平成23年1月25日

証券取引等監視委員会

北越紀州製紙株式に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について
(アルゴリズム取引の特性を利用することを意図した相場操縦)

  • 1.勧告の内容

    証券取引等監視委員会は、北越紀州製紙株式会社株式に係る相場操縦について検査した結果、下記のとおり法令違反の事実が認められたので、本日、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、課徴金納付命令を発出するよう勧告を行った。

  • 2.法令違反の事実関係

    課徴金納付命令対象者は、北越紀州製紙株式会社の株式につき、同株式の売買を誘引する目的をもって、約定させる意思のない売り注文を発注するなどして売り板を厚く見せることにより売り注文を誘引したり、約定させる意思のない買い注文を発注するなどして買い板を厚く見せることで買い注文を誘引するなどの方法により、

    (ア)平成22年6月14日午後零時35分ころから同日午後1時54分ころまでの間、延べ合計102万6000株の売り注文の発注等及び延べ合計116万7500株の買い注文の発注等を行うとともに、合計51万株の売買を自己に有利な株価で約定させ、

    (イ)平成22年6月15日午前9時29分ころから同日午後零時21分ころまでの間、延べ合計117万6500株の売り注文の発注等及び延べ合計149万7000株の買い注文の発注等を行うとともに、合計54万株の売買を自己に有利な株価で約定させ、

    もって、自己の計算において、同株式の相場を変動させるべき一連の売買及び委託をしたものである。

    ※ 課徴金納付命令対象者は、板を厚く見せるために、約定させる意思のない売り注文(1)及び買い注文(2)を発注したほか、約定可能性がない程度の価格に指値変更注文(3)を行い、その後、最良気配値付近に再度指値変更注文(4)を行うことにより、それらの注文に瞬時に反応してくるコンピュータシステムによるアルゴリズム取引と考えられる他の投資家からの注文が、対象者の買いたい株価又は売りたい株価の指値(5)で発注されるのを意図して、そのような他の投資家の注文と自己の注文を売買約定(6)させるという行為を、繰り返し行ったものである。(下図参照)

    図1

    同人が行った上記の行為は、金融商品取引法第174条の2第1項に規定する「第159条第2項第1号の規定に違反する一連の有価証券売買等」及び「その委託等」の違反行為に該当すると認められる。

  • 3.課徴金の額の計算

    上記の違法行為に対し金融商品取引法に基づき納付を命じられる課徴金の額は、57万円である。

    計算方法の詳細については、別紙のとおり。


(別紙)

  • ○ 課徴金の額の計算方法について

    1.金融商品取引法第174条の2第1項に基づき、課徴金の額は、

    (1) 売買対当数量(注1)に係るものについて、

    (有価証券の売付価額)-(有価証券の買付価額)

    と、

    (2) 当該違反行為に係る有価証券の売付数量が買付数量を超える場合の、当該超える数量に係るものについて、

    (有価証券の売付価額)-(当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における当該有価証券の最低価格×当該超える数量)

    または、

    当該違反行為に係る有価証券の買付数量が売付数量を超える場合の、当該超える数量に係るものについて、

    (当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における当該有価証券の最高価格×当該超える数量)-(有価証券の買付価額)

    との合計額として計算される。

    (注1)売買対当数量:当該違反行為に係る有価証券の売付数量と買付数量のうち、いずれか少ない数量をいう。

    2.課徴金納付命令対象者の違反行為について、

    (ア) 平成22年6月14日の一連の違反行為に係る課徴金の額は、下記(1)及び(2)によりそれぞれ算定される額の合計 253,500円

    ⇒課徴金の額は、1万円未満を切り捨てるため、25万円

    (1) 当該違反行為に係る売買対当数量は、売付数量及び買付数量が、255,000株であることから、255,000株となる。

    当該売買対当数量に係るものについて、

    売付価額117,703,500円(注2) - 買付価額117,450,000円(注3)

    = 253,500円

    (注2)売付価額は、「461円×112,500株、462円×136,500株、463円×6,000株」の合計額である。

    (注3)買付価額は、「459円×8,500株、460円×102,000株、461円×135,500株、

    462円×4,000株、463円×5,000株」の合計額である。

    (2) 上記(1)のとおり、当該違反行為に係る有価証券の売付数量と買付数量が同じであることから、当該超える数量は、0株となる。

    (イ) 平成22年6月15日の一連の違反行為に係る課徴金の額は、下記(1)及び(2)によりそれぞれ算定される額の合計 321,500円

    ⇒課徴金の額は、1万円未満を切り捨てるため、32万円

    (1) 当該違反行為に係る売買対当数量は、売付数量及び買付数量が、270,000株であることから、270,000株となる。

    当該売買対当数量に係るものについて、

    売付価額124,543,500円(注4) - 買付価額124,222,000円(注5)

    = 321,500円

    (注4)売付価額は、「456円× 2,000株、457円× 5,000株、458円× 9,500株、

    459円×13,500株、460円×39,000株、461円×68,500株、462円×67,000株、

    463円×65,500株」の合計額である。

    (注5)買付価額は、「457円×27,000株、459円×37,500株、460円×111,000株、

    461円×48,500株、462円×46,000株」の合計額である。

    (2) 上記(1)のとおり、当該違反行為に係る有価証券の売付数量と買付数量が同じであることから、当該超える数量は、0株となる。

図2

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