に係る内部牽制が機能していない状況

      当社では、当該ファンドの導入に伴う商品性の検討や販売資料の作成等の実務を全て営業企画室長1名に負わせ、内部牽制が機能しない状況となっていた。

    • (4) 社内教育態勢等の不備

      • マル1 当該ファンド販売に当たっての営業員教育が不十分な状況

        当社が当該ファンド販売に当たって実施した営業員向けの勉強会や、販売開始以降に実施した営業員研修等においては、借入金の導入により投資効率を高め利回りの向上を図る等、当該ファンドのメリットを強調した説明等が中心となり、レバレッジリスクについての説明は行われていなかった。

      • マル2 社内周知が不十分な状況

        当該ファンドの借入上限率は、平成18年4月に、それまでの300%から400%に引き上げられているが、当社は、営業員に対し、借入上限率の引上げについて周知しておらず、多数の営業員が当該引上げを顧客に説明していない状況が認められた。

        また、当該ファンドの最終号(平成19年11月募集。)の商品パンフレット等において、レバレッジリスクに係る項目が新たに設けられているが、当社は、営業企画部より首都圏・近畿両本部長に対し、当該変更内容を部店長を介し営業員に周知するよう指示したものの、当該指示を受けた部店長は、営業員に対し変更の趣旨等を説明せず、変更項目のみを伝え、また、当該変更内容を顧客に説明するよう指示していない状況が認められた。

    • (5) 内部管理態勢の不備

      • マル1 部店長等による営業管理態勢の不備

        当社における営業員の投資勧誘実態の検証状況について、部店長等23名に対しヒアリング等を行ったところ、その検証は、顧客から徴求する重要事項等の説明に関する確認書の記載漏れチェック等形式的なものとなっており、営業員の具体的な勧誘内容を確認していない状況が認められた。

      • マル2 元本割れ償還に係る顧客対応不備

        今回検査において、元本割れ償還に係る営業員の顧客対応についてヒアリング等により確認したところ、レバレッジリスクに係る説明を何ら行っていない営業員が見られる等、検査基準日現在においても同リスクに関する顧客説明が十分に行われていない状況が認められた。

      • マル3 苦情に関する調査不備等

        当社監査部は、元本割れ償還が発生した以降、顧客苦情対応を行う同部員に対し、顧客属性を踏まえた対応を行う等の具体的な指示を行っていない。また、勧誘状況の実態等を把握するため、苦情を申し出た顧客や担当営業員に当該状況を確認するよう指示を行っていないことなどから、当社の苦情処理態勢は不十分な状況となっており、多数の苦情が寄せられているにもかかわらず、当社は、当該ファンドに係る不適当な勧誘行為の実態を把握できていない。

    • (6) 経営管理態勢の不備

      当社経営陣は、当該ファンド販売に係る実務を担当者任せとし、不適当な勧誘行為が長期に亘り継続して行われていたことや内部管理態勢等の不備の把握、並びにこれらの是正に向けた指導・管理を行っていない。

      さらに、当社経営陣は、当該ファンドに係る苦情が多数寄せられている事実を把握しているにもかかわらず、実態調査について具体的な指示を行っていない。

      また、当該ファンドの特性を鑑みれば、個人顧客への販売に当たり、リスクに係る十分な検討が必要と考えられるところ、当社経営陣は、営業企画室長1名という弱体な態勢を看過し、この結果、商品パンフレット等において、レバレッジリスクについて十分な記載がなされず、顧客への不適当な勧誘行為を招いている。

      このように、当社経営陣は、当該ファンドの販売等に関して、組織的に対応を行うよう指示を行わないまま、検査基準日現在に至るまで上記のような不適当な状況を看過していたものである。

    当社における上記の業務の運営の状況のうち、(1)の行為については、金融商品取引法第38条第6号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第2号(ただし、平成19年9月29日以前の行為については、改正前の証券取引法第42条第1項第10号に基づく廃止前の証券会社の行為規制等に関する内閣府令第4条第1号)の「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為」に該当するものと認められる。

    また、上記のとおり、当社の内部管理態勢等には重大な欠陥があり、償還金の元本割れに係る顧客対応において、レバレッジリスクに係る説明が十分に実施されておらず、苦情処理態勢にも不備があるものと認められる。

    当社におけるこのような業務の運営の状況は、行政処分により改善を求めるべき状況にあり、金融商品取引法第51条の「業務の運営の状況に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当するものと認められる。

当該ファンド償還に係る仕組み

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