平成23年2月4日

証券取引等監視委員会

マスター証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

  • 1.勧告の内容

    関東財務局長がマスター証券株式会社(東京都中央区、資本金334百万円、役職員15名、第一種金融商品取引業及び第二種金融商品取引業、適格機関投資家等特例業務届出者)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る法令違反の事実が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

  • 2.事実関係

    マスター証券株式会社(以下「当社」という。)は、平成22年2月以降、3本の投資事業有限責任組合(以下「当該3ファンド」という。)の出資持分の私募及び5本の投資事業有限責任組合(以下「当該5ファンド」という。)の出資持分の私募の取扱い(以下、私募及び私募の取扱いを合わせて「自己私募等」という。)を行っている。また、当該3ファンドについては、適格機関投資家等特例業務(以下「特例業務」という。)として運用(以下「自己運用」という。)を行っているとしている。

    今回検査において、当社が取り扱った上記ファンドの自己私募等及び自己運用の状況について検証したところ、以下の事実が認められた。

  • (1)無登録による投資運用業務

    当該3ファンドに係る出資持分は、いずれも平成22年2月から同年6月にかけて当社が出資持分の私募を行い、投資対象先も同一法人が発行する株式としていることから、6月以内に発行された同種の新規発行権利となる。このことから、当該3ファンド全体で、適格機関投資家以外の者からの出資が49名以下でなければならないところ、142名となっており、当社が行った当該3ファンドの自己運用は、特例業務の要件を満たすことなく行われていた。

    また、上記状況が特例業務の要件を満たさないことに気付いた当社は、平成22年6月に、当該3ファンドのうち2ファンドに係る無限責任組合員を当社から他の特例業務届出者に変更しているが、実際は、当社が引き続き一体として、当該3ファンドの運用を行っていた。

    さらに、平成22年3月から同年6月にかけて当社が出資持分の私募の取扱いを行った当該5ファンドについては、当社以外の者が無限責任組合員となっているが、実際の運用は、当社が、当該3ファンドと合わせ一体として行っていた。

    当社が行った上記の行為は、登録が必要な金融商品取引法(以下「金商法」という。)第28条第4項に規定する「投資運用業」に該当し、当社が同法第31条第4項に基づく変更登録を受けることなく当該業務を行うことは、同法第29条に違反するものと認められる。

  • (2)分別管理が確保されていない状況でファンドの私募等を行う行為

    当社は、上記(1)のとおり、8本のファンドに係る運用を実質的に行い、資産の管理も行っていたが、そのファンド資産の管理状況は、4つの銀行口座により混在して管理されており、かつ、検査基準日(平成22年7月12日)現在、ファンド毎の運用状況も帳簿に記載されていなかったことから、各ファンドの運用状況が直ちに判別できない状況となっていた。

    したがって、当社が行っていた各ファンドの自己私募等は、ファンド間における分別管理が行われていない状況で行われていたものと認められる。

    当社における上記の状況は、当社において、各ファンドに関し出資され、又は拠出された金銭が、金商法第40条の3に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第125条第2号ロに定める方法により、分別管理が確保されているものとは認められない状況であり、同法同条に違反するものと認められる。


金融商品取引法(昭和23年4月法律第25号)(抄)

(登録)

第二十九条 金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない。

(変更登録等)

第三十一条 金融商品取引業者は、第二十九条の二第一項各号(第五号を除く。)に掲げる事項について変更があつたときは、その日から二週間以内に、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。

2、3 (略)

4 金融商品取引業者は、第二十九条の二第一項第五号に掲げる事項について変更をしようとするときは、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣の行う変更登録を受けなければならない

5、6 (略)

(分別管理が確保されていない場合の売買等の禁止)

第四十条の三 金融商品取引業者等は、第二条第二項第五号若しくは第六号に掲げる権利又は同条第一項第二十一号に掲げる有価証券(政令で定めるものに限る。)若しくは同条第二項第七号に掲げる権利(政令で定めるものに限る。)については、当該権利又は有価証券に関し出資され、又は拠出された金銭(これに類するものとして政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。)が、当該金銭を充てて行われる事業を行う者の固有財産その他当該者の行う他の事業に係る財産と分別して管理することが当該権利又は有価証券に係る契約その他の法律行為において確保されているものとして内閣府令で定めるものでなければ、第二条第八項第一号、第二号又は第七号から第九号までに掲げる行為を行ってはならない

金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年8月内閣府令第52号)(抄)

(分別管理が確保されているもの)

第百二十五条 法第四十条の三に規定する内閣府令で定めるものは、同条に規定する権利又は有価証券に関し出資され、又は拠出された金銭を充てて事業を行う者(略)に対し、当該事業者の定款(当該事業に係る規約その他の権利又は有価証券に係る契約その他の法律行為を含む。)により次に掲げる基準を満たすことが義務付けられていることにより、当該金銭が当該事業者の固有財産その他当該事業者の行う他の事業に係る財産と分別して管理されていることが確保されているものとする。

一(略)

二 当該金銭が、次に掲げる方法により、適切に管理されていること。

イ (略)

ロ 銀行、協同組織金融機関、株式会社商工組合中央金庫又は外国の法令に準拠し、外国において銀行法第十条第一項第一号に掲げる業務を行う者への預金又は貯金当該金銭であることがその名義により明らかなものに限る。)

ハ (略)

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