平成23年2月22日

証券取引等監視委員会

ばんせい山丸証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

  • 1.勧告の内容

    関東財務局長がばんせい山丸証券株式会社(東京都中央区、資本金1,558百万円、役職員185名、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業及び投資助言・代理業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る法令違反の事実が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

  • 2.事実関係

    (1)届出されていない有価証券を募集により取得させる行為

    ばんせい山丸証券株式会社(以下「当社」という。)は、平成20年2月から同22年7月までの間、株式会社A社(以下「A社」という。)及び合同会社12社(以下「本件合同会社」という。)が新たに発行した社債(以下「本件社債」という。)の取得の申込みの勧誘(以下「取得勧誘」という。)を行って、これを多数の顧客に取得させている。

    当社は、本件社債に付された複数の回号ごとに勧誘人数を50名未満に抑えて取得勧誘を行っている。しかしながら、本件社債については、各回号ごとに償還期限や発行日がわずかに異なっているに過ぎず、それ以外の利率、発行価額等の条件や資金使途がいずれも同一の社債群が合計23群認められ、いずれも、各社債群ごとに近接した期間のうちに50名以上の多数の顧客に取得勧誘が行われていた。このような本件社債の内容や取得勧誘の実態等に照らせば、各回号の償還期限等がわずかに異なっているのは、募集に該当することを回避しようとして行われたに過ぎないもので、その取得勧誘は、上記23の各社債群ごとにそれぞれ一個の募集に該当するものと認められる。

    したがって、本件社債は、いずれも、金融商品取引法第15条第1項の規定により、発行者が同法第4条第1項に規定する届出を行い、その届出が効力を生じているのでなければ顧客に取得させてはならないものであるところ、A社及び本件合同会社は当該届出を行っていないことから、当社の上記行為は同法第15条第1項に違反するものと認められる。

    (2)社債の取得勧誘に関して重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為

    当社が、A社の社債の取得勧誘に際し、顧客に示していた商品内容説明書には、A社が、経営戦略が頓挫して危機的な状況にある株式会社B(以下「B社」という。)の事業のうち、強固な基盤を有する部門の業務を引き継いだことや、両社には資本関係がないことなど、A社の経営計画における有利な面が記載されている一方で、A社が有する多額の貸付金債権の債務者がB社であることや、A社がB社の別の多額の借入金債務について行っている併存的債務引受の一部についての記載がされていない。そして、当社営業員らは、顧客に対し、上記商品内容説明書を交付して、同書に記載されていない上記貸付金債権や引受債務に係る事実を説明することなく取得勧誘を行っていた。

    このような当社の行為は、投資判断上重要な事項について誤解を生ぜしめるべき表示であると認められ、平成21年法律第58号による改正前の金融商品取引法第38条第6号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第2号に該当するものと認められる。


金融商品取引法(抄)

(募集又は売出しの届出)

第四条 有価証券の募集(特定組織再編成発行手続を含む。第十三条及び第十五条第二項から第六項までを除き、以下この章及び次章において同じ。)又は有価証券の売出し(次項に規定する適格機関投資家取得有価証券一般勧誘及び第三項に規定する特定投資家等取得有価証券一般勧誘に該当するものを除き、特定組織再編成交付手続を含む。以下この項において同じ。)は、発行者が当該有価証券の募集又は売出しに関し内閣総理大臣に届出をしているものでなければ、することができない。ただし、次の各号のいずれかに該当するものについては、この限りでない。

 有価証券の募集又は売出しの相手方が当該有価証券に係る次条第一項各号に掲げる事項に関する情報を既に取得し、又は容易に取得することができる場合として政令で定める場合における当該有価証券の募集又は売出し

 有価証券の募集又は売出しに係る組織再編成発行手続又は組織再編成交付手続のうち、次に掲げる場合のいずれかに該当するものがある場合における当該有価証券の募集又は売出し(前号に掲げるものを除く。)

 組織再編成対象会社が発行者である株券(新株予約権証券その他の政令で定める有価証券を含む。)に関して開示が行われている場合に該当しない場合

 組織再編成発行手続に係る新たに発行される有価証券又は組織再編成交付手続に係る既に発行された有価証券に関して開示が行われている場合

 その有価証券に関して開示が行われている場合における当該有価証券の売出し(前二号に掲げるものを除く。)

 外国で既に発行された有価証券又はこれに準ずるものとして政令で定める有価証券の売出し(金融商品取引業者等が行うものに限る。)のうち、国内における当該有価証券に係る売買価格に関する情報を容易に取得することができることその他の政令で定める要件を満たすもの(前三号に掲げるものを除く。)

 発行価額又は売出価額の総額が一億円未満の有価証券の募集又は売出しで内閣府令で定めるもの(前各号に掲げるものを除く。)

(以下、略)

(届出の効力発生前の有価証券の取引禁止及び目論見書の交付)

第十五条 発行者、有価証券の売出しをする者、引受人(適格機関投資家取得有価証券一般勧誘(開示が行われている場合における有価証券に係るものを除く。)又は特定投資家等取得有価証券一般勧誘(開示が行われている場合における有価証券に係るものを除く。)に際し、第二条第六項各号のいずれかを行う者を含む。以下この章において同じ。)、金融商品取引業者、登録金融機関又は金融商品仲介業者は、その募集又は売出しにつき第四条第一項本文、第二項本文又は第三項本文の規定の適用を受ける有価証券については、これらの規定による届出がその効力を生じているのでなければ、これを募集又は売出しにより取得させ、又は売り付けてはならない。

(以下、略)

(禁止行為)

第三十八条 金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人は、次に掲げる行為をしてはならない。ただし、第三号から第五号までに掲げる行為にあつては、投資者の保護に欠け、取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるおそれのないものとして内閣府令で定めるものを除く。

一 ~ 五(略)

 前各号に掲げるもののほか、投資者の保護に欠け、若しくは取引の公正を害し、又は金融商品取引業の信用を失墜させるものとして内閣府令で定める行為 (注1)

(注1)当該条文は、平成二十一年法律第五十八号による改正前のものである(平成22年10月1日施行)。

金融商品取引業等に関する内閣府令(抄)

(禁止行為)

第百十七条 法第三十八条第六号 に規定する内閣府令で定める行為は、次に掲げる行為とする。 (注2)

 (略)

 金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、虚偽の表示をし、又は重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為

(以下、略)

(注2)当該条文は、平成二十一年内閣府令第七十八号による改正前のものである(平成22年10月1日施行)。

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